火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

火山のできる場所と地球の大構造

プレート・海洋プレート・大陸プレート


Question #532
Q 地球科学系の本を読んでいると「地殻」という言葉と「プレート」という言葉を
よく目にします。それぞれの意味は、本などの説明からだいたいわかるのですが、
「地殻」と「プレート」の違いについてイマイチわかりません。
この2つのものは、同じもの、つまり
「地殻」=「プレート」
として構わないものなのですか?それとも、厳密には違うものなのですか?

この点について、教えていただけますか。お願いいたします。 (05/02/00)

ライアン:大学生:21

A
 どうも読んだ本の書き方がまずかったようですね.
 「地殻」と「プレート」は全く違う概念です.単純に言えばプレート=岩石圏(リ ソスフェア)であり,言いかえればプレート=地殻+最上部マントルです.地表から モホ面までが地殻で,厚さは海洋地域で約5km,大陸地域で約30kmです.その下がマ ントルですが,地下約100kmの深さのマントル中に地震波の速度が数%遅くなる柔ら かい層(低速度層)があり,それより上が硬いプレートです.低速度層はアセノスフ ェア(軟弱圏,軟流圏,岩流圏などと訳す)とも呼ばれます.海嶺や島弧の下では, プレートが薄くてアセノスフェアが地殻の直下まで上昇してきている場所があり,そ こでは地殻=プレートということになりますが,他の多くの場所ではプレートはもっ と厚くて,100km程度の厚さがあるということです.
 地殻は長石を主とした花崗岩や玄武岩・斑レイ岩でできていますが,最上部マント ルは長石を含まないカンラン岩でできています.低速度層ではカンラン岩が部分的に 溶けていると言われています. (5/09/00)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)


Question #2276
Q 突然ですが、マグマと溶岩とマントルと海洋プレートの関係を教えてください。
特に、マグマとマントルの違いが、良く分からないのですが・・・・・
あるHPで、「中央海嶺では、実に地球上で発生するマグマの80%が生産されています。」という記載があったのですが、マグマはマントルなんでしょうか。
中央海嶺とは、プレートが裂けて、マントルが見えているところなのでしょうか。
マグマが冷えると、即プレートになるのでしょうか。
固さだけの違い?なのでしょうか??? (06/05/02)

りょん:会社員:34

A
 基本的には,あたたかくてやわらかいマントルと冷たくてかたいプレートという認 識で いいのですが,マグマのことを考える場合には,若干の修正が必要です.


 まず,マントルとマグマの関係ですが, マントルは固体ですが,圧力が低くなったり温度が高くなったりすると 部分的に融けてしまい,マグマを生み出します. たとえていうなら,マントルとマグマの関係は,かちかちに固まった シャーベットがマントルで,半分とけかけたシャーベットの果汁部分がマグマです.


 マグマとは,地球内部で岩石がどろどろに融けた状態のもの全般をさす呼び名で, マントルがとけてもマグマが生じますし,地殻がとけてもマグマが生じます. これに対し,溶岩は,マグマが地表に流れ出てきたものです. ただし,融けて流れている状態のものも冷え固まった状態のものも, いずれも溶岩とよびます.


 さて,これらをふまえて,海洋プレートとマントルの関係に移りましょう. 中央海嶺は、マントル物質が上昇してきてプレートが作られているところです. プレートは左右に分かれて移動していくので,中央海嶺には深い谷状の地形が 形成されますが,そこでマントルそのものが見えるわけではありません. 上昇してきたマントルは,圧力が低くなるために部分的に融けてしまいます. 先ほどのシャーベットのたとえを借りるならば, ちょうどシャーベットを少し溶かしたたときに果汁の部分と氷の部分とができるよう に, 中央海嶺の地下深くにおいて,マントルにもとけた部分(マグマ)ととけのこり部分 が生じます. マグマ部分はとけのこり部分よりも軽いので,表層近くまで上がってきて 溶岩として海底に噴出したり,噴出できずに表層近くの地中で固まったりします. これが海洋地殻と呼ばれるもので,厚さが5〜10kmあり,海洋プレートの最上層を形 成します. その下側には厚さ30〜40km程度のとけのこり部分からなる層があります. その下にさらに厚さ数十km〜100kmの冷たい(したがって,固い)マントル物質の層 があり, これら全体として海洋プレートを構成します. つまり,おおざっぱに言うと海洋プレートは3層重ねで, 下から順に,マントルと同じ物質で温度が低いだけの層,マントル物質からマグマを 分離して しまった残りの物質の層,分離したマグマが冷え固まった層,からできているわけで す. (06/07/02)

安田 敦 (東大・地震研・地球ダイナミクス)


Question #220
Q なぜ、九州地方には火山が多いのでしょうか。中学校の社会の調べ学習をしているなかで、出てきた質問です。

(6/1/99)

