火山についてのQ&A集

Question #6133
Q 緑色凝灰岩(グリーンタフ)のでき方について教えてください。


 我が家は、古生物に興味があり化石採集によく行っています。兵庫県に住んでいるので神戸層群(新生代第三紀の凝灰岩)にも採集によく生きます。今年の春休みに島根に化石採集に行きました。大田市久手町波根西の珪化木は、新生代第三紀の火山噴火が原因ですが、松江の北側海岸において、新生代第三紀の緑色凝灰岩からヒメタニシ・カラスガイの淡水貝化石を採集してきました。


 私の認識では、海底に堆積した火山の噴出物が変質して緑色凝灰岩になる、というものです。淡水貝の化石からは、何かつじつまが合わないように思います。


   ひょっとすると採集した化石の母岩である緑がかった砂岩は、緑色凝灰岩ではな   いのでしょうか?

  (04/23/06)

高月 里佳:中学生:12

A
 緑色凝灰岩とは緑色をした凝灰岩のことです.英語で緑色をグリーン(green),凝灰岩をタフ(tuff)といいますから,緑色凝灰岩をカタカナでグリーン・タフ(あるいはグリーンタフ)ということもあります(注釈3参照).緑といっても色はさまざまで,緑から青までの間の色を緑ということが多いようです.

 凝灰岩は火山灰が固まった岩石です.火山灰は火山爆発でできた直径が2mmよりも小さなガラス(分子が規則的に配列していないケイ酸塩)や結晶,岩石のかけら(火山灰粒子)がたまったものです(注釈1参照).火山灰は,その中の火山灰粒子が水と反応して火山灰粒子と火山灰粒子との間に細かな結晶が沈でんすることで固まります.沈殿する結晶が緑〜青色だと固まった火山灰(凝灰岩)が「緑色」に見えます(注釈2参照).火山灰粒子から緑色の鉱物ができるときの水は海水でも淡水でもかまいません.火山灰に高い温度や圧力がかかると,ガラスのかけらが飴(あめ)のようになっておたがいに結合して固まることもありますが,この場合は緑色にはなりません.

 松江の北側海岸で緑色凝灰岩から淡水貝化石ヒメタニシ・カラスガイを採取したということですが,後の記述を読むと砂岩といっていますね.凝灰岩か砂岩かという区別は専門家でも難しいと思います.砂岩であっても火山灰粒子がいったんたまった後に水の流れや風に運ばれて再びたまったものであれば,凝灰岩のように緑色なることはあります.

 大田市波根の珪化木(ケイ化木)は火砕流(注釈4参照)が取り込んだ樹木の幹です.火砕流堆積物(火砕流に運ばれてたまったマグマや岩石のかけらの集まり)と一緒に地下深く埋もれる過程で,火砕流堆積物の軽石や火山灰粒子の大きさのガラスから溶け出したシリカ(ケイ酸)が樹木を置き換えてできたものです.天然記念物に指定されていますから眺めるだけにしてください.周辺には黒焦げになった樹幹の化石もたくさんあります.次に出かける機会があったら探してみてください.ここの火砕流堆積物は沢山の軽石や火山灰粒子の大きさの火山ガラスをたくさん含んでいますが,もともと鉄やマグネシウムなどが少なかったのでしょうか,緑色をしていません.緑色の鉱物は風化でほかの結晶にかわることもあります.そのときはもとの緑色はなくなることが多いようです.

