火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火をとらえる

噴火災害・ハザードマップ


Question #248
Q 初めて質問をさせて頂きます。ワタナベと申します。

先日NHKの番組の中で火山災害とハザードマップについて取り上げられておりまして 興味深く見ておりました。それによると、数ある日本国内の活火山の中でハザードマップ が整備されているのは2火山しかなく、対応が望まれるとコメントされていたように思い ます。番組では過去に南米の火山で起きた火山災害で約2万5千人の被害者を出した例な ども取り上げられていました。この例では政府がハザードマップを用意していたにもかか わらず、地元自治体の運用に難があって被害が拡大したと紹介されていました。

ハザードマップを作成しただけではそれがそのまま火山災害の防止につながる訳ではない のでしょうけど、なにぶん火山が多いわが国のことですし、マップが出来ている火山が2 つだけというのはいかにも少なすぎるように思います。そこで質問ですが、十勝岳や岩手 山以外にハザードマップの作成が進められている、または計画されている火山というのは 一体どれほどあるのでしょうか?。よろしくお願い致します。

(7/10/99)

ワタナベ:会社員:38

A ハザードマップは火山災害の軽減にとって非常に効果があるということは理解はでき るが,デメリット情報を公開すると観光客が減るのではないかという危惧や過去の経 験が二の足を踏ませているようです.防災情報の公開と観光は共存できるし,そうし なければいけないのだというのが番組の主旨だったかと思われます.

さて,ご質問の件ですが,少し内容を勘違いされているかと思います. 番組の中では,現在までに,すでに17火山でハザードマップが作成済みであると紹 介されていました.2火山だけだったのは,いまから10年前のことです.たしかにそ のころは,十勝岳と北海道駒ヶ岳だけでした.

その後,伊豆大島噴火や雲仙岳噴火の教訓をもとに全国各地の活火山で作成が進み, 現在では,以下の17火山で作成され公表されています. (*印は気象庁の常時観測火山) *十勝岳,*樽前山,*有珠山,*北海道駒ヶ岳,岩手山,*草津白根山,*浅間山,* 伊豆大島,*三宅島,*阿蘇山,*雲仙岳,*霧島山,*桜島,薩摩硫黄島,口永良部島, 中之島,諏訪之瀬島 (7/16/99)

千葉達朗(アジア航測株式会社・防災部)


Question #383
Q 火山に興味があるものです。
次の質問があります。
1 噴火(防災上)の危険度(確率)をどのようにして定義するのか
2 上記の定義は世界共通となっているのか
以上よろしくお願いします。 (01/18/00)

大塚 典彰:公務員:27

A さて、この回答は難しいです 四つの質問が混じっているようにおもいます

噴火の確率   噴火予知予測の問題でしょう 噴火の危険度  噴火現象ごとに異なる火山災害の種類ごとの危険度 防災上の確率  損害保険料率とかになるのか 防災上の危険度 これは、ハザードマップとしてなにかしら作られている

世界的にも同様ではないかと想像します (2/17/00)

千葉達朗(アジア航測株式会社・防災部)


Question #1045
Q 最近、浅間山の火山性地震が多発しています。しかし、火山性微動は観測されていないといわれていますが、火山性微動が観測されなければ、大規模な噴火は起きないと言う事なのでしょうか。もし、大規模な噴火や地震が起こるとすれば、被害はどの程度であると考えられますか。
そして、最近日本各地で起こっている火山活動と、今回の浅間山の火山性地震との関連はあるのでしょうか。

(09/21/00)

wm:アルバイト:19歳

A
 まず、浅間山の火山性地震と、最近活発な日本各地の火山活動との関連性ですが、 数十年以下の時間スケールで見れば関係はないようです。たまたま活動が活発になっ たのが同じ時期だったのでしょう。


 それから、火山性微動が観測されなければ大規模な噴火がおきないかどうかですが 、これは一概に答えられないと思います。火山性微動と火山性地震の区別は実際には すこしあいまいなところがあって、火山性地震が数秒間隔で起きた場合には火山性微 動と見なされることもあります。火山性微動にしろ火山性地震にしろ火山内部の活動 を示していますから、そのどちらかが、あるいは両方の規模が大きくなりかつ発生の 頻度を高めるようであれば要注意です。特に浅間山を中心として広い範囲で有感地震 や有感微動、鳴動などが頻繁に感じられるようであれば、活動の規模は大きい(自分 にも避難などの必要が出てくるなど)と思って間違いないでしょう。


