火山についてのQ&A集

Question #6567
Q 流紋岩質マグマが割れ目噴火をすることはありますか。

(理由)
割れ目噴火というと,流動性の高い溶岩というイメージがありますが,地下の深部から
岩脈状にマグマが上昇してくるとしたら,板状に粘性の高いマグマが噴出してもよさそうな
感じがしますが。

(10/09/08)

Spica:社会人:50

A いわゆる割れ目噴火は溶岩の粘性が低くないときれいな割れ目にはならずに溶岩ドームのような丸まった形で地面を変形させます
Question #6396
Q 雲仙や浅間山等の大規模な火砕流や溶岩流を起こす火山に核等やTNT等を使って山を平らにしたら溶岩流や火砕流等の被害は起きなくなると思いますが、どうでしょう? (07/06/07) 名無し:高校生/大学生:18

A 手段は全く論外ですが,上のように地形を変えればと思いたくなるのは分からないでもないです.しかし,これは逆効果というものです.
1990年代の始めに継続した雲仙の火砕流災害の時も,溶岩ドームをパトリオットミサイルで落としてしまおうか,と冗談を言う人がいました.雲仙の火砕流は溶岩ドームができては崩れることによって繰り返し発生していたからです.しかし,そこでは溶岩ドームが大きめに崩れた時には,爆発的で大きな火砕流がおきていました.これは,溶岩ドームが大きく崩れることによって,火山内部にあったマグマへの重しが取れた分,マグマが爆発し,出やすくなったためです.仮にドームを落とすことができれば,それによって火砕流がますます発生し,さらには爆発の呼び水となる訳です.

火山というのは地下に溜まっているマグマの圧力と高い山が押さえつける力(荷重)とが微妙にバランスしている状態なのです.この状態を無理矢理壊すことは,かえって危険な場合があります.活発な火山を削って平らにしたら,もっと活発になるでしょう.それでなくても重力のバランスが崩れるために,火山の地下や周辺では地殻変動が起こり,地下水を含む水系にも大きな変化が起こるでしょう.
(7/6/2007)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)

Question #6342
Q 火山の中の深成岩はどうしてマグマの熱で溶けないのですか?

またマグマが周りの岩石を溶かしきらないでいるのはどうしてですか?

マグマがなくなることはないのですか?

今授業で習っていて疑問に思ったので、ぜひ教えてください。

よろしくお願いします。



  (01/11/07)

ゆう :中学生:13

A
 マグマの熱によって周りの岩石が溶けることはあります.どのような時に溶けやすいかというと,簡単に言えば,マグマがとても熱くて,周りの岩石が溶ける温度よりも十分に高い場合です.また,周りの岩石の元々の温度が高い(溶け始める温度に近い)ほど溶けやすくなります.
 では,マグマが熱ければ周りの岩石をどこまでも溶かし続けられるかと言うと,そうはなりません.周りの岩石を暖めて溶かすことによって熱を奪われるため,マグマの温度が下がってしまい,ある程度のところでそれ以上は周りを溶かすことができなくなるためです.
 地下に溜まっているマグマは,地上に噴火するか,そうでなければ時間とともに冷えて固まっていきますので,そのままではやがて無くなってしまいます.しかし,噴火を繰り返しているような火山では,地下のもっと深いところ(マントル)から新しいマグマが次々と上がってきますので,マグマは簡単には無くなりません.ただし,何十万年という長い時間で見ると,マントルからのマグマの補給もやがて途絶えてしまい,火山はその寿命を終えることになります.
(01/11/07)

東宮昭彦(産業技術総合研究所・地質調査総合センター 地質情報研究部門)
Question #6333
Q 授業でカンラン石について調べました。
教科書では、緑色でしたが顕微鏡で観察したカンラン石はオレンジ色でした。
学校の先生に色の事で質問をしたところ成分の率で色は変わると教えてもらいました。
けれど、どんな成分がどのくらいの率で何色に変わるのか知りたいです。
カンラン石の色の変化について詳しく教えて下さい。 (12/27/06)

のだかん:中学生:13

A
 う〜ん,カンラン石がオレンジ色でしたか.私は今までカンラン石を含む岩石をいろいろ見てきましたが,岩石薄片(プレパラート)を顕微鏡で見て,オレンジ色に見えるカンラン石はあまり見たことがありません.