 いままで述べたことについて,もう少し詳しい説明を知りたいときは注釈を読んで下さい.むずかしければ読み飛ばしてもかまいません.
(05/10/06)

鹿野和彦(産業技術総合研究所・地質情報研究部門)
Question #6128
Q 姫路に住んでいます。周辺の山々は、ほとんど凝灰岩や角礫凝灰岩でできており、白亜紀末の噴出物と言われています。これだけ大規模な噴出物が、どのような噴出の仕方をしたのか、と思ってみるに、いろいろ本などを見た範囲では、噴出源となった場所(複数?)が述べられていません。
一方、北の方にある雪彦山は火山岩頸といわれていて、一枚岩の(聞くところでは)流紋岩でできています。こういう場所が噴出源の一つなのでしょうか、それとも噴出源を確定できないくらい広域で噴出したものなのでしょうか? あるいは噴出源が多くあって、いちいちここ、あそこといえないくらいなのですか?
(このような大量の噴出物が、近代もたまにあるような火砕流噴火がコツコツと繰り返されてたまったのか、それとも比較的限られた数の大規模噴火(例えばイェローストンだとかトバ湖だとかのような)でもたらされたのか、この頃の噴火スタイルがどんなものだったのかなア・・・というのがそもそもの疑問です) (03/28/06)

柴田 徹:社会人:56

A
 5万分の1の地質図幅の龍野地域や山崎地域を見てみると白亜紀後期の火山 岩類が大量に分布しています。それぞれの地域で上部白亜系を構成する地層 は、複数あって、それぞれが、直径15 km以下の凹地(カルデラ)を埋積し、 カルデラ形成期の火砕流堆積物とカルデラ形成に伴って生じた岩屑なだれ堆積 物で構成されていると地質図幅説明書に書かれています。龍野・山崎地域では 全部で少なくとも14個のカルデラがあったと推定されていますので、カルデラ を作るような噴火が少なくとも14回あったことになります。現在は、当時カル デラを作りながら噴出してカルデラ内に堆積した大規模火砕流や、カルデラ陥 没に伴って、不安定になったカルデラ壁が崩れて発生した岩屑なだれが地表に 露出しているものと思われます。阿蘇カルデラのような若いカルデラではカル デラ地形が残っていますが、姫路周辺は後期白亜紀の古い地層ですから、当時 の地表地形はほとんど削剥されて、現在は、昔、地下だったカルデラ内部が露 出しています。地形的にはどこが火口かということは判断が難しく、地質を調 べた上で位置を推定することになりますが、大規模な火砕噴火が14回以上存在 したことは確かでしょう。
 雪彦山は確かに流紋岩で出来ている山ですが、流紋岩の分布は広く、直径8 kmの半円形のように分布しています。この分布とこの流紋岩が、火砕流堆積物 に挟まれて露出し、さらに流紋岩の上にカルデラ湖を埋めたであろう湖成堆積 物がのっていることから考えるとこの流紋岩はカルデラが出来たあとに貫入し てきたマグマが冷えて固まったもののように思われます。雪彦山は確かに広い 意味での火口にあたりますが、もっとサイズの大きいカルデラそのものの一部 と考えた方がよいでしょう。この地域にはカルデラが密集しているように見え ますが、年代幅を個数で割ると約100万年に1度くらいの割合になりますの で、特別多いというわけではないと思います。
 参考文献:(1) 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2000)龍野地域の地質。地域地質 研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所. 66p. (2) 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2002)山崎地域の地質. 地域地質 研究報告(5万分の1地質図幅).産総研地質調査総合センター. 48p.
(09/11/06)

鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学科)
Question #6070
Q 初めまして。私は昔から地熱発電に興味を持っていたのですが、最近詳しく調べる機会があり、疑問に思った事があるので質問させていただきます。

地熱発電は、生産井から水蒸気や熱水を汲み上げてタービンを回し、ガスなどが含まれている熱水は還元井から地中に戻すようなんですが、生産井の先と還元井の先をくっつけて、普通の水を循環させて熱エネルギーを取り出すことは出来ないのでしょうか?
また、断熱材で覆った熱伝導性のよい素材を用いて地中に杭のようなものを何本か立てて、直接熱エネルギーを取り出すというようなことは出来ないのでしょうか?

