火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

マグマとマグマ溜まり

熱源


Question #80
Q 金星の火山についてお尋ねします。金星・地球・火星と比較して、火星(若しくは水星)は地球に比べて小さいので、惑星形成時に内部に貯えられたエネルギーが地球より少なかった為、今では完全に惑星内部が冷え切ってしまい火山活動等は起きていないと習いました。この事を元に金星について考えると、金星と地球は半径がほぼ同じであるにもかかわらず、どうして地球では火山活動等が未だに活発だが金星では火山活動がないのでしょうか。 それとも、金星でも火山活動等の活動は現在も起きているのでしょうか。お願いします。 (5/25/98)

地球惑星物理学科進学を夢見る河合塾生。:予備校生:19

A
 現在も金星に火山活動があるのかどうかは分かりません.火山活動が直接観 測されてはいないからです.1990-1994年にマゼラン探査機が金星地表の撮影 を行ないましたが,その間,火成活動による地表の変化は観測されませんでし た.しかし間接的な証拠らしいものはいくつかあります.
 ・1978-1984の6年間の間で金星大気中のSO2,H2SO4(金星の火山ガスの成 分)の量が90%も減少した
 ・1991にガリレオ探査機は金星から稲妻のようなパルスをキャッチした(噴 煙柱に伴う稲妻?)
 ただし,これらを火山活動起源だとする説が唯一ではなく,他にもいろいろ な説明がなされています.金星には火山地形が数多く存在しますが,このよう な観測結果をみると,現在の金星では,火成活動は地球ほど活発ではないよう です.


 現在の金星で火成活動が活発ではない理由として,金星では5億年ほど前に全 球規模での大規模な火成活動と構造運動が起き,その後火成活動は小規模なも のになってしまったという説が一般に受け入れられています.


 なぜこのような火成活動の消長が起きるのか,いくつかの仮説が提案されて います.例えば,ある説によると,高い地表温度のため,金星の地表は変形し やすく,マントル対流によってリソスフェアが金星内部に沈み込みやすくな る.この効果がさらにマントル対流を活発化させ,この活発化のピークは間欠 的に来る.計算によると5億年程度の周期で,ピーク時に大量の溶岩が噴出 し,全星規模での火成活動や構造運動をもたらすと考えられています.
 これらはあくまで仮説であり,絶対正しいというものではありません.現在 多くの研究がなされている最中であり,これらの仮説もこれから先に書きかえ られていくと思われます.


 なお,火成活動の熱源は惑星形成時に内部に蓄えられたエネルギーだけでな く,放射性元素の崩壊にともなう熱や潮汐力などもあります.
 例えば木星の衛星のイオは半径が1820kmと,地球(6400km)よりも小さい天 体ですが,火成活動は太陽系で最も活発な天体です.潮汐力が強く関わってい るからです.木星から近い所を公転していること,さらに公転軌道が他の衛星 エウロパ,ガニメデと複雑な関係にあることで,イオは公転しながら圧縮され たり引き伸ばされたりします.このような作用が絶え間なく続くのでイオの内 部は熱くなり,火成活動が活発になっていると考えられています. (6/2/98)

永澤千明(東京大学理学部博士課程)


Question #7
Q 私は群馬県に住んでおりますが、温泉地と火山 についてちょっとうかがいます。 休火山のそばの温泉は比較的、湯の量も温度も 少なく低いのですがやはり次第に枯渇してしま う運命なんでしょうか。 幼稚な質問でごめんなさい

(2/13/97)

小川広夫:無職:74

A 温泉の熱源となる火山性の熱源が冷えてしまうまでには一般に数万年から数十 万年かかります。そういう意味では温泉の寿命は半永久的と言ってよいかもし れません。しかし、実際には湯の量がへったり、温度が下がったりすることが あります。これらの変化の原因としていろいろと考えられますが、人為的な要 因もその一つです。例えば、温泉が自噴している所の周辺で、過剰に温泉の揚 水が行われれば、自噴する湯の量が減少したり、自噴が止まってしまうことが あります。

森俊哉(東大理学部)