 学校で使用したのはどんな顕微鏡でしたか? もし偏光顕微鏡だった場合,直交ニコル(クロスニコル)の状態で観察した時の鉱物の色は,実際の色とは関係ない「干渉色」になります.カンラン石は複屈折(鉱物の中を光が通る時に,屈折率の違う2つの光に分かれること)の程度が大きいので,干渉色は赤・青・緑・黄色などの派手な色になります.オレンジ色の場合もあるでしょう.この場合,岩石薄片をステージの上でグルッと回転させると,1回転の間に4回,90度ごとに暗くなるはずです.干渉色は,例えば雨の日に駐車場の水たまりに自動車からこぼれた油が浮いていると,油も水も無色透明なのに,表面には様々な色が現われますが,あれと同じ原理で見える色です.

 もし単ニコル(オープンニコル・平行ニコル)の状態または偏光板がない生物顕微鏡などで見たのにオレンジ色だった場合は,そのカンラン石は,火山が噴火したときに,溶岩や噴出物の中で酸化されて変質している可能性があります.そのようなカンラン石は,周辺部から黄色や褐色(オレンジ色の場合もある)の「イディングサイト」と呼ばれる物質に変化し,ついには全体が黄色〜褐色になってしまいます.この場合,中心部には無色透明のカンラン石が残っていることが多く,残っていない場合でも,周辺部と中心部で色の違いが見られる(中心部の色が薄い)ことが多いです.

 上で述べたような場合以外,カンラン石は顕微鏡(単ニコル)で見るとほとんど無色透明ですが,肉眼で見るといろいろな色のものがあります.「カンラン」というのはオリーブのことで,英語ではカンラン石のことを「オリビン」と言います(ただし,中国の「カンラン」とヨーロッパの「オリーブ」とは,本当は別の種類の木だそうです.名古屋圏などではキャベツのことを「カンラン」と言うそうですが,キャベツの色からついた名前ではありません.また,宝石名としては「ペリドート」と言います).従って,カンラン石にはオリーブ色(緑色)のものが多いのですが,上で述べた「イディングサイト」になっているものは黄色〜褐色に見え,鉄が少ないカンラン石は灰色に近いものもあります.隕石の主成分もカンラン石ですが,隕石中のカンラン石は真っ白のことがあります.隕石の場合,カンラン石はかなり鉄を含んでいるのですが,宇宙空間は地球上に比べると酸素が少ないので,鉄が還元されて色が消えているのだと思われます.

 同じ物質でも,色はいろいろな要因で変化します.色に惑(まど)わされないように気をつけて,色の変化を楽しんで下さい.
(12/28/06)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
Question #6326
Q
 初めまして、私は今、大学の研究室で大分県九重のタデ原湿原において火山灰が湿原に及ぼす影響を研究しています。九重タデ原湿原において、ボーリングコアを3本採取し最も深く掘って420cmのコアを採取しました。そのコアの深さ250〜255cmの層に火山灰層を発見しました。タデ原湿原の報告書には記載されていない層でしたので、その火山灰層の起源が分かりません。そこで、自身で火山灰の同定を行いたいと思っているのですが、EPMAか蛍光X線のどちらで元素組成を分析しようか悩んでおります。大抵の文献などではEPAMで同定しているのですが、ただ組成を見るだけであれば蛍光X線でよさそうな気がしています。なぜ、研究者の方たちはEPMAで同定することが多いのでしょうか。