もし実行しようとする場合、どんな問題点があるのか教えてください。
回答よろしくお願いします。 (01/27/06)

willow:高校生/大学生:18

A 生産井と還元井の先端を直接接続してはいないのですが、高温の地下に2本の
坑井(注入井と生産井)を掘削し、注入井から水を圧入して高温の岩盤に
亀裂(水の通路)を人工的に形成して、生産井から熱水を回収して発電する方法(高温岩体発電)があります。
この方法は既に実証試験も行われています。

http://www.nedo.go.jp/informations/press/140627_3/140627_3.html


前出の質問にも関連しますが、地下に井戸を掘削してその中に2本のチューブを入れ、
さらにチューブ内に媒体を入れ循環することにより熱を抽出する方法があります。
この方式に地上でヒートポンプを接続して冷暖房を行う方法(地中熱利用ヒートポンプ)もあります。

http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/pamphlets/chinetsu/geohp.pdf


高温岩体発電は既に実証試験も行われ技術的な問題はほぼクリアされていますが、
問題は経済性にあるようです。一方地中熱利用ヒートポンプは欧米においては
広く普及していますが、日本においては地質の複雑さやコストの面でまだ普及に
至っていない状況です。
(01/30/2006)

柳谷茂夫(地熱エンジニアリング株式会社)

Question #6059
Q マグマの化学成分に関する論文を読んでいて、「揮発性成分の水が溶解する際に、以下のように溶解している。H2O=OH- + H 」というふうにサラリと述べられていて、その後OHがSiなどの結合部に及ぼすことについて話は続いていました。 これは、H2O型とOH型と異なる構造で溶解した水がメルト中でそれぞれ異なる挙動を示すということという意味でしょうか。それとも全てがOH型として溶解するということなのでしょうか。 物理化学が苦手で、化学式からも混乱してしまいました。 よろしくお願いします. (01/19/06) こっこ:高校生/大学生:21

A 最初のご質問(H2O型とOH型の挙動は異なるのか)については、おっしゃるように挙動は異なると考えられています。まず、OHをつくるための反応式を検討しましょう。単に水がシリケイトメルトに溶解する際の反応式は「H2O[水溶液中]=H2O[メルト中]」と表現できます。こうして溶解した水(H2O[メルト中])のうち一部は、シリケイトメルトと反応して解離し、OHをつくると考えられています。この反応は、H2O[メルト中] + O[メルト] = 2 OH[メルト] のように表現できます。この際、水は、メルト中のシリコンなどを架橋している酸素(...Si-O-Si-O-...)を切るので、メルトの重合度が下がります。これが、水が溶け込んだメルトの粘性が著しく下がる理由だと考えられています。OH型はシリコンなどに結びついており、結びついていないH2O型に比べて圧倒的に移動が遅いと考えられています。

二番目のご質問(全てがOH型として溶解するのか)には、上記の解離反応がどれだけ右に進むかをお答えしようと思います。シリケイトメルトに溶解したH2O型の水がどれだけOH型となるかは、含水量や温度によって異なるという測定結果が知られています。たとえば常温のガラスの場合には、水の量が少ない物ほどOH型が卓越し、高含水量のガラスほどH2O型が多くなることが知られています。また、同じ含水量のガラス〜メルトを様々な温度で観察してやると、高温になるとOH型が卓越することが知られています。面白いことに、高温のメルトにどんどん圧力をかけながら水を加えてゆくと、「水が多量に溶けたシリケイトメルト」と「シリケイトが多量に溶けた水溶液」の区別がつかなくなることが知られています。
(01/31/2006)

宮城磯治(産総研・深部地質環境研究センター)

Question #6006
Q 初めまして。最近、火山と岩石に興味を持ったのですが、有珠山について教えて頂きたく投稿しました。よろしくお願いいたします。
・有珠山は全体的に白く見えるのですが、これは岩石にどのような鉱物が含まれているからなのでしょうか?
・火口から噴出した溶岩が冷えた時に出来る岩石の組織は、何て呼ぶのでしょうか?

よろしくお願いいたします。 (11/26/05)

まさ:社会人:31

A 有珠山が白っぽく見えるのは,主にその表面に降り積もっている火山灰や軽石が白っぽいからですが,その白さを決めているのは含まれている鉱物ではないのです.軽石や火山灰などのように比較的ガラス質なものは,ガラス部分の色が全体の色を決めています.