 これまでの浅間山の活動の歴史をひもときますと、大きな活動としては227年前の 天明三年のものが知られています。天明三年の噴火では熱泥流による北麓の集落の壊 滅、鬼押し出し溶岩流の流出などが記録に残されています(このへんの記録の概略は 丸善から出されている理科年表にも紹介がされています)。このことから考えると、 天明三年の活動と同じぐらいの規模の活動が起きた場合、火口から半径20km以内では 何らかの被害を被るとかんがえてよいでしょう。またそれから離れていても長野新幹 線や上越新幹線、高速自動車道などが降灰によって運休や通行制限などになることは 必至でしょう。


 今回の浅間山の火山性地震がこのような活動につながるものかどうかについては、 私にはなんともお答えのしようがありません。 (9/23/00)


 筒井智樹(秋田大学工学資源学部)


Question #1435
Q 1979年9月に阿蘇山中の爆発で火口から850メートルの距離にあるロープウェーの火口東駅周辺で噴石により観光客の事故が発生した。この事故は活火山地帯を訪ねる一般観光客にとってきわめて教訓的である。この事故における観光客の‘危険から身を守る常識の欠如”とはなんですか? (01/17/01)

よしゆき:学生:19

A (質問の意味がよく分かりませんが、一応以下のように回答します)


 1979年9月当時は,火口周辺1km以内は立入禁止となっていましたが,火口から 850メートルの距離にあるロープウェーの火口東駅周辺は,その規制に入っていない と判断されていたため,団体の観光客がロープウエーで来ていました.彼らは,駅か ら100mちょっとの所にある丘の上に登り付近を散策していたときに,突然起こった水 蒸気爆発に遭遇しました.このとき,噴石の放出とともに低温のサージ(横殴りの噴 煙)が発生し,駅舎は破壊しました.
 この事故にはいくつかの要因が考えられています. 1.1km規制を徹底しておれば防げました.(つまり,活動中の火山地帯を訪ねる ことを禁止しておくべきです) 2.噴石やサージの放出方向が,運悪く,一般観光客の立ち入っていた所でした. (放出方向の予測は困難であるから,火口全周を立入禁止しなければならなりませ ん) 3.当時,火山活動は6月から活発化し,何度も爆発的な噴火を8月下旬まで繰り返 していました.8月下旬に台風が2回上陸して多量の雨を降らせ,火口周辺に堆積し ていた多量の火山灰が雨水とともに火口へ流れ込み,今まで活動していた火口を塞い でしまいました.自然に活動が低下したわけでなく,強制的に活動を抑えこんでしま ったのです.このため、爆発が発生する確率は時間とともに高まっていきました.し かし,最近の阿蘇火山の噴石の放出方向が,西から南の方向に限られていたので,行 政は東駅の方向には注意を向けていませんでした. 4.活動中の火山に近づくことは,それなりの覚悟を各自が持っていないといけませ ん.たとえ,公共交通機関を利用していても安全性は保証されません.(赤信号みん なでわたれば怖くないということはありえません) (2/1/01)

須藤靖明(京都大学・地球熱学研究施設・火山研究セ ンター)


Question #1405
Q はじめまして。埼玉で塾の講師をしている学生です。
先日、高校生から「富士山が噴火するとどんな被害があるの?」と聞かれました。学校の授業でレポ−トを書かされるようなのです。質問を受け、私も火山に興味があったので調べましたが、良い資料が無く困っています。噴煙による被害や火砕流など、富士山が噴火してから起こると予想される被害を詳しく教えてください。出来れば資料のあるHPも教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。 (01/12/01)

ヒロ:大学生:21

A 富士山の火山災害予測についてはいまだにお寒い状況であり,いわゆるハザードマッ プ(火山災害予測図)についてもきちんとした形で作成・公表されたものはありませ ん.富士山のまわりには観光依存度の高い自治体が多く,観光への悪影響を懸念する がゆえに災害予測図の作成がタブー視されてきました.昨年あたりから状況が好転し つつありますが,災害予測の作業はまだ具体化されていません.したがって,現時点 では残念ながら「良い資料」はありませんので,不十分ながら以下の資料を参考にし ていただく以外にないと思います.