 教えていただけましたら幸いです。

(12/14/06)

tephra:高校生/大学生:22

A
 ご質問について,お答えさせていただきます.
 ご指摘のように,火山灰の同定に関しては蛍光X線ではなくEPMAによる分析が一般的に行われます.火山灰には,火山ガラスや結晶,岩片などが含まれているわけですが,噴火をもたらしたマグマの特徴を最も反映しているのは火山ガラスの化学組成です.EMPAでは電子顕微鏡の画像を見ながら,火山ガラス一つ一つの化学組成を測定することができますが,蛍光X線分析では火山ガラス・結晶・岩片など,全てが混ざった平均的な化学組成を計っていることになります.もちろん,顕微鏡などで観察しながら,ガラス粒子だけを集めて(相当な量が必要),蛍光X線分析を行ってもいいのかもしれませんが,非常にたいへんな作業になってしまいます.したがって,火山灰の場合はEPMAによるガラス粒子の化学組成で,その起源が決定されるわけです.しかし,化学組成の分析まで行わなくても,火山灰層の層準や特徴(色調・堆積構造など),火山灰に含まれる鉱物組合せやガラスの形態(バブルウォール型や軽石型など)からも同定できることがあります.まずは調査地域の火山灰層序について書かれた報告を読まれてはいかがでしょうか.次の文献が参考になると思います(p.75にタデ原湿原付近のテフラ断面の写真があります).
・鎌田浩毅(1997)宮原地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,127p.
 ご質問の主旨とははずれますが,「火山灰が湿原に及ぼす影響」という面白い研究をされているようですね.実は私もそうした問題に興味があり,阿蘇火山周辺域で火山活動と草原の歴史について調べているところです.阿蘇カルデラ東方域では,3万〜1.3万年前頃に火山活動の活発化により草原植生が衰退傾向にあることがわかってきました.詳しくは以下の論文をご覧ください.後者は一般向けに書いたもので,私のHP(http://ymiyabuchi.hp.infoseek.co.jp/main.htm)からダウンロードすることができます.
・宮縁育夫・杉山真二(2006)阿蘇カルデラ東方域のテフラ累層における最近約3万年間の植物珪酸体分析.第四紀研究,45(1),15-28.
・宮縁育夫・杉山真二(2006)阿蘇火山の活動と草原の歴史−カルデラ東方域での植物珪酸体分析結果から−.九州の森と林業,76,2-4.
 九重火山のタデ原湿原におけるご研究の進展を期待しております.
(12/14/06)

宮縁育夫(森林総合研究所・九州支所)

Question #6222
Q 私の育った山口県光市には虹ヶ浜海水浴場という、有名な海水浴場があります。生まれてからずっとここの海しか知らなかったので、何とも思わなかったのですが、ここで泳いだり、砂浜で砂遊びをすると、体に雲母が付きます。雲母は火山と関係があるときいたのですが、この近くには火山はありません。以前、山口県宇部市あたりまで、9万年前に阿蘇の火山流が流れてきたと聞いたことがあります。光の海の雲母はどこから来た物でしょうか。教えてください。 (08/21/06)

chipinのママ:社会人:42

A
 虹ヶ浜やその周辺には,約1億年前の白亜紀という時代に形成された花崗岩が分布しています.この花崗岩はマグマが地下深くで冷え固まったものです.花崗岩の中には長石や石英以外に黒雲母が含まれます.
 黒雲母は黒色のものもありますが,真夏の太陽光のもとでは金色に輝いてとてもきれいですね.薄っぺらく剥げる性質(へき開と言う)があり,体にもくっつきやすいです.回答者は残念ながらまだ虹ヶ浜に行ったことがありませんが,海岸の砂が真砂とよばれる透明感のある石英や白く濁った長石などでできたものであれば,黒雲母は花崗岩に由来すると考えて間違いないでしょう.真砂は花崗岩が風化してできたもので,宅地造成や園芸用などに広く使われていますよ.「白砂青松」とは虹ケ浜のように日本の美しい海岸の風景を表現した言葉ですが,この白砂も花崗岩の風化の産物なのです.
(08/22/2006)

