火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:伊豆・伊豆諸島・小笠原

神津島・天上山


Question #180
Q 先日、伊豆諸島の神津島を旅行し、天上山へ登ってきました。1000年ほど火山活動は止まっているそうですが、不入ガ沢などの火口跡は生々しい風景でした。さて、山頂周辺に表砂漠・裏砂漠と呼ばれる谷がありますが、これは周辺の岩が風化して砂礫が生じているようです。すると、この砂漠地帯は今後広がっていくのでしょうか。それとも、千代池周辺のように緑化の方が進む可能性もあるのでしょうか。回答を参考にして、これからも観察してみたいと思っています。 (1/20/99)

中西 喜一郎:会社員:38

A
 天上山は,約1000年前(西暦838年)に噴出した流紋岩質の溶岩ドームと,一部( 西側の白島)は火砕丘から作られています.
  国土地理院発行の地形図を見ていただくとおわかりいただけると思いますが,天 上山はひょうたん形をしていて,複数(少なくとも2つ)の溶岩ドームが複合してい ます.天上山の表面は比高数十mの小さな起伏に富んでいますが,これは,溶岩ドー ムが広がるときに表面部に作られた一種の“しわ”です.この“しわ”の配列を基に ,天上山の溶岩ドームをさらに細かく区分することも出来ます.
 天上山を作っている溶岩ドームは,比較的発泡の良い流紋岩で,結晶の発達も悪く ,全体としてガラス質です.従って,通常の溶岩に比べると脆い岩石と言えます.


 ご指摘のように,天上山には植生が良く発達している地域と,植生がほとんど認め られず砂漠のようになっている地域があります.この砂漠の様になっている地域とい うのは,1)天上山西縁にあたる火砕丘の地域と,2)溶岩ドーム表層の“しわ”が 特に急峻な部分とその下部,に対応するようです.
 1)の火砕丘というのは火口から噴出した軽石や火山灰が堆積して出来たもので, もともと表層部は比較的崩れやすい地域です.それに加えて天上山の西縁にあたるこ とから,火砕丘表層の軽石が風化・分解した砂が強い季節風(冬季の西風)により移 動を繰り返すために,土壌の形成が悪いのではないかと考えられます.
 2)砂漠になっている地域は,溶岩ドーム表層部の“しわ”が特に急峻になってい ます.また,溶岩ドームの境界にもほぼ一致しているようです.これらの地域は崩落 した溶岩岩塊が厚く積み重なっているために,雨水が透過しやすいのではないかと考 えられます.
 つまり,天上山で植生に覆われていない地域は,上に挙げたような何らかの理由で 植物が進出し難い条件にあるのだと思われます.


 神津島は,流紋岩質の火砕流・火砕丘及び溶岩ドームからなる単成火山が集まって 出来た火山島です.船から眺めると,神津島は何段かの平坦なテーブル状の山が重な り合っているように見えます.これらは天上山とほぼ同様(含まれる鉱物の種類や量 に若干の相違はあります)の流紋岩質の溶岩ドームで,現在ではほとんど植生に覆わ れています.これらの溶岩ドームは,a)噴火後長期間を経た事と,b)のちの噴火活 動によって放出された火山灰が溶岩ドームの表面を覆ったため,土壌の発達が良くな った事などによると考えられます.天上山に広がる植生の乏しい地域も,短期的に見 れば若干広がることもあるかもしれませんが,長い目で見れば,徐々に縮小し,ゆく ゆくは天上山も植生に覆われてゆくものと思われます.

==ご参考まで,神津島の地質図が発行されています.== 一色直記「地域地質研究報告(5万分の1図幅) 神津島地域の地質」,通産省 工業 技術院 地質調査所発行,昭和57年,2400円
 内容は,専門的ですので,難解かもしれません.もし御興味がありましたら,書店 に注文していただくことで,ご購入いただけます. (1/22/99)

伊藤順一(工業技術院・地質調査所・環境地質部)


Question #204
Q 富士山では、年に数回低周波地震が観測されていますが、その原因、火山活動との関連及び最近の状況について教えて下さい。
 近年頻発している新島、神津島近海の地震は、伊豆半島東方沖のようにマグマとの動きとの関連があるのか、現在判明している範囲で教えて下さい。
 よろしくおねがいします。 (4/2/99)

冨永:団体職員:33

A 富士山の低周波地震は、深さ10〜20kmという地殻の中程で発生しています。 このように、火山直下の地殻のやや深いところからマントルの最上部で、低周波 地震が発生していることは、1980年代からわかり始めました。噴火に呼応して、 活発化する場合もあることから、地下のマグマの動きと関連して発生しているこ とは間違いないでしょうが、その詳細は不明です。

富士山では、観測網が整備された1980年以後、1年間に10〜20回程度の割合 での低周波地震活動が観測されています。静穏期や頻発期があるものの、現在も この傾向は変わっていません。 (4/5/99)

