火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火現象と噴出物・岩石・鉱物

柱状節理


Question #39
Q 栃木県の塩原で地質調査を行ったとき、同じひん岩の貫入岩でありながら川の右岸と左岸での亀裂の走向、傾斜や性状が明瞭に変わるのに興味を持ちました。 たぶん貫入時の冷却の状態の違いによるものと思われますが、貫入岩に関する本は少なく、 どうもわかりません。貫入岩の一般的な節理の入りかた。貫入岩に関する書物を教えてください。 (9/13/97)

コウジ:会社員:23

A
 節理はさまざまな成因でできますが,ひん岩なので,単純化のために冷却節 理に問題を限ります.冷却節理であれば,貫入岩という限定は必要でなく,高 温の岩体からの冷却節理一般の問題として,岩体の形と母岩の状況だけを考え ればよいでしょう.たとえば,陸上溶岩流とシルとをくらべれば,溶岩は片側 が空気,片側が岩盤に,シルは両側とも岩盤に接しているだけで,形は同じと 考えてよいはずです.
 特別に巨大でないかぎり,板状の岩体の冷却節理の代表は柱状節理です.こ れは,冷却とともに,(ある温度の)等温面が冷却面(岩体の周縁)から岩体 の内側に平行移動することによって作られるもので,泥田の表面にできた干割 れとよく似ていて,一旦割れ目ができれば,先端への応力集中でそれが内側に 延びてゆくのです.経験的には,岩体内部まで径10cmというような細い径の柱 状節理は,水中(あるいは水に飽和した未固結堆積物中)の岩体に限られま す.
 一般に冷却のrateが大きい岩体の縁近くでは,柱の径が細く,それらの何本 おきかが内側に向かって成長を続けることで,岩体内部は(周縁よりも太い) 一定の径の柱状節理が安定して作られます.溶岩等の水平の岩体であれば上下 から,岩脈であれば左右両側から,別々の柱状節理系が成長し,通常は中間で 両者が接合しているのを観察できます.溶岩等の水平の岩体で,上下の整然と した柱状節理に挟まれた中間に,屈曲した異様な節理帯が発達することがあ り,その場合には,上部(下部)コロネード(upper(lower)collonade)とエ ンタブラチャー(entablature)という術語が用意されています.これは,そ れまでの等温面の平行移動では温度勾配の向きが一定していたのに,両側から 等温面が近づくと温度に関してほぼ等方的な領域が生じ,そこでは,岩体の外 形によらない副次的要素によって節理が生じるためと解されます.
 柱状節理については,Spry(1962)*の論文があります.かなり古いもので,も っと新しい論文もありますが,これが最も一般的でわかりやすいと思います. 国内の実例としては,Aso-4火砕流堆積物の溶結凝灰岩についての記載が5万 分の1図幅「諸塚山地域の地質」にあります.
 冷却固結時にできた節理には,板状節理もあります.これは,流理に起因す る不連続面から発生するものと,岩体内の差動に起因する剪断応力によるもの とあるようです.一般に固結時に剪断応力が働くような条件では,冷却節理の 成長ももそれに影響されると思われます.注意すべきことは,冷却節理は収縮 による引っ張り応力の解放なので,解放がどんな方向の節理で実現されてもよ いことです.具体的には,岩体の外周部は柱状節理で包まれ,内部は板状節理 が発達し,中間の遷移帯はなく,ほとんど突然に両者が入れ替わるという例も ありました.
 ながながと書きましたが,上はすべて一般論です.ご質問だけでは現場の状 況がわからず,とても個別的な回答はできません.現実の節理は,上記の単純 化したモデルが複合してわかりにくいことが多いのです.岩体と母岩の関係が 最も重要ですが,現場での観察から理解に近づけばとてもうれしいことです.

*Spry,A.(1962) Theoriginofcolumnarjointing,particularlyinbasaltflows. Geol.Soc.AustraliaJour.vol.8,191-216. (9/22/97)

小野晃司(応用地質(株))


Question #253
Q 地学の勉強をしている学生です。卒業論文を書くのに困っていることがあります。 1)ペペライトについて。 あまり詳しい解説が載っている論文を見つけることができません。 詳しい出来方や、関東近辺でもし実際に見ることができるところがあったら教えてください。 2)そして、柱状節理について。 どうやって出来るか分かっていたつもりだったのですが、 ほかの方の質問や、解答を読んでいたらハッキリしなくなってしまいました。 そこで、どう流れたら、どの方向に節理が入るのか、図などで解説しているものなど有りませんか? 教えてください。 (8/7/99)