今岡照喜(山口大学・院・理工学研究科・自然科学基盤系学域・地球科学)
Question #6221
Q 初めまして、Rikaといいます。今回の質問が初めてです。
その質問ですが、
@活火山は周期的に噴火するようですが、突発的に噴火することはあるのでしょうか?
A大山山が噴火しなくなった時期は、大体いつ頃なのでしょうか。
B大山山が噴火した時、島根半島付近で地震は起こるのでしょうか。
私は文系高3で、今入試関連の古典記述を元にしたレポートを製作しているのですが、ある仮説を立てるのにどうしても大山山の噴火時期が必要だということが分かりました。知りたい時期は紀元11世紀ごろまでについてなのでが…過去の質問を捜したのですが、私のほしい答えはヒットしませんでした。私は地学をとっていないので、火山については全く知識がありません。よろしくお願いいたします。 (08/21/06)

Rika:高校生/大学生:17

A
 伯耆(ほうき)富士とも呼ばれる中国地方の名峯大山(だいせん)についてのお尋ねですね.
 大山の活動が開始したのは今からおよそ100万年前,活動の活発な時期(60〜40万年前)と比較的噴火が少ない時期があったことがわかっています.5万年前の噴火で噴きあげられた軽石は遠く北関東〜福島県南部まで達しました.大山の最後の噴火はおよそ2万年前,最高峰弥山(みせん)ドームがつくられたのはこのときだと考えられています.以後地層に残るような噴出物はありません.また歴史時代の噴火の記録も知られていません.(ただし,噴火に関係しない小規模な土砂流出などが全くなかったかどうかはわかりません.念のため)
 最近20万年あまりの間は1〜2万年の間隔をおいて大きな噴火がありましたから,今後も噴火する可能性はあると思われます.ただ,噴火の休止期間が長い火山ですから,ごく近い将来に噴火する確率は?と問われると,無視できるくらい低い=心配する必要はない,という答えになります.
 噴火する際には,大山のマグマはデイサイト質で粘り気が高いので,マグマが地表に達する何ヶ月も前から上昇にともなう地震が鳥取・島根地域では観測されるはずです.したがって,不意打ちにあうことはありません.
(08/22/2006)

津久井雅志(千葉大学・理学部・地球科学科)
Question #6215
Q ぼくは、雲仙、普賢岳についての本を読みました。その中で1つ疑問に思ったこと
があります。それは、平成2年の噴火でたくさんの火砕流が出たと知りました。そこで質問です。火砕流は、どれくらいの速さで流れるのですか、また流れた火砕流は、地形にどんな影響をあたえるのですか、理由は、43人の死者、行方不明者をだしたので、きっと火砕流が、速かったから43人の犠牲者を出してしまったからだと思ったからです。詳しく説明、お願いします。早めの回答をおねがいします (08/11/06)

火山知りたい6年生:小学生:12

A 早めの回答にはなりませんでしたが,雲仙普賢岳で起きた火砕流の速さは毎秒数10m(時速に直すと100km以下程度)でした.時速150kmに達したという報告もあります.犠牲者が出たのはスピードのせいというよりは,火砕流の想像を上回った動きだったと思います.火砕流の高温の雲にあたる部分が火砕流を撮影していた報道陣のいる高台まであっという間に這い上ったためです.火砕流の上部にあたる雲の部分(火山灰と火山ガスからなる部分)は高速・高温のままで,ちょっとした高台でも簡単に乗り越えてしまうのです.
火砕流が流れる時には,上流部分では下の地面を削り,下流部分では谷を埋めて堆積します.そのため火山の山腹で厚く堆積し,比較的平らな地形ができます.南九州のシラス台地や阿蘇火山の周囲の比較的平らな台地は火砕流が埋め立てた広大な台地です.
(08/22/2006)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)

Question #6213
Q 先月三陸沖に新型火山が発見されたという新聞記事を見ました。
中央海嶺や沈み込み帯の火山と新型火山の違いは分かったのですが、
ホットスポットの火山とこの新型の「マグマしみ出し型」火山の違いが分からないので
教えていただけますでしょうか。 (08/11/06)