鵜川元雄(科学技術庁・防災科学技術研究所)


Question #1364
Q 地震の報道は減りましたが神津島近海のマグマの活動はとりあえず一段落したと考えて良いのでしょうか。天上山に登るのはまだ危険ですか。
また、あのマグマの大規模な貫入は1000年周期で行われてる?新島、神津島の活動の一つとして考えて良いのでしょうか。よろしくお願いします。 (12/21/00)

yo-ka:医師:25

A 神津島近海では2000年7〜8月は大きな地震が頻発しましたが,9月に入ってからは, ずいぶん少なくなりましたね.(でもまだ時々は,マグニチュード3クラスの地震が 発生し神津島で震度2程度の地震動を感じていますが.)GPS測量結果をみると, 周辺の地殻変動もほとんど停止しています.このことからも,神津島近海のマグマの 活動はとりあえず一段落したと考えてよいと思います.

地震動で大きな被害がでた神津島内も,着々と復旧工事が始まっています.天上山登 山道も,南側から登る黒島側登山道が開通して登山できるようになっています.一部 崩れているところもありますが,ローブが張ってあるところに近づかなければ安全で す.しかし他の登山道は大きくがけ崩れしており,当分の間通行はできないようで す.天上山からの眺めは最高ですね.北に式根島,新島,鵜渡根島,利島,大島.南 東に多量の噴気や火山ガスを放出している三宅島や御蔵島が一度に見渡せます.

三宅島〜神津島西方に大規模に貫入したマグマは,直接的には新島・神津島の火山活 動活動とは関係がないと思われています.その根拠は,新島・神津島の火山活動は流 紋岩質であるのに対し,今回貫入したマグマの多くは,三宅島の地下から移動してき た玄武岩質のマグマであると考えられるからです.しかし,神津島では島の北部を中 心にここ数年間膨張が続いています.神津島の地下にあるであろう流紋岩質マグマと 三宅島からの玄武岩質マグマの混合により,新たな火山活動に結びつく可能性も捨て きれません.今回の地震で,神津島の多くの観測設備が破壊されてしまいましたが, 早急に観測研究体制を建て直し,もし万が一異常が発生しても,すぐにマグマの動き をとらえ,三宅島のように一人の犠牲者も出さなくてすむようにしたいものです. (01/13/01)

松島 健(九州大学・地震火山観測研究センター島原観測所)


Question #5394
Q こんにちは。いつもありがとうございます。
数年前、神津島を訪問しましたが櫛形山から見た(裏の)天上山は巨大な「一枚岩」そのものでこれがたかだか千年ちょっと前の一回の噴火で出来たのかと思うと足がガタガタ震えたのを覚えています。新島の向山の白ママも凄いスケールですよね。これに比べれば大島も三宅島も一回の噴火の噴出量は少ないなと思えます。

 すべての単成火山/複成火山にあてはまるかどうかは別ですが伊豆諸島に限れば大島、三宅島、八丈島・・の玄武岩複成火山と新島、神津島の単成火山群の特徴の違いとして前者は小〜中規模の噴火を短い周期で繰り返すのに対し、後者は大噴火を前者の10倍以上の周期で起こしているように思えます。周期が違う理由はなんとなく想像できますが噴火の規模が新島、神津島で大きいのはなにか理由があるのでしょうか。重いけれど流動しやすい玄武岩に対して軽いけれど流動しにくい流紋岩、この岩の性質の違いに関係はしてませんでしょうか。(素人考えですが僕は玄武岩質の海洋プレートに流紋岩のマグマ溜りが出来るとしばらくの間は流動性の乏しさから上にあがっては来れないけれど一定以上の量がたまると比重の違いからある程度まとまった量のマグマが一気に上がって来るのでは、と考えています)
よろしくお願いします。 (12/20/03)

アマンタジン:社会人:28

A 火山学の未解決領域について指摘したなかなか鋭いよい質問ですが,それだけに回答は簡単ではありません.「伊豆諸島の玄武岩質複成火山が小〜中規模の噴 火を短い周期で繰り返すのに対して,新島・神津島のような流紋岩質単成火山が規模の比較的大きな噴火を前者の10倍以上の周期で起こしている」というの は正しい指摘です.新島・神津島の最後の噴火は10世紀でした.後半の「流紋岩質マグマは粘性が高く比重が小さいので一定以上溜まらないと噴火できない のでは」という意見は必ずしも正しくありません.このことは有珠火山では17世紀以来300年足らずの間に流紋岩質マグマが比較的大きな噴火を複数回繰 り返しているのをみればわかります.また,新島・神津島の直下にも大陸性地殻が20〜25km程度はあって,必ずしも玄武岩質の海洋地殻ではないので す.火山においてどのくらいの量のマグマがどのくらい間隔で噴出するかは火山によっても違い,その根本原因についてはまだよくわかっていないのが火山学 の現状です.
 (01/05/04)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)