ガラスの色は,シリカ (二酸化ケイ素=SiO2) の多いもの(デイサイト質や流紋岩質)ほど白っぽく(無色に近く)なります.有珠山の最近の噴出物はシリカが多く,このために噴出物が白っぽいのです.逆に,シリカの少ないガラス(玄武岩質)であれば黒っぽくなります.

シリカの少ないガラスが黒っぽい理由は,シリカの代わりに金属(特に鉄などの遷移金属)のイオンが多く入っていて,こうしたイオンが光を吸収するからです.逆に,純粋なシリカでできたガラス(工業製品)は無色透明で光が吸収されず,光が非常に良く透過するので,光ファイバーに使われています.

さらに補足しますと,デイサイト質や流紋岩質なガラスであっても,少量の金属イオンが含まれていますので,ある程度の厚みを通して見ると少し色がついています.黒曜石はその典型的な例です.しかし,火山灰のように細かい粒になっていたり,軽石のように細かく発泡していたりすると,光が乱反射するために白っぽく見えます.

2つ目のご質問(溶岩が冷えた時に出来る岩石の組織)は,ご質問の意図がよく分からないのですが,斑状組織のことでしょうか?
斑状組織とは,肉眼ではっきり分かるサイズの結晶(斑晶)が,ガラス質あるいはごく小さな結晶からなる基質部分(石基)の中にちらばっているような組織を言います.マグマが地表に噴出して出来た岩石(火山岩)の典型的な組織です.
斑晶は噴火の前にマグマの中でゆっくり成長してできた結晶であり,石基は噴火後に急速に冷え固まった部分になります.
(11/27/05)

東宮昭彦(産業技術総合研究所・地質調査総合センター・地質調査情報センター)

Question #5970
Q 今、大学のゼミで有馬温泉の熱を利用しての地熱発電が可能かどうかを討論しようとしているのですが、有馬温泉はわからないことが多いらしく、なかなか進みません。これが可能かどうか教えてください。もし無理ならどこかそれに見合うよい場所があれば教えてください。 (11/10/05)

土井。:高校生/大学生:19

A
 これまでの日本の地熱発電所では、発電効率、経済性等の面から200℃以上の蒸気(+熱水)を用いて発電(蒸気発電)しています。有馬温泉の泉温は沸点近くの98℃はありますが、既存の蒸気発電方式ですと地熱発電の実用化は困難ということになります。
 しかし、昨今バイナリー発電という、200℃以下の中低温の熱水(温泉水)と低沸点媒体との熱交換により高圧の蒸気を作りだしタービンを駆動して発電する方式も開発されています。

*バイナリー発電については下記HPを参照。
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/nenshi/3color/1999_2000/shinene/04tinetsu6.html

 この方式ですと、バイナリー発電であれば有馬温泉においても発電実用化が可能になります。なお、福島県の熱塩加納村において、温泉を用いた発電について実証試験した例もあります。

 次に、地熱発電の有望地域につきましては、下記のHPを参照していただければと思います。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/grsj/gaiyou/index1_2.html
(11/11/05)

柳谷茂夫(地熱エンジニアリング株式会社)
Question #5960
Q 鬼界カルデラ噴火の年代についてなのですが、サイトによっては「約6300年前」と「約7300年前」の2種類の説明があるようです。このQ&Aサイトでは「約6300年前」でほぼ統一されているようですが、気象庁ホームページ中の火山の解説では統一されてません。阿蘇山の説明ページでは「約6300 年前のアカホヤ火山灰...」、薩摩硫黄島の説明ページでは「約7300 年前に広域火山灰であるアカホヤ火山灰を噴出...」となってます(2005/11/5現在)。いったいどちらが正しいのでしょうか?あるいはこのどちらにも有力な根拠があって論争中なのでしょうか。 (11/05/05)