Tim:中学生:15

A ホットスポット火山はプレートの動きとは無関係にマントルプルームが上昇する位置で出来るため、ほぼプレートの動く方向に沿って火山列を作ります。そして各火山の年代はホットスポット火山が形成される位置から離れるにつれて古くなります。しかし、このマグマしみ出し型火山は、そのような火山の形成年代の並びはありません。また、ホットスポット火山の溶岩は、希ガス元素の同位体組成において、マントル深部が起源と考えられる特徴的な化学組成を持ちますが、この火山のマグマはそのような組成を示さず、より浅いマントル起源と考えられている中央海嶺玄武岩の起源のマントルの化学組成を示すことも重要な理由の一つです。他にも各火山体の規模が世界のどのホットスポット火山と比べても桁外れに小さいことも理由として挙げられます。
(08/22/2006)

平野直人(カリフォルニア大学サンディエゴ校・スクリプト海洋研究所)
Question #6209
Q 栃木県矢板市のものですが、
http://maps.google.com/maps?t=k&hl=ja&ie=UTF8&om=1&ll=36.933428,139.790726&spn=0.095502,0.159645
を、見ていただくと高原山は富士山を中心に同心状の襞が観察できます。高原山の南側に連なる鶏頂山、釈迦ヶ岳、剣ヶ峰、大入道、八方ヶ原は富士山あるいは前黒山を中央火口丘とした外輪山のようにも見えますが、高原山はこのような大規模なカルデラ火山だったのしょう?また塩原火山には外輪山はあるのでしょうか?ちょっと衛星写真の皺が気になりメールさせていただきました。

(08/02/06)

kumicho:社会人:51

A
 ご指摘の部分は恐らく,30万年前に形成された塩原カルデラに相当していると思われます.中心付近に最近の活動(1万年前頃?)に形成された潜在円頂丘や溶岩ドーム(富士山)があるため,同心円的な構造がより印象的に見えるのかもしれません.
 前黒山および明神岳はこのカルデラの中央火口丘と考えられていますが,鶏頂山,釈迦ヶ岳,剣ヶ峰は,大黒山と同様,塩原カルデラ形成後にカルデラを埋めるように成長したと考えられています.従って,いわゆる外輪山にはあたりません.剣が峰,大入道の北側斜面が,鹿股川による谷地形(スッカン沢)となり,切れ込んでいるため,外輪山のように見えるのかもしれません.
(#307の回答も参考にしてください:管理者)(08/23/2006)

金子隆之(東京大学・地震研究所・火山センター)

Question #6203
Q
 中学校で理科を教えています。兵庫県の地質について少しずつ調べ、教材化を進めています。その中で、県内に活火山があるかどうかというのは気になるところで、はっきりしたいと思っています。

 兵庫県の中で一番新しい火山の活動は「神鍋火山」で、K−Ar年代で0.006〜0.022Maが出されています(古山勝彦ほか.1993. 山陰東部、神鍋火山群及び近傍の玄武岩質単成火山のK−Ar年代. 地球科学.Vol.47. p.377〜390)。しかし、この神鍋火山は、日本で108ある活火山(1万年以内噴火)の1つになっていません。

 この理由を教えてください。 (07/27/06)

橋元正彦:社会人:50

A 2003年1月に活火山の定義を変更して新たに活火山の追加をする際には神鍋山も候補火山となり、既存の文献データを調査しました。古山さん他の論文も承知しています。K-Ar年代測定は若い年代の測定精度が悪く、これだけで1万年以内に噴火があったかどうかを判定するのは困難です。活火山に認定すると言うことは防災対策などの行政対応影響を及ぼしますので慎重さが求められます。活火山に認定されるためには、より信頼度が高い放射性炭素同位体年代測定値が得られるとか、火山灰層など噴出物が完新世の地層の中に確認できるなどの証拠が必要です。説得力のある新たな研究成果が出るのを待っている活火山候補は神鍋山以外にもあり、今後数年も経てば活火山の見直しや追加指定が行われることでしょう。
(08/22/2006)

宇井忠英(環境防災総合政策研究機構・北海道支部)
Question #6195
Q 東北の日本海側に聳える鳥海山についてお教えいただきたいことがあります。
約15万年−7万年前に流出した溶岩が、山麓の吹浦まで達しています。その日本海に面した崖は、約20米ほどの高さがありますが、これは溶岩末端崖と考えていいでしょうか。守屋以智雄著『日本の火山地形』45頁に鳥海山の溶岩流が掲載されています。 (07/22/06)