Question #255
Q すごく基本的なことかも知れませんが、質問させて下さい。どうしてマグマのような高温の物質が地球内部にあるのですか。 どこから熱を供給されているのですか。 (8/12/99)

小澤:植木職人:35

A 地球は中の方ほど高温になっていて、現在の地球では、地表から深さ100kmで 1000度程度、中心では6000度ほどと考えられおり、中から外に向かって熱の移動・ 供給が起きています。ではこうした温度構造はどのようにして作られているのか。 簡単に言ってしまえば、 (1)もともと高温であったものが表面から冷めつつあるので内部まだ熱い、 (2)内部に発熱物質があり今も熱が生産されている、 という2つの理由からです。

もう少し熱源について説明すると、 主なものは、地球形成時から蓄えられてきた熱、および、放射性元素が壊変する 時に生じた熱です。 微惑星が衝突・合体を繰り返して地球が現在の大きさまで成長する時には、 大量の重力エネルギーが解放されこれが熱に変わります。また、地球の中心に 金属核が作られる際に解放された重力エネルギーも地球内部で熱となります。 これらが地球形成の比較的初期に生産されて蓄えられてきた熱であるのに対して、 ウラン・トリウム・カリウムなどの放射性元素の壊変エネルギーが転じた熱は、 初期地球と比べて熱生産量が現在では1/3程度に減ってはいるものの、今も なお生産され続けています。 (8/13/99)

安田 敦 (東大・地震研究所)


Question #1094
Q はじめまして。ずっと疑問に思っていましたことを質問します。
マグマですが、これは、どうして地球に存在しつづけるのでしょうか。何億年も前から、高温のままだと思いますが、そのエネルギー源は何なのでしょうか。核反応の一種でしょうか。
時間が経つと地球から熱が放射されて地球が冷えてマグマも固まるような気がするのですが。 (10/06/00)

まさみ:会社員:50

A 御考えのように放射性元素(例えばウラン、トリウム、カリウム)の壊変によるエネルギーが 地球の冷却を遅らせていることは事実ですが、現在の地球上にマグマが存在する理由としては 別の要因も考える必要があります。

現在の地球の場合、マグマが作られる状況として3つ考えられます。 一つは減圧融解というメカニズムが働く状況です。 地球を構成する岩石の融けはじめる温度は圧力が低くなるとともに低温になっていきます。 このため、地下400km(圧力約14万気圧)で1400度の岩石は固体ですが、 地表では1200度の岩石はどろどろに融けてしまいます。 このため、マントル内の上昇流で地表近くにまでマントルの岩石が持ち上げられると 岩石の一部が融けてマグマを作ることになります。 海嶺と呼ばれる海洋プレートのわき出し口では、 このようなメカニズムで玄武岩マグマが生産され、海洋地殻を作っています。 マグマを作る別のメカニズムとして、低融点成分(例えば、水)との混合があります。 例えばマントルを構成するペリドタイトという岩石は、深さ100kmの圧力下では 水の存在しない環境では1400度近くまで融けません。 しかし、水が多量に存在すると1000度程度で融けてしまいます。 日本列島など島弧に火山が多いのは、プレートの沈み込みによって大量の水がマントル内部に 持ち込まれるため、岩石の融点が下がって、マグマを生産しやすい環境ができているためと 考えられます。 マグマ生産の3番目の状況は、融点の異なる物質どうしの接触や混合です。 一口にマグマといっても、その温度はマグマの組成によって大きく異なります。 最初は低温の低融点の岩石が高融点で高温の岩石と接触すると、高温の岩石から しだいに熱をもらって低融点の岩石が融けはじめてマグマを作ることがあります。

以上のように、マグマが存在しつづけているといっても、ずっと同一のマグマが存在しているのではなく、 温度や圧力、揮発性成分の量といった周辺の環境変化によって固体岩石であったり、融けてマグマになったり 形を変化させながら存在しているわけです。ずっと高温状態が必要なわけではありません。 マントル対流やプレート運動などが、岩石のおかれた環境の変化をもたらしているわけですから、 マントル対流やプレート運動の原動力、すなわち地球のゆっくりとした熱の放出が マグマがずっと作り続けられている原因と考えることもできるでしょう。 (10/09/00)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #3859
Q なぜマグマは出来たのですが?地球が出来たのはビックバンが原因ってことはマグマもビックバンが原因なのでしょうか?
それからいつ出来たのか?何のために出来たのか?も教えてください。
あと、なぜマグマは何年経っても冷えないのかも教えてください。 (02/13/03)