佐伯 幸恵:中学校教員:26

A
 確かに九州地方には火山が多いですね.
 でも,火山の個数だけからいえばそうでもないのです.そもそも日本中,火山が多 くて,数年前の時点で気象庁が活火山としたものだけでも80個を越す火山がありま す.九州にはそのうち13個があります.ですから,九州が日本の中でとりたてて火 山の多い場所というわけでもなさそうです.
 日本の火山の密度のとりわけ高い場所は,北海道から,東北日本・甲信地方を経て ,伊豆諸島にいたる地帯です.その理由は,日本のように島弧と呼ばれている地域の 火山は,海洋の地下岩盤をなしている海洋プレートと呼ばれる堅い岩盤が大陸の下に 沈み込む運動に関連してできると考えられていまして,上に述べた地帯は,太平洋プ レートの沈み込んだ場所の上にあるからと説明されています.
 それに対して九州も含めて西南日本は,南西諸島と伊豆−マリアナ諸島の間にはさ まれた海であるフィリピン海の岩盤をつくるプレート(フィリピン海プレート)が沈 み込んでいる場所の上にのっかっています.それで火山ができているわけですが,太 平洋プレートとフィリピン海プレートの全般的な性質の違いから,どちらかというと 西南日本には東北日本に比べて火山が少ないのです.ただし,その中にあって中国・ 四国地方に比較すると九州には,はるかに多くの火山があります.その理由はフィリ ピン海プレート内部の性格の地域的な違いか,沈み込む際の大陸の割れ方に関連して いるだろうと考えられています.
 九州に火山が多いと見える理由は,古代から日本の文化が持続していた西南日本の 中で,近畿〜中国地方に比較してたくさんの火山が九州にあるということにあるかも しれません. (6/4/99)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #2209
Q 火山ができる場所としてプレートが沈み込むところがあるのは理解できるのですが、海嶺ではできないのですか?世界の火山分布は沈み込み帯にはあるのですが、海嶺には分布していないように思います。アイスランドなどのように海嶺が大陸にむき出しになっているところは火山が並んでいるのように思うのですが? (04/30/02)

一児の母:主婦:35歳

A まさにお考えになったように,日本のようなプレートが沈み込む場所(沈み込み帯) におけるよりも,海洋プレートが生産される海嶺の方がマグマの活動はずっと盛んで す.海嶺の軸に沿って,無数と言っていいほどの火山の列が数珠状に並んでいます. これらの火山の内,陸化している場所がアイスランドなどのように特殊な場所に限ら れるので思い違いされたのではないですか.
 (5/01/02)

中田節也(東大・地震研・火山センター) --


Question #2276
Q 突然ですが、マグマと溶岩とマントルと海洋プレートの関係を教えてください。
特に、マグマとマントルの違いが、良く分からないのですが・・・・・
あるHPで、「中央海嶺では、実に地球上で発生するマグマの80%が生産されています。」という記載があったのですが、マグマはマントルなんでしょうか。
中央海嶺とは、プレートが裂けて、マントルが見えているところなのでしょうか。
マグマが冷えると、即プレートになるのでしょうか。
固さだけの違い?なのでしょうか??? (06/05/02)

りょん:会社員:34

A
 基本的には,あたたかくてやわらかいマントルと冷たくてかたいプレートという認 識で いいのですが,マグマのことを考える場合には,若干の修正が必要です.


 まず,マントルとマグマの関係ですが, マントルは固体ですが,圧力が低くなったり温度が高くなったりすると 部分的に融けてしまい,マグマを生み出します. たとえていうなら,マントルとマグマの関係は,かちかちに固まった シャーベットがマントルで,半分とけかけたシャーベットの果汁部分がマグマです.


 マグマとは,地球内部で岩石がどろどろに融けた状態のもの全般をさす呼び名で, マントルがとけてもマグマが生じますし,地殻がとけてもマグマが生じます. これに対し,溶岩は,マグマが地表に流れ出てきたものです. ただし,融けて流れている状態のものも冷え固まった状態のものも, いずれも溶岩とよびます.


 さて,これらをふまえて,海洋プレートとマントルの関係に移りましょう. 中央海嶺は、マントル物質が上昇してきてプレートが作られているところです. プレートは左右に分かれて移動していくので,中央海嶺には深い谷状の地形が 形成されますが,そこでマントルそのものが見えるわけではありません. 上昇してきたマントルは,圧力が低くなるために部分的に融けてしまいます. 先ほどのシャーベットのたとえを借りるならば, ちょうどシャーベットを少し溶かしたたときに果汁の部分と氷の部分とができるよう に, 中央海嶺の地下深くにおいて,マントルにもとけた部分(マグマ)ととけのこり部分 が生じます. マグマ部分はとけのこり部分よりも軽いので,表層近くまで上がってきて 溶岩として海底に噴出したり,噴出できずに表層近くの地中で固まったりします. これが海洋地殻と呼ばれるもので,厚さが5〜10kmあり,海洋プレートの最上層を形 成します. その下側には厚さ30〜40km程度のとけのこり部分からなる層があります. その下にさらに厚さ数十km〜100kmの冷たい(したがって,固い)マントル物質の層 があり, これら全体として海洋プレートを構成します. つまり,おおざっぱに言うと海洋プレートは3層重ねで, 下から順に,マントルと同じ物質で温度が低いだけの層,マントル物質からマグマを 分離して しまった残りの物質の層,分離したマグマが冷え固まった層,からできているわけで す. (06/07/02)

