火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:伊豆・伊豆諸島・小笠原

御蔵島


Question #9
Q 御蔵島について質問いたします。
 昨年,椎の木の調査で御蔵島を訪れたときに聞いたのですが,島の 南東部通称”やすかじが森”と呼ばれる溶岩円頂丘の頂上から水蒸気が あがっていることがあると聞きました。冬になると肉眼でも確認できる ほどだそうです。伊豆七島のなかでは生成の古い島ではありますが, どのような生成過程を経てきた島なのか知りたく質問いたします。 してきた火山なのか知りたく質問いたします。 (2/14/97)

高橋 弘:カメラマン:37

A 御蔵島は侵食されてかなり原形が失われていますが,もともとは伊豆大島や三 宅島のような円錐形の成層火山であったと考えられています.その後島の南東 部に3つの溶岩円頂丘が生成したとされています.「やすかじが森」はこの溶 岩円頂丘群のもっとも南東に位置するものです.

主成層火山は玄武岩から安山岩の薄い溶岩流や火山砕屑物からなり,それらを 貫いた岩脈(厚さ数mほど)が海食崖などに180本以上見ることができます. 海食崖に分布する岩脈は放射状で,大部分が主成層火山体の噴出中心に収れん します.この主成層火山体は,地形的に2〜3段階の異なる活動期により生成 されたものと推定されています.

島の南東部に北西−南東方向に並ぶ3つの溶岩円頂丘はいずれもよく似た安山 岩からなり,短期間に南東側のものから次々と形成されたものと考えられてい ます.

御蔵島では噴火年代を示す資料はまだ得られていません.島内北部には縄文時 代早期の遺跡があり,5000-7000年前に縄文人が渡来していたことから,少な くともそれ以前に主成層火山の大規模な活動は終了していたのだろうと考えら れています.溶岩円頂丘群についてもよくわかっていません.

川辺禎久(工業技術院地質調査所)


Question #2532
Q こんど御蔵島に遊びに行きます。
御蔵島も火山だという話を聞いたのですが、見ることのできる火山地形のようなものはありますでしょうか? (08/24/02)

さくら:会社員:22

A さくらさん,こんにちは.
 御蔵島はイルカや巨樹で有名な自然豊かな島ですね.火山としては有名とはいいが たいですが,地質調査所や明治大学グループなどの研究があります.それらを参考に すると,
 御蔵島火山の大部分はいくつかの成層火山が折り重なってできています.これらの 活動は1.5ないし2万年ほど前にほぼ終了したとされ,侵食により深い谷や高い海食崖 が発達しています.これらの崖では玄武岩〜安山岩の溶岩流やスコリア層,岩脈など 成層火山の内部構造が観察できます.
 島中央の御山は円錐形の成層火山だったようですが,南側が馬蹄形型の深い谷(平 清水川)になっています.この谷は一度に崩壊してできたのか,火口が少しずつ侵食 で拡大したのかは判っていません.源流近くにある一の森のピークは御山の中心火道 を埋めた固い溶岩が侵食に取り残されてできた火山岩頚といわれています.
 1.5ないし2万年ほど前以降は山腹などで数回の噴火があったと推定されています. 島南東部には「つぶねが森」,「やすかじが森」などの3つの溶岩ドームが北西-南 東方向に並んでいますが,これらはおよそ5000年前におきた最新の噴火でできたと推 定されています.同時に吹き出た軽石層は島の北西部で10cm,南東部で2m以上の厚さ があります.御代ヶ池は森溶岩ドームによってできたせき止め湖とみられます.
 なお,地形が険しく森が深いうえに集落付近を除くと人気(ひとけ)がほとんどな いので,散策する時には必ず地元の方のアドバイスを受けるようにして下さい.

(文献)
 ・地質調査所発行 1/5万地質図幅「御蔵島」(1980)
 ・杉原重夫,嶋田繁(1999)伊豆諸島,御蔵島火山における最新の噴火活動につい て(演旨).日本火山学会講演予稿集, 1999, 2, 13p. 
 地質図ではツブネヶ森,ヤスカジヶ森.地元呼称ではひらがな(地震研寺田氏の談 話)
 (08/28/02)

長井雅史(東京大学・地震研究所)