☆おちょめ☆:中学生:15

A 回答が遅くなってごめんなさい. それにしても,ビックバンとの関連性とは壮大な話ですね. 時間や空間や物質のすべての源が約140億年前におこったビックバンであるという点 から言えば, マグマとビックバンも無関係とは言えないでしょうが,現在のマグマとの直接の関係 はありません.

いただいた質問には,大事な点が2つ含まれています.一つは物体が冷えるスピードは なにで決まるかということ,もう一つはマグマがどうやってできるかということです.

物体が冷えるためには,熱を逃がさなくてはなりません.この場合,表面積に比例して 熱が逃げていきます.一方,物体が持つ熱の総量は物体の体積に比例するので, 大きな物体ほどたくさんの熱を持っていることになります. ところで,物体表面積は物体のサイズの2乗に,体積はサイズの3乗に比例しますか ら, 結局のところ,大きな物体ほど冷めにくいということになります. カップに少し入れたお茶はすぐに冷めてしまうけれど,なみなみと注げばなかなか冷 めないということを 思い出してください.マグマの場合も同じことです. 地表に流れ出た厚さ数メートルの溶岩はすぐに冷え固まってしまいますが, 火山の地下にある直径数kmのマグマ溜まりが冷え固まるには数十万年が必要です.

次に,マグマがどうやってできるのか. マグマは岩石がとけてできたものです.ではどのような場合にとけるかというと, (1)温度が上がった場合,(2)圧力が下がった場合,(3)融けやすい別の物質 が混ざった場合,です. 「圧力が下がった場合」というのは少しわかりにくいかもしれませんが,たいていの 物質では 物質のとける温度は圧力が高いほど高くなっていきます.例えば岩石の場合も地下 100km(圧力3万気圧)で 1200度では岩石は固体のままですが,その温度を保ったまま大気圧下に持ってくると どろどろにとけてしまいます.

地球の46億年の歴史のなかでは地球のどこかでは常にマグマが存在しています. 地球ができる際には幾つもの微惑星が地表に降り注ぎました.この時には衝突のエネ ルギーで 地表には煮えたぎるマグマの池やマグマの海ができたと考えられています.これは( 1)のケースです. 一方,現在の地球でのマグマのでき方を考える場合に重要となるのはおもに上記の( 2)と(3)の場合です. マグマができる場所は主として,海嶺,ホットスポット,沈み込み帯の3カ所ですが ,海嶺とホットスポットの場合には(2)の圧力低下がマグマのできる主要な原因で す.これに対し,日本のような沈み込み帯の火山の場合には, 沈み込むプレートによってマントル内に水が供給されて,この水の存在によって岩石 の融点が下がることも重要なので (3)もマグマの生成に効いてきます. 地球はとてもゆっくりしか冷えないので,現在の地球の表面温度は20度くらいですが, 今でも地下深くではでは温度が1000度を越えています.でも地下深い所すべてがどろ どろに とけたマグマになっているわけではありません.外核と呼ばれる深さ2900kmから 5100kmの領域を除けば 地球の内部はほとんど固体です.ではどうしてマグマが作られるかというと, マントル対流やプルーム活動によって固体状態の地球の中の方の岩石が地表近くに上 がってきた際に 圧力が低くなることが効いて岩石が融けてしまい新たにマグマが作られるのです. マントル対流やプルーム活動は地球内部の熱を効率よく外に放出するための しくみです.だから地球の内部が十分に熱いうちはマントル対流やプルーム活動が起 きて, それに伴って次々とマグマも作られ続けていくのです. (Mar-07/2003)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #3908
Q 地球誕生から40億年近く経過しているのになぜ地下のマグマは冷えないのでしょうか?素朴な疑問なんですが素人には分かりません。ご教授願いたいと思いメールしました。 (03/11/03)

ゴア:教師:43

A 19世紀の後半に,有名な物理学者であるイギリスのケルビン卿は,地球内部から出て くる熱流の 計測結果をもとにして地球の年齢を計算しました.地球が最初はどろどろにとけた火 の玉であった として,現在のような固体の地表と熱流量の計測値を満たすように冷えるのには,ど のくらいの 時間経過が必要かを見積もったわけです.

