火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

火山の形状と地形

火口湖


Question #1436
Q いつもご丁寧な解説ありがとうございます。
三宅島のスオウ穴ですがある時期から水がたまって池になっていますよね。火口湖が出来るには単に窪んでるだけではなく地下水の供給が必要と聞いたことがありますが、今回の噴火で地下水系に変化があってああなってると考えてよろしいのでしょうか。よろしくお願いします。 (01/17/01)

ya-ka:医師:25

A
 火口に水が溜るための条件は何か?ということですね.
 まず,一般に,ある場所−水が溜るためには地形的に低いところ−の水の収支(出 入り)を考える必要があるでしょう.水の供給源(入りの方)としては,降水や,地 表水・地下水などの流入が考えられます.一方,流出する(出の方)のは,地下への 浸透,大気へ蒸発,地形的な窪みから溢れて下流へ(たとえば河川として)流出する 場合などが考えられます.これらの収支の全体のバランスを見た時に,湖あるいは水 溜りを維持できるかどうか,という問題を考えればよいわけです.
 三宅島のスオウ穴について考えてみましょう.この火口は今からおよそ1200〜 1300年前の割れ目噴火の時に開いた火口で,2000年の噴火の前には水たまりはありま せんでした.普通,火山体は,スコリアなど火砕物が多く,がさがさで,目の粗い” ざる”に例えることができます.このような場合,いくら水が流入してもすぐに浸透 して(ぬけ去って)水は溜りません.スオウ穴もこのような状態であったと思われま す.しかし,7/14-15の噴火で細粒の火山灰がスオウ穴周辺で50cmないしそれ以上の 厚さで降り積もりました(大学総合観測班  http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/nakada/ash.htmlのデータ参照;スオウ穴の北にある 火口には25cm程度〜それ以下でした).その結果,”目詰まりしたざる”の状態にな って,地下への浸透が悪くなり,降水による流入量が勝って,7月下旬以降,水溜り ができるようになった,と考えることができます.
 カルデラの南東にある,おそらく西暦1535年の割れ目噴火の際にできた火口や,カ ルデラの底にも水溜りはできています.
 大量の水のある火口(あるいはカルデラ)湖で噴火がおこると,爆発的なマグマ水 蒸気噴火を起こす可能性があります.三宅島でも将来カルデラ湖が形成される可能性 は高く,防災上,予め留意しておく必要があります. (01/18/01)

津久井雅志(千葉大学・理学部・地球科学教室)


Question #1772
Q 先日、阿蘇山の見学に行って来ました。火口を見ていてふと思ったのですが、阿蘇山の火口には
なぜ水がたまっているのですか?水面から湯気が立ち上っているところから見て、相当温度は高いようですが、あれは、やはり火山活動と何か関係があるのですか? (06/20/01)

黒狼:学生:13

A
 非常におもしろい質問です.
 1.雨水や地下水が火口に流れ込み,それが漏れないからです.また,噴気の中に も多量の水が含まれるので,これも水位を保つ要素のひとつです.問題はどうして漏 水が起こらないかです.
 2.温度は50℃程度ありお風呂の温度より高い状態です.これは地下深部からやっ てくる高温の火山ガスによって温められているからです.ご覧になったのは中岳第1 火口です.現在(2001年6月)ここには灰緑白色の湯が溜まっています.これを阿蘇 山の「湯だまり」と呼んでいます.その水面は火口の縁から100m余りの深さのとこ ろにあります.4,5年くらい前までは,さらに50m下にありました.このように湯の 水位は一定ではありません.火山活動が活発化するにつれて,お湯の色が灰色から黒 色に変わり,温度も60,70℃と上昇して,火口内で爆発が起こるようになります.さ らに爆発が活発化すれば,お湯が火口の外へ飛び出し(この湯は強酸性で,一瞬のう ちに金属を溶かしてます),お湯も蒸発して湯だまりが消えます.そうなると乾いた 火山灰と赤熱した噴石が噴出するようになります.
 さて,何故「湯だまり」が生じるのでしょうか.窪地であれば,雨水が溜まりま す.阿蘇山中岳には窪地となっている火口が,第1火口の他に,大きいものでは南側 の第3,第4火口があります.そちらには,現在,水が溜まっていません.第3,4 火口も大雨が降れば一時的に雨水をたたえますがすぐに漏水して乾いてしまいます.
 阿蘇山では古来から中岳火口は神霊池,宮池,宝池などと呼ばれ,水は着色してお り,干ばつ時でも存在していたといいます.最近は第1火口で活動が繰り返されてい ますが,50,60年ほど前は,第1火口の他に第2,第3,第4火口も活動を繰り返し ていました.そのころの記録を見ると,これらの火口には湯だまりが出来ていたこと がわかります.このようなことから「湯だまり」は活動中の(噴気活動がある)火口 に出来ると言えます.
 噴火によって火山灰や噴石が放出され,火口は底が見えないほどの深くなります が,活動後には噴出物が雨水とともに流れ込んで火口は浅くなります.地下から噴出 し続ける高温の火山ガスによって,これらの火山灰などが変質すると水を通さない地 層となるために漏水が起こらなくなるものと考えられます.こうして,水の入った土 鍋をコンロにかけたように,火口に溜った水は高温の火山ガスによって温められ続け る「湯だまり」になります.
 (06/30/01)

須藤靖明(京都大学・地球熱学研究施設・阿蘇火山研究センター)