火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:東北地方

寒風山


Question #149
Q 秋田県男鹿半島に在住しています。この地では一の目潟や寒風山の火口跡など様々な過去の火山活動の跡が見られます。 今回の質問というのは、以下の内容が直接に火山活動と関係ありそうかまた、ほかに事例があるかどうかをおたずねしたいのです。 というのは、地下水脈の形成についてです。最近の地下探査で二万年前の火山活動で形成された男鹿半島・寒風山の地下に盆地状にくぼんだ基盤があり、浸透した雨水が基盤の起伏に沿って移動ののちこのくぼみに集まり、あふれる形で湧水となっているという調査結果がありました。これは寒風山の北側に一日二万五千トンもの水量の湧水となり、古来干ばつでも枯れない霊水、名水として地域を潤してきたものです。そばにそれほど高い山もなく小さい半島内にあるこの湧水の集水流域を調査したのが今回のものです。浅学モノの推察として、数度にわたる噴火活動により…地下から噴出物…地盤沈下…その上に堆積…火成岩の山が形成というカルデラ地形の形成に似た経緯でできたのではないか、もしくはできた可能性はないか、ということです。また偶然目にした『地下水盆』という語句についてももし何かありましたらお願いします。さらに阿蘇山などのカルデラ周辺の湧水群などにそういった地下構造の例はないのか併せてお教えください。

(10/21/98)

柏崎 潤一:公務員:39

A
 寒風火山の湧水ですね?その話をするには氷河期の寒風山の状況から説明 する必要があります.ちょっと気の長い話しですがお付き合い下さい.
 寒風山付近では,2〜3万年前に淡水の湖が存在していました.現在の寒風 山のかなりの部分から箱井近辺の低地まで広がっていたと思われます.この 湖の中に堆積したのが箱井層と言われる地層です.寒風火山の溶岩(複数) の一部はこの湖の中に流入しました.溶岩の流入と箱井層の堆積が同時に進 行しましたので,箱井層と溶岩の境界は複雑な形態をしています.
 さて,寒風火山はその後陸化してしまいます.箱井層をためた湖もひあがっ てしまいます.
 箱井層は,透水性が悪いのですが,寒風山の溶岩は水をよく通します.溶 岩を浸透した水は箱井層のところで地下水になって,水平方向に移動を始め ます.したがって,箱井層の上面でも低くなった谷状の地形の部分が地下水 の通り道になっていると考えられます.それの一つの現れが滝川の湧水と考 えています.
 というわけで,寒風山付近の湧水は寒風山の生い立ちと密接な関係を持っ ていると思います.が,カルデラではありません.
 盆地状にくぼんだ構造については,今後調査して行くつもりで,研究計画 を練っております. (11/10/98)

林信太郎(秋田大学・教育文化学部)