安田 敦 (東大・地震研・地球ダイナミクス)


Question #2362
Q さんご礁の形成について調べ、ダーウィンの沈降説を知りました。しかし、なぜ火山が沈降するのかいまいち分かりません。詳しく教えてください。

(06/26/02)

ようこ:学生:19

A サンゴ礁が火山島の沈降に伴って裾礁→堡礁→環礁へと変化するというのがダーウィ ンの沈降説です.しかし,例えば南西諸島や琉球列島などのサンゴ礁には隆起して段 丘になっているものもあり,隆起するか沈降するかはその場の構造的な条件によりま す.海洋の真中にある火山島がなぜ沈降するかは,プレート構造論でうまく説明でき ます.つまり,海洋底のプレート(リソスフェア)は海嶺でのマグマ活動で形成され ますが,両側に拡がっていくにつれて冷却され,それとともにプレート(硬い岩石の 層)が厚くなっていきます.海嶺では数kmだったプレートの厚さが,海嶺から何千 kmも離れると100km以上の厚さになります.プレートは,その下の高温でやわらかい 岩層(アセノスフェア)の上に浮かんでいるので,プレートが厚くなれば,それに比 例してプレートは沈みます.それで,ある場所の海面から海洋底までの深さは,その 場所の海洋底の年代(海嶺で形成されてから現在までの経過時間)とともに深くなる という顕著な関係があり,海嶺付近では海の深さは2000m程度ですが,1億年くらい 前の古い海底の深さは5000m以上になります.海洋底のプレートが沈む(沈降する) なら,その上に載っている海山(火山島)も当然沈降します.また,火山島自身が, マグマ活動の沈静化とともに地下の温度が低下し,周囲に対してそれ自身が沈降する という局地的な動きもあります.これらによって裾礁→堡礁→環礁と変化する理由が 説明できますが,それだけでなく,山頂部が波に削られて平らになり,それが沈降し てできた平頂海山(ギヨー)が海面下にたくさんあることも説明できます.この考え 方は杉村新先生の教科書「グローバルテクトニクス」(東大出版会)の第VI章に詳し く説明されていますので,是非読んで下さい.
 (07/02/02)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室) --


Question #3464
Q 典型的な鳥弧・海溝系地形であるアリューシャン列島、千島列島、日本列島などの形状は、潜り込む太平洋プレートに向かって凸の形状になっているように見えますが、これは単なる偶然なのでしょうか?理由があるとすれば何なのでしょうか? (11/20/02)

19歳 学生:学生:19

A 島弧がなぜ弓なり(弧状)なのかという疑問は誰もが持つと思います.私は岩 石学をやっていて,地球物理学には疎いのですが,深尾良夫氏の「地震・プレ ート・陸と海 地学入門」(岩波ジュニア新書92, 2000年)の165頁に「島弧 はなぜ弓なりか」という節があり,「ピンポン玉ペコペコモデル」という面白 い考え方が述べられているのをみつけたので,これをザッと紹介することにし ます.学生さんは是非このような一般向けの本を何冊も通読して下さい.

島弧―海溝系は海洋プレートが沈み込む場所ですが,地球の表層を覆うプレー トが地球内部に向かって凹んでいる場所と見ることもできます.しかし,プレ ートは平板ではなく,地球を覆う球形の殻ですから,ちょうどピンポン玉のよ うなものです.ピンポン玉を2つに切り割って半球形の「プレート」(太平洋 プレートだと思って下さい)を作り,その切断部を指で内側に曲げ(沈み込ま せ)ようとすると,どうしても凹みの周囲が円弧の形になります.プレートの 縁全体を沈み込ませようとすると,円弧が連なったペコペコの形になります (西太平洋の状態).ただし,島弧の中にはトンガ弧やニューヘブリデス弧, アンデス弧中部などのようにほとんど直線に近い場合もあり,必ず円弧になる というわけではありませんが,一般的にはこの考え方(ペコペコモデル)で説 明できそうです.プレートが平板でなく,湾曲した板であるため,これを内側 に曲げると必然的にその縁が弧状になるということだと思います.

これとは別の考え方もできます.沈み込み帯は地下700kmに達する大断層で, 巨大な「地球の切れ目」です.例えばミカンを地球に見立て,表面からナイフ で適当な角度で切れ目を入れると,ナイフを垂直に立てた場合以外はミカンの 表面に表れる切れ目の形が弧状になります.これはプレート論が広まる以前か らあった考えですが,弧状になる原因はやはり地球が丸いためです.

しかし,インドネシアのバンダ弧のように極端に湾曲した島弧の場合は,指で 凹ませたり平面的なナイフで切り込むモデルだけでは説明できません.ウェー ゲナーが「大陸と海洋の起源―大陸移動説」(都城・紫藤訳,岩波文庫)の上 巻181-191頁で述べているように,オーストラリア大陸の北西への移動によっ て,もともと緩いカーブを描いていた島弧が押し曲げられてヘアピン型になっ たという考えに説得力があります.
 (11/21/02)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科) --