みぞいぬ:社会人:30

A
 鬼界カルデラの噴火年代は炭化物の放射性炭素年代測定によって求められているのですが,暦年補正が施されたかどうかで年代値が異なります。施された年代が7300年前,施される前の年代が6300年前です。放射性炭素年代(C14年代)は、標準試料のC14濃度と,試料がCO2の供給を絶たれた時の大気中のC14濃度が一定であるとして算出されています。 ところが実際には,過去の宇宙線強度や地球磁場の変動,水圏からのCO2の供給量の変動,化石燃料からのCO2供給,核実験の影響などにより14C濃度が変化しているので,C14年代と暦年代の間にはずれが生じているということが最近わかってきました。このずれを補正してより正確な年代を得るために,樹木の年輪年代と放射性炭素年代測定の比較、サンゴ化石の放射性炭素年代とウラン?トリウム年代の比較などにより暦年補正曲線を作成して年代値を求めています。これが暦年補正と呼ばれるものです。最近は,暦年代(Calendar age)の方が実年代により近いので暦年代の方を使うようになりつつあります。しかし完全に入れ替わったわけではなく,未だ両方の年代値が共存しているというのが現状です。暦年補正された年代と補正されていない従来の放射性炭素年代は、ハッキリと分けて用いなければ年代値の混乱の要因になり,ご質問のような疑問を抱かせる結果となったわけです。最近は暦年補正した年代値は「暦年代」や「cal.BP」ないし「cal.BC」と断って書かれている文献も増えてきています。
(11/18/05)

鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学科)

Question #5953
Q 中学校の理科の教科書を見ていて疑問に思ったことなのですが、「マグマの粘性が強いと激しい爆発を伴う噴火が起こり、粘性が弱いと溶岩が穏やかに流れ出る」と記載されていました。私自身はこの文章を読んだ時気付かなかったのですが、中学生から「粘性の弱いマグマの方が、噴火の時にマグマが激しく噴き上げられていて、逆に、粘性の強いマグマはゆっくりと押し出されているイメージがある」という指摘を受けました。この場合、どのように説明すべきでしょうか? (11/01/05)

大学生:高校生/大学生:21

A
 大変いい質問だと思います.粘性はマグマの流動性を示しているだけで,爆発的な噴火になるかどうかとは直接の因果関係はありません.中学の教科書で書かれていることの内容は,粘性の高いマグマは爆発的噴火を起こすことが多いという意味程度です.
マグマ噴火の場合,爆発の原動力はマグマに含まれるガス(主に水蒸気)で,地下深部ではマグマにとけ込んでいますが,地上に近づくとガスの泡となってマグマから分離し急激に泡の量が増加します.粘性が低いとガスを含んだ泡がマグマ中を地表に向かって移動し,時には泡どうしが集まって大きくなり,シャボン玉のように破裂(爆発)することがあります.夜の噴火シーンでシャワーのように噴き上げているのがこの爆発です.
 一方,マグマの粘性が高くなると泡がマグマ中を移動しにくくなり,高い圧力を保持したままでガスが泡の中に封じ込められます.同時に,高い粘性のマグマや泡を含むマグマは力を加えると割れやすくなる性質があります.このため,地上への移動中にマグマが破砕し,中の泡も一緒に割れて,封じ込められていた高圧のガスが突然爆発を起こします.この爆発の方が大きな規模になります.
 しかし,中学生の質問のように,溶岩ドームのように高い粘性のマグマでも爆発を起こさずに地上まで押し出されたものもあります.これはマグマが大変ゆっくり地上まで上昇してきた間に,マグマからガスが上手く抜け出ることができたからであると考えられています.つまり,爆発の度合いを左右するのはガスの抜け方で,どうも「マグマの上昇の速さ」が大きな鍵を握っているようです.中学生にはむずかしいかも.
(11/1/05)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
Question #5915
Q 富士山のテクトニクス場に大変興味をもっております。これまでも3943、5481にて質問させて頂きました。関連する5347、3184も読ませて頂きましたが70万年前にフィリピン海プレートの日本列島への衝突〜10万年前に富士火山のテクトニクス場完成〜現在もフリピン海プレートの楔状の貫入が継続・・という事は富士山のマグマ発生の元になる「プレートの裂け目」は今後北北西方向に拡大するのではと考えました。その観点から富士火山の長期的な活動を予測しますと将来的には甲府盆地からも新たな火山活動がはじまるのではと考えたのですが如何でしょうか。よろしくお願いいたします。 (09/21/05)