????:学生:23

A 地学の卒業論文の研究ですから,ホームページの質問コーナなどに安易にたよらず, できるだけ御自分で文献調査されることを強く望みます. (1)は地学辞典によれば,ペペライト(火山岩の破片と堆積岩の破片の混合物)の 代表的な論文は, B.P.Kokelaar (1982) J.Geol.Soc., London, v.139, 21-33. となっています.なお,関東地方では伊豆半島や神津島のなどの火山地域のように海 底火山活動で成長を始めた火山にはよくマグマと水を含んだ堆積物の反応した証拠が よく観察されます.例えば以下の論文などがあります. 狩野謙一(1983)安山岩質海底火山の浅部構造‐伊豆半島南端部の新第三系白浜層 群に見られる例‐.静岡大地球科学研報,8,9-37. 坂本 泉(1998)神津島千両池周辺で観察される流紋岩質溶岩に伴われるハイアロ クラスタイト〜ペペライトの岩相変化(演旨),日本火山学会講演予稿集,1998- 2,p.98. (2)節理は割れ目です.冷却や流動で溶岩にかかる歪みは溶岩自身がゆっくりと変 形して解消しようとします.しかし,溶岩が冷えて縮んだり強く押されたりすると, 溶岩が変形して解消できる以上の大きさの歪みがかかり,溶岩は破壊する(割れる) わけです.乾いた田んぼの表面や土のグランドの水たまりの泥にひび割れがみられま す.乾燥による泥の収縮の割合が乾燥を続ける泥の変形の割合を上回ったためです. でも,泥が厚いとまだ湿っぽい内部でひび割れが止まっています.溶岩流も泥の層と 同じように横広がりですから縦方向に柱状の節理が入ります.溶岩は冷えると収縮し ます.冷却は溶岩流の上面と下面から起こりますから,上面と下面から内部に向かっ て割れ目ができ,最後に真ん中で交わるわけです.そこでは複雑な形の節理ができる ことがあります.さらに,それぞれの柱状がさらに冷却して収縮すると,今度は柱を 輪切りにスライスするようにすき間の小さい節理ができます.なお,垂直に貫入した 溶岩の岩脈は左右から冷やされますから,横になった柱状節理ができます.
 流れによってできる節理は収縮が原因ではありません.氷河のクレパスの出来方と 同じで,流れ続けようとする内部と地面との摩擦で止まろうと外側部で歪みが生じて 割れ目ができるのです.特に固まりかけた場合などに,溶岩の変形が追いつかなくな り割れ目ができます.氷河のように上から見た溶岩流の両端だけでなく,溶岩流の底 面の近くに小さなクレバス状の節理がたくさんできます.これは溶岩流の下面とほぼ 平行でやや下流側に傾いています.板状節理ともいいます.これは,後から成長する 柱状節理とはほぼ直角になります.
 図書館に行って火山の教科書や辞典で「溶岩流」の項などの図解を調べましょう. (8/17/99)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #232
Q 溶岩についての質問です。 沖縄県の久米島にある畳石のことなんですが、あれは、太古に噴火がありそのときの溶岩が、 急激に冷えて固まって、あのような、きれいな六角形なしていると聞いたのですが、実際に 溶岩が固まるとあのように形作ることがあるんでしょうか。 また、一つ一つの六角形が、柱状になっているとのことですが、どのような条件があると柱状 になるのですか? (6/18/99)

畳石研究中:大学生:23

私は中学3年生です。理科では地震や火山について勉強しています。そして、今度の7月 9日に野外観察で地層などを見に行きます。 それで、私は「柱状節理」について調べることになりました。インターネットで色々調べた のですが、どれも言葉が難しくてよく分かりません。 そこで、「柱状節理とはどんなもので、どうやってできるのか」を、簡単に、わかりやすく 教えて下さい。よろしくおねがいします。 (6/21/99)