荒木 知:その他:71

A
荒木様.秋田大学の林 信太郎と申します.吹浦溶岩の年代もご存知とはおそ れいりました.
さて,吹浦溶岩の末端部は日本海に舌のような形で飛び出していて溶岩末端崖 のように見えます.
ただし,どの程度原形をとどめているのか決めることはたいへんむずかしいと 思います.
なにしろ古いので侵食を受けているのは間違いないのですが,それがどの程度 か見積もることはむずかしいのです.
というわけで,あいまいですみませんが,「溶岩末端崖の様な形態をしている が本当にそうかどうかはわからない」
というのが,現時点でのお答えです.
(08/07/06)

林信太郎(秋田大学・教育文化学部・地学)
Question #6157
Q 先日、海嶺で形成された海洋プレートは海嶺から離れるにつれ厚くなり、それにともなってアイソスタシーを保つために海洋底はマントル内に沈み込むため、海洋底の水深も海嶺から離れるにつれて深くなる。との記述を見ました。
確かに海洋底の水深は深くなっているので、海洋プレートが厚くなっているのは何となくわかるのですが、海洋地殻の厚さが水深が深く(2000メートルは深くなっているように思えるのです)なっているのに見合うだけ海洋地殻が厚くなっているとは思えないのです。プレートが厚くなっているというのは、マントル部分が厚くなっているということでしょうか?そうであるならば、どのような仕組みでアイソスタシーは成立しているのでしょうか?教えていただけたら幸いです。 (05/22/06)

masa:社会人:28

A
 この辺のことは杉村新氏の「グローバルテクトニクス」という教科書(東大出版会)の第VI章「大洋底リソスフェアの生成」に詳しく書いてありますので,是非お読み下さい.
 まず,おっしゃるように,「プレートが厚くなっているというのは,マントル部分が厚くなっているということ」です.プレートは「リソスフェア」とほぼ同義で,(地殻)+(硬くて重くて冷たい最上部マントル)のことです.海洋底のリソスフェアの厚さ(d km)と年代(t Ma)の間には,d=7.5×(tの平方根)という関係があります(Maは百万年).つまり,できたてのリソスフェアは厚さ0 kmですが1億年前(100 Ma)のものは厚さ75 kmということになります.この75 kmのうち海洋地殻は表面の5 km程度で,残りはマントルです.
 アイソスタシーは海洋底全体でよく成り立っていることが,重力異常の測定からわかっています.しかし,大洋底では密度の大きいリソスフェアが密度の小さいアセノスフェアの上にあるために,リソスフェアが厚い部分は沈んでいます.これは地殻(密度小)とマントル(密度大)の間のアイソスタシーとは逆の関係になります(山脈など地殻の厚い場所は地形的に高くなっている).海洋下のマントルの密度の逆転構造(上のリソスフェアが重く,下のアセノスフェアが軽い)は根本的に不安定なので,この不安定を解消するために,プレートの縁でリソスフェアがアセノスフェアに沈み込んでいくと考えられています.
(05/23/06)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
Question #6140
Q もう10年以上前、或いはもっと前かもしれませんが、テレビ番組で、火山活動によってできた濃硫酸の湖(沼?池?)に船で漕ぎ出し、水質検査をしている火山学者の映像を見ました。湖全体がエメラルド色(確かそんな色だったような・・・)の濃硫酸で満たされていることに何とも言えない恐怖を感じるとともに、今にも転覆しそうな小さな船で湖の中に頼りなさそうに漕ぎ出していく火山学者の姿に余計にその恐怖を煽られたのを今でも忘れられません。火山のニュースを聞くたびにこの映像が頭に甦ります。しかしながら、これがどこの国のどこの火山だったのか、さっぱり覚えておらず、いつも気になります。このような湖沼は世界にはいくつかあるかもしれませんが、どうか、どこの何火山である可能性があるのか、教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。 このテレビ映像の火山学者は火山学会ではかなり有名な人だと思います。もしかしたら雲仙普賢岳でなくなった方かも. (05/16/06) あきら:社会人:35