アマンタジン:社会人:30

A
 富士山直下の下部地殻に存在する可能性のある「プレートの裂け目」は,決して富 士山のマグマ発生の元になっているわけではありません.富士山のマグマ発生の原因 は,もっと深部に存在する日本海溝から沈み込んでいる太平洋プレートにあります. 富士山直下にあるかもしれないフィリピン海「プレートの裂け目」は,ただ大量のマ グマを地殻下部に溜めておく役割を果たしているだけだと考えられます.また「プレ ートの裂け目」があるとしても,それは甲府盆地の下ではすでに開いてしまっていま すから,これから拡大することはありません.甲府盆地の北部では茅が岳などの第四 紀火山を初め,鮮新世以来活発な火山活動があります.したがって,現在は活動的な 火山のみられないこの地域で将来再び火山活動が始まる可能性は十分にあります.し かし,その原因は太平洋プレートの沈み込みにあるのであって,フィリピン海プレー トの裂け目とは関係がありません.
(10/03/05)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)
Question #5912
Q 理科で、姶良火山のことを少しだけ学習しました。それには、「北海道にも火山灰が何センチか積もった。」と書いてありました。どれぐらいの規模の噴火でどんな形の火山だったんですか。(桜島のような形だったんでしょうか)また、姶良山の山の高さは、どのくらいだったのか教えてください。 (09/18/05)

サウジアラビア ジッダ在住:小学生:12

A 姶良火山は,約2万5千年前の旧石器時代に鹿児島県の錦江湾(こんこうわん)の北部にあったと考えられている火山です。そこで2万5千年前に巨大な噴火が起きました。その噴火では,最初に地上数万メートルに達する噴煙を噴き上げた後,火砕流と呼ばれる高温のマグマのかけらと火山灰とガスが混ざり合って高速で地表を流れる噴火が起きました。その火砕流は入戸火砕流と呼ばれ,鹿児島湾周辺では,立派なシラス台地を作っています。入戸火砕流は噴出源から90km 以上も地表を走り,木をなぎ倒して,地表を焼き尽くしました。その噴火の時に上空に舞い上がった火山灰が偏西風に乗って日本中に広がりました。九州中部で約50cm,中国・近畿地方で約20cm,関東地方で約10cm,東北地方で約5cmの火山灰層が見つかっています。北海道でも約5mmの火山灰層があるといわれています。日本中を灰まみれにし,日本海全域,朝鮮半島,東シナ海,太平洋四国海盆をも広くおおうほどの噴火でした。この火砕流噴火で約350立方キロメートルの火山灰が噴出しました。噴出物量によって噴火の規模を段階的に表す火山爆発指数(VEI)でこの噴火の規模を示すと,VEI=7となり,日本で最大級の規模になります。この巨大噴火のため,地下のマグマ溜まりが陥没して地表に直径約20kmのカルデラと呼ばれる凹地が形成されました。そのカルデラの南の縁に新しく生まれたのが桜島火山です。カルデラを形成する噴火は,噴出源が凹地になってしまうために,噴火前の火山体は完全に消滅してしまっていますし,姶良は旧石器時代の噴火ですから記録などは残っていません。現在残されているカルデラ縁では,昔の火山体を物語るような堆積物は見つからないので,直径20kmの大きな火山体があったとは考えられません。残念ながら姶良火山は,その存在は想像されるものの,実体は不明なのです。アメリカのクレーターレイクカルデラでは,カルデラ以前の火山体がよく復元されていますが,火山体が全くなくなってしまっている場合は,復元が困難です。よい方法を見つけて復元できればいいなと思っています。
(10/20/05)

鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学科)

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