火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:北関東・甲信越地方

本宿コールドロン


Question #391
Q 以前群馬県南牧村の立岩へ登ってきたのですが,あの辺つまり西上州一帯は有名な妙義山や荒船山に限らず多数のギザギザの岩山が密集しているように思えます。妙義や荒船は第三期火山のなごりとよく言われますが、あれだけ岩峰が密集しているのをみるとあの辺一帯がひとつの巨大な火山だったのでは、と思われるのですが実際はどうなのでしょうか。
また立岩の登山口付近に『陥没の壁』というものがありましたがこれはどうゆうものなのですか。例えば西上州一帯がかつて巨大なカルデラ火山で、陥没の壁はそれの名残りとか・・。

 素人の勝手な推理でとんでもない大間違いをしてるかもしれませんが、よろしくお願いします (01/28/00)

yosiaki:大学生:24

A
 大間違いどころか御明察です。荒船山周辺は本宿火山性陥没地とよばれており、第 三紀後期中新世の一種のカルデラ火山の跡です。荒船山を東山麓の群馬県下仁田町相 沢付近から登ると、下から順にデイサイト貫入岩体→安山岩溶岩→安山岩質凝灰角れ き岩→湖成層(砂岩・泥岩・凝灰岩)→安山岩質凝灰角れき岩→安山岩溶岩→安山岩 質凝灰角れき岩→湖成層が(貫入岩を除いて)ほぼ水平に重なっています。最上位の 平坦な尾根は安山岩溶岩からなっており、三角点のある山頂は、デイサイト質溶結凝 灰岩から構成されています。荒船山が航空母艦のように山頂が平坦なのは、安山岩溶 岩が侵食に強かったためです。こうした地形のことをメサといいます。
 本宿コールドロンの大きさは直径が約10km強あり、多角形型の輪郭をしています。 ちなみに、カルデラとは火山性の凹地形ですが、かつて陥没したカルデラの中味が隆 起して現在は山になっているような場合、凹地形ではないのでカルデラとはよばずコ ールドロンと称することが一般的です。本宿コールドロンでは、最初にマグマ溜りの 突き上げによって地表が隆起し、その結果張力が働いて陥没が生じ、その後に陥没地 内にマグマが噴出して各種の火山岩類が形成されたと考えられています。こうしたタ イプのカルデラのことを本宿型カルデラとよびます。この地域は本宿型カルデラの模 式地なのです。最初にできた陥没地の周囲の崖の下には一種の崖錘れきが溜まりまし たが、この崖こそが『陥没の壁』に他なりません。長野県側から荒船山に登る場合は 、まずこの『陥没の壁』を越えてかつてのカルデラの中へ入って行くというわけです。 (2/7/00)

高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学科)