・富士山火山防災ハンドブック
 国土交通省(旧建設省)富士砂防工事事務所・山梨県・静岡県が昨年作成した26ペ ージのカラーパンフレットで,火山災害についての一般的解説,火山としての富士山 の特徴や過去の歴史などがよくまとめられています.ただし,災害予測までは至って いません.現時点での入手方法については,国土交通省富士砂防工事事務所調査課, 山梨県砂防課,静岡県砂防室に問い合わせてください.

・海洋出版発行の「月刊地球」2000年8月号(特集号:富士火山の活動史と噴火災害 ).富士山の火山災害予測をテーマとし,火山学・火山災害の専門家の論説を集めた 特集号.富士山の火山災害予測についての現状や問題点を知るのに最適です.書店で 注文できます.

・損害保険料率算定会発行の報告書「火山災害の研究」(地震保険調査研究42)
 火山災害の整理・解説,火山災害予測・評価の実例についての311ページにわたる 詳しい報告書(1997年発行)です.富士山の災害予測の実例も載せられています.入 手については損害保険料率算定会に問い合わせてください.大きな図書館や大学図書 館で探すとあるかもしれません.

・国土庁防災局(現内閣府防災担当)発行の「火山噴火災害危険区域予測図作成指針 」
 自治体向けに火山災害予測図の作成方法を説明したマニュアル(183ページ+付図 31葉).作成例として富士山の災害予測の実例もいくつか載せられています.1992年 発行とやや古いため,入手可能かどうか不明です.大きな図書館や大学図書館で探す とあるかもしれません.

なお,富士山の将来を予測する上で鍵となるのは,富士山の生い立ちや過去の噴火災 害履歴です.それを知る上で,以下のようなHPや本が参考になるでしょう.

インパク静岡県パビリオン(火山の郷): http://www.7000m.com/inpaku/top.html 火山としての富士山: http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/Fuji/Fuji.html 富士山の歴史時代の噴火: http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/Fuji/fujid/0index.html 町田洋・白尾元理著「写真でみる火山の自然史」東大出版会(1998) 町田洋著「火山灰は語る」蒼樹書房(1977) 諏訪彰編著「富士山―その自然のすべて」同文書院(1992) (01/16/01)

小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)


Question #205
Q はじめて拝見させていただきました。とても勉強になりました。これからも期待しております。 さて、当方現在中学生向けの理科の教材を編集いたしております。 3年で火山が出てくるのですが、資料を見て下記の2点について興味がわき、質問させていただきます。 @火山噴火の予知について 具体的にはどのような方法で行っているのですか? 微動の観察以外にありましたら教えて下さい。 A噴火の危険度を数値化するという記事を見たのですが、主な山の数値とその数値の意味を教えて下さい。 どうぞよろしくお願いいたします。

(4/8/99)