その結果は,地球の年齢は2000万年〜4000万年というものでした. 何故彼が誤った答えを出してしまったかというと,彼は放射能による発熱のことを考 慮していなかった からです.地球の内部にはウラニウム,トリウム,カリウムといった放射性元素が存 在しています. これらの半減期は,核種ごとに違うものの数億年から100億年以上と非常に長いので ,現在でも まだ地球内部では放射壊変による熱が生産されており,これが地球の冷えるのを遅ら せています.

関連する内容として,左側のコラムの 「トピック項目表示」に入って,「 マグマとマグマ溜まり:熱源」の項目がありますので,こちらもご覧ください.

(05/05/03)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #3999
Q 一般的な地温勾配を超えるような温度の温泉の起源や分類について調べていてふと思ったのですが,深層熱水によるもの以外の温泉について,一般に「火山性」,「非火山性」等と分けますけれど,「非火山性」といっても何かしら地下に熱源がないと発生しないし,熱源といってもマグマくらいしかないでしょうから,火山性にしても非火山性にしても,どっちもマグマ起源なのではなのかな?,と思い始めたら,火山性,非火山性という区分は,何なのだろうか???と,なんだか混乱してきてしまいました。
「非火山性」とは,何なのでしょう???
ただ時代の区分だけ?なのでしょうか??
マグマ以外の熱源って,あるのでしょうか???
もし,熱源がマグマしかないのであれば,深層熱水以外にこの先発生する温泉は,全て「火山性」ですよね・・・・ (06/06/03)

りょん:会社員:35

A
 地殻内部の高温領域の熱源としては,「生きているマグマ」と「死んだマグマ」が 考えられます.「生きているマグマ」とは溶融した部分を含む高温領域です.「死ん だマグマ」はかつては生きていたが,時間が経って冷えたために殆ど溶けた部分が無 くなった高温領域です.マグマは固化するとマグマと呼ばれなくなるので,「死んだ マグマ」という表現は妥当ではないかもしれません.(注:この「生きているマグ マ」,「死んだマグマ」という言葉は私がこの場のみで使用している語句で日本の火 山学において普遍的に使用されているわけではありません)
 マグマの寿命は,一般的には数十万年程度と考えられています.この寿命の後は 「死んだマグマ」なるわけですが,まだ十分に熱を持っています.これが完全に冷え 切り熱異常のない領域になるまでにはさらに時間が必要で,おそらく数100万年以 上は必要と思われます.日本には多くの火山があります.第四紀(約160万年前から 現在まで)の火山の熱源による温泉水は「火山性」と分類されるでしょう.しかしそ れ以外の温泉は「非火山性」と分類されているのかも知れません.(注:「火山性」 と「非火山性」の分類も確かな判定基準があるわけではなく,研究者の判断によりま す.活火山に関係していない温泉水を「非火山性」としているのではないでしょう か?)「非火山性」と分類された温泉水の熱源が古い火山の「死んだマグマ」に由来 する可能性は十分にあると思います.
 マグマには「生きているマグマ」と「死んだマグマ」の他に発生して間もないため に火山を作っていない「あかちゃんマグマ」も考えられます.有馬温泉という有名な 温泉がありますが,この温泉水のH2Oの同位体比は典型的なマグマ起源のH2Oの特徴を 示しています.有馬周辺には第三紀火山岩類が分布していますが,これが現在の温泉 水に含まれるであろうマグマ性H2Oの起源になっているとは考え難いと思われていま す.そこで,仮説ですが,有馬温泉の下には見つかっていないマグマがあるのではな いかと考えている研究者もいるようです.
 以上をまとめますと,「非火山性」温泉水の熱源として,「死んだマグマ」と「あ かちゃんマグマ」が可能性として考えられます.
 (06/09/03)

大場武(東京工業大学・火山流体研究センター )