A ご質問の火口湖はインドネシアのフローレス島にあるケリムツ(あるいはクリムツ)火山です.無謀な行動は火口湖の水採取が目的でしたが,湖水の酸性が強すぎて(PH=3の硫酸で)採水器の金具がすぐに解け落ちてしまいました.ゴムボートで無事に戻ってきたのはモーリス・クラフトで,その映像は奥さんのカティア・クラフトが録っていたようです,ご指摘の通り,この二人は普賢岳の火砕流で取材中に亡くなりました.彼らは,このケリムツや普賢岳を含めて,世界中の多くの火山でしばしば危険を冒しながら噴火の映像を録っていました.
(05/22/06)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)

Question #6137
Q 初めて質問させていただきます。
最近インドネシアのムラビ山の火山活動が活発になっているとの記事を読みました。
私事で大変恐縮なのですが、私の両親がインドネシアのバリ島に住んでおり非常に
心配です。
万が一噴火した場合、バリ島への影響はあるのでしょうか?
また、飛行機は通常通りフライトするのでしょうか?
個人的な質問ですみません。

(05/14/06)

カズパパ:社会人:29

A インドネシアのメラピ火山(現地での発音はムラピ)が5月中旬から活発な噴火活動が起こっています.そこでは,山頂で成長続ける溶岩ドームが部分的に崩れて火砕流が繰り返し発生しています.1991−94年に雲仙普賢岳で起きたものと同じ現象です.今のところ火砕流は山頂から南西側に5キロ程度まで流れ下っています.メラピ山ではこのような活動を過去にもしばしば繰り返しており,1994年には火砕流は約7.5キロ流れ下り,それによって約70名が亡くなりました.メラピの山頂には,現在,不安定に成長し続けるドームがあり,その崩壊によって火砕流が発生する可能性があるため,1万人を超える住民の避難生活が続いています.
 メラピの東数百キロにあるバリ島へは,風向きによっては微量の火山灰がまれに降る可能性がありますが,まず直接的な影響がないと思って良いでしょう.ただし,メラピ山上空を通過する航空機に迂回航路が指示されるなどの可能性はあります.
(05/21/06)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)

Question #6135
Q 先日、第三紀の火山を見ようと宮崎、熊本両県にまたがる市房山に登りました。(熊本県市房キャンプ場側から)事前に地質図により花崗岩、花崗閃緑岩に覆われているものと思っていましたが、花崗岩は5合目あたりまではよく卓越していて、それより山頂に至っては堆積岩のようで、おそらく四万十層ではなかったかと思います。特に山頂付近には海成層と思われる岩塊が数多くみられました(間違っているのかもしれませんが)。市房山はマグマの貫入のみで地表へは流出していないと思います。私の見間違いなのか、それとも四万十層に貫入した結果、基盤岩である堆積岩が盛り上がったのでしょうか。宮崎県の尾鈴山のように当時の山体は風化していてもちろん山の高さは第四紀の隆起も関係していると思いますが。 (05/03/06)

徳永良信:社会人:53

A ご指摘の通り,市房山の山頂およびそこへ至る登山道上部には堆積岩が露出しており花崗閃緑岩はありません.山頂部は弱い熱変成を受けた四万十層群です.元となる地質図が間違っていたために誤解を与えています.花崗閃緑岩の部分は浸食を受けやすく,浸食に耐えた,花崗閃緑岩体の屋根の一部に当たる堆積岩が山頂となったものです.市房山山頂部が花崗閃緑岩ではないので「市房山○○」という命名は好ましくないかもしれません.宮崎県の尾鈴山はマグマが噴出した部分(溶結した火砕流堆積物)とそこに貫入した部分(花崗閃緑斑岩と呼ばれる大きな岩脈)からなり,「市房山」岩体は地下にマグマが貫入した深成岩で,地上に噴出した部分はありません.
(05/03/06)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)

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