黒い呪術師:会社員:38

A (1)火山噴火の予知について
 マグマが地下にたまって地表から噴出するときのことを想像してみてください.物 質がたまるのですから,山は膨らむでしょう.この膨らみをGPSといって人工衛星 を使った装置で観測したり,傾斜計や体積歪計などで観測しています.また,物質が たまって上昇すれば,あちこちに力が加わりますから地震や微動が起きます.また, マグマそのものやマグマから出てきた高温のガスが上昇して地下水と接触すると微動 が起きたり,火山ガスの成分が変わったり,地熱異常が起きたりします.地下の温度 も上がりますから,岩石の持つ磁場の強さが変化して地磁気の異常が起きる場合もあ ります.このようなさまざまな観測で異常現象を捉えようとしています.もっともこ うした多項目の観測を行っている火山はごく限られています.観測を充実させるには 納税者のみなさんの支援(+叱咤)が必要なのです.
 また,噴火の予測には異常現象を捉える努力だけではなく,過去の噴火の状態を詳 しく調べて,噴火の平均的な間隔や噴火の様式などを調べる努力も行われています. よく週刊誌などに「・・・・のおつげで富士山が噴火する」とか「次の噴火は富士山 」などという記事が出たりして,そのたびに問い合わせを受ける火山学者もいます. 観測データからは噴火を示唆するデータは全くないのですが,たとえば「今後1年く らいは噴火することはあり得ない」ときっぱり否定できないのが実情です.情報の空 白のを埋めるようにいろいろなデマが出てくるわけですから,こうした調査で噴火の 長期的予測をたてる研究も必要です. (2)噴火の危険度を数値化について
 この数値化は火山噴火予知連絡会のワーキンググループで検討されてきましたが, 具体的にはそれぞれの火山の活動状況や地元の社会的環境によって工夫する必要があ り,その検討が気象庁の方で行われているようです.試案の段階では,活動レベル0 の「静穏な状態」から,レベル4の「火山周辺に影響の及ぶ中〜大噴火が発生か可能 性大」までランク付けして公表するというものです.これまではややもすると「・・ ・・なので注意が必要」といった情報だけが出されて,安全になったという情報など はあまり出ていません.火山学が進歩して,よりわかるようになった情報は納税者に 還元していこうという趣旨と私は理解しています.多くのみなさんがこの趣旨をご理 解いただき,情報を有効に利用していただけたらと考えています.
 ところで,こうしたレベル化は,実は日本が世界に先がけておこなうものではあり ません.アメリカ合衆国ではずっと以前から火山活動をレベル化して情報を出してい ます.また,米国地質調査所のホームページには,いくつかの活火山の活動状況が掲 載されていて,毎週更新されています.現在の日本の場合は,活動に異常が出て臨時 火山情報が出されても,地元のテレビ・ラジオ・新聞で報道されることはあっても他 の地方でこの種の情報を入手することは簡単ではありません.たとえば,東京からあ る火山の付近に旅行しようとした人が,その火山について活動状況を知ることはほと んど不可能です.最近,多地方からの観光客が遭難するニュースをしばしば耳にしま すが,米国地質調査所のホームページのような体制があれば,こうした事故も少なく なるでしょう.よりよい情報をみなさんが受け取るためには,納税者としてみなさん が私たちを支援していただき,かつ納税者の権利として私たちを叱咤して情報を要求 していただくことが大切だと思います.蛇足ながら,火山活動のレベル化は 「先進国」である米国ばかりではなく,多くの方が「途上国」と思っていらっしゃる インドネシアでも行われていて,その情報がちゃんと機能していることも付け加えて おきます.


 米国地質調査所のロングバレーのページから入るといろいろと示唆に富んだ情報が 得られます.政府がその国の国民を保護するというのはどういうことか?政府は納税 者に対してどのような義務を負っているのか?という明確な思想が感じられます. http://quake.wr.usgs.gov/VOLCANOES/LongValley/

インドネシアの火山調査所のホームページは最新の活動状況が載せられているわけで はありませんが,観測体制を知ることはできます. http://mekira.gsi-mc.go.jp/index.html

もちろん日本も何もしていないのではなく,たとえば国土地理院のページではGPS を公表しています. http://mekira.gsi-mc.go.jp/index.html (5/10/99)

鍵山恒臣(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #5374
Q 最近火山の噴火について調べているのですが、火山の噴火で被害にあうのは何平方キロメートルくらいですか? (12/10/03)

渡部 徹:高校生/大学生:16

A きちんと調べれば、火山噴火は火山毎どころか噴火の種類や季節によってもその被害のもたらす範囲がずいぶんと違うことが分かるはずです。何平方キロなど という安直なものではありません。鹿児島の南方で起きた約7000年前の規模の大きい噴火では火山灰が日本全土を覆いました。また、硫酸ミストが成層圏 に大量に送られ太陽光がさえぎられて地球規模での異常気象が生じたこともあります。南米では火山噴出物の熱で氷河がとけ、それによって生じた泥流が流れ 下り、火口から約40キロも下流の街を全滅させたこともあります。
 (12/11/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #5331
Q 火山の噴火で、自然以外に、人には、どんな影響がでるんですか?
それが原因で、亡くなった人とかもいるんですかね? (11/28/03)

黒崎:小学生:12

A まず左の「小中学生から多い質問」を読んで下さいね。 火山噴火がもたらした災害によってこれまで大変多くの人が亡くなりました。火山は私たちにさまざまな恵みをもたらしてくれる一方で、その噴火が大きな災 害を引き起こすことがあるので要注意なのです。 特に噴火現象のうち、火砕流や泥流(時には津波)は最も危険なものです。また、大きな噴火では成層圏まで火山灰とともに大量の硫酸ミスト(霧)が放出さ れ、それらが太陽光をさえぎって深刻な異常気象をもたらします。
 (11/30/03)

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