大分F中学校生徒W:中学生:15

A
 上の2つの質問にまとめてお答えします.火山の火口から流れ出した溶岩流が, 固まったあとで崩れたり侵食されたりして,その断面が見える場所では,多くの 場合,多角形の柱が林立したような「柱状節理」が見られます.これは,溶岩流が 固まって冷えるときに,温度低下とともに溶岩の体積が収縮し,そのために規則 的な割れ目ができたものです.でき方から言うと,田んぼの表面が乾いた時に 泥が収縮してできる「干裂」(マッドクラック)に似ています.
 柱状節理の断面は確かに六角形のことが多いですが,必ずしも正六角形では なく,四角形,五角形,七角形,八角形のこともあります.
 柱状節理の柱の方向は,重力の方向(上下)とは関係なく,溶岩が冷えた時の 等温線に対して垂直になります.従って,例えばカマボコ型の溶岩流を胴切りに した場合,側面の近くでは柱の方向はほぼ水平になり,全体としては溶岩の中心 から柱が放射状に発生しているように見えます.ただし溶岩流の中央部付近では, 柱状節理の方向が乱れ,からみ合ったように見えることがあります.
 柱の大きさ,つまり割れ目の間隔は,溶岩の化学組成にもよりますが,ゆっくり 冷えた場合ほど大きくなるようで,一般に溶岩流の表面近くでは小さく(10〜20 cm程度),中心に近づくほど大きくなります(50cm〜1m).ハワイの火山の 溶岩 湖では表面にも柱状節理が現れましたが,通常のガサガサした溶岩流の表面に は柱状節理は現れません.柱状節理は溶岩だけでなく,火砕流が冷えて固まった 「溶結凝灰岩」や,マグマが地下で冷え固まった数10m〜100m幅の「岩脈」や 「岩床」にもよく見られます.しかし,もっと大規模な数km大のマグマが冷え固まっ た花崗岩などの「深成岩体」には,「柱状節理」と呼べるようなものはなく,数m 間隔のサイコロ状の節理がよく見られます.また,「柱状節理」よりも「板状節理」 が発達する溶岩もあります.見事な柱状節理ができるためには,適当なサイズの マグマが適当な速さで冷却することが必要なようですが,詳しい条件は私には わかりません.
 また,人間の目の前を流れた溶岩流に節理ができているかどうかを確かめた例 として,1983年の三宅島噴火の場合があります(日本火山学会「三宅島の噴火 1983」参照).厚さ4mの溶岩を掘ったところ,細かい割れ目がたくさん見られた そうです.厚さ10mの溶岩では,噴火後200日経っても溶岩の温度は500度 以上でした.ハワイの例でも,15m程度の深さの溶岩湖が1000度以下になって 完全に固結するには1年程度,100度以下にまで冷却するには4年程度の時間 がかかりました.ハワイの溶岩湖では,柱状節理は溶岩が1000度〜900度程 度の温度の時に形成されたようですが,もっと低温でも柱状節理ができるという 意見もあります.
 なお,柱状節理を実験室で作るやり方が最近の論文に書いてありますので, 紹介します:Muller, G. 1998: Experimental simulation of basalt culumns. J. Volc. Geotherm. Res., 86, 93-96. (6/22/99)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #226
Q 初めて質問させてもらいます。 昔、九州に家族旅行で行ったときに、阿蘇山で立派な柱状節理をみました。 柱状節理は冷却面と垂直の方向に割れ目が入ると習ったのですが、僕のみた柱状節理では縦方向の割れ目の上部に、 冷却面がバラバラで、柱の1本1本が互い違いの方向を向いている柱状節理(?)をみました。 このような柱状節理はなぜできるのでしょうか。 できればお答え下さい。

(6/10/99)

けん:学生:21

A 地表を流れた高温の溶岩が冷却するときに上面では空気と接して,下面では地面と接 しています。それぞれの表面で冷却されて,収縮割れ目が形成されますが,内部はま だ高温ですので,冷却した表面から中心部に割れ目が進行していきます。溶岩(溶結 凝灰岩のときも)均質で全体に一様に冷却が進行した場合にきれいな柱状節理が形成 されると考えられています。

柱状節理の中をよく観察すると等間隔のステップがあったり柱に直交するほぼ等間隔 の節理がありあたかも石をを積み上げたように見えることもあります(玄武洞な ど)。その節理表面のプリューム(節理の形成じの進行方向)が節理のステップ毎に 異なってることから,柱状節理は全体が一時にできるのではなく,冷却の進行に伴い 一定の厚さずつ段階的に形成されると考えられています。

上下から伸びてきた柱状節理は,中央部付近に達すると一旦止まります。全体に温度 が均一となり等温面なるものが存在しなくなるためです。

最後にそれら相互を連結するようなつなぐように割れ目が入るわけです。このような 柱状節理は上面と下面から独立に形成された場合,六角形(正確には四角から八角ま である)。それぞれの大きさや位置は上下で異なっているはずです。そのため、複雑 に曲がったりねじれたりすると考えられます。

決して、溶岩流の中央部の等温面が複雑な曲面となっているわけではありません。こ のような節理群は柱状節理と区別してその形状からエンタブラチャーと呼びます。節 理はいつも等温面と直交しているわけではないと言うことです。 (7/16/99)

千葉達郎(アジア航測株式会社・防災部)


Question #2660
Q 高校生です。宿題で天人峡の柱状節理を調べているのですが、柱状節理の間隔または柱状節理そのものによって柱状節理もとになった火砕流が堆積されたおおよその年代・年がわかるのでしょうか。もしわかるのなら、その年代・年の具体的なもとめかたを教えてください。よろしく御願いします。 (09/12/02)

ソラ:高校生:16

A 天人峡の火砕流堆積物を作った大雪山の火山活動についてはhttp://www.asa.hokkyodai.ac.jp/research/staff/wada/TAIS/taisetu-text.htmlで紹介されています。

柱状節理は溶岩や溶結した火砕流堆積物(溶結凝灰岩)などが冷え固まる時に体積収 縮することによって生じるものです。冷却の速度、冷却の向き、柱となる元の材質な どによって柱状節理の間隔や性質(できる方向や内部構造)が大きく異なります。柱 ができた後の年代(時間)には関係がありません。
 (09/14/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)