火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:九州・南西諸島

代三五山


Question #415
Q 大分県の中央構造線の延長線上にある代三五山は火山でしょうか教えて下さい。また久住火山群の下には巨大なマグマ溜りがあるようなのですが、将来カルデラとして発達する可能性はあるのでしょうか?
もしかすると昔はカルデラだったのでは?

(02/29/00)

EXIT:会社員:37

A
 代三五山は、約1300万年前に噴出した溶岩流が、その後長い時間をかけて削られて できたもので、火山の堆積物といえます。厚い安山岩の溶岩流からなり、斜長石(白 い結晶)や輝石(黒い結晶)が入っています。大野町片島の採石場では、溶岩が冷え 固まったときにできた、垂直方向に規則正しく発達した割れ目(柱状節理)や、ほぼ 水平に発達した割れ目(板状節理)が見られます。この時代には、安山岩の溶岩流の ほかにも流紋岩の火砕流堆積物などが噴出し、大野火山岩類と総称されています。大 野火山岩類は、中部九州の中期中新世の代表的な火山活動の産物です。
 九重火山は、標高1700mをこす溶岩ドーム等からなる山々の集合体で、約15万年前 から活動を開始した火山です。過去に3回の火砕流が噴出しましたが、これらの噴出 の際にはカルデラは形成されませんでした。火砕流のうち最新のもの(約7万年前) は飯田火砕流とよばれ、その噴出源は星生山・三俣山・久住山の周辺と考えられてい ます。火砕流の噴火以降、現在の九重火山を構成する溶岩ドーム群が次々と形成され ました。 これらの溶岩ドーム群は、西の久住山系と東の大船山系に分けられます。
 テフラと火山体の層序関係を調べると、久住山系よりも大船山系の溶岩ドーム群の ほうが、全体的に新しい火山であることがわかります。久住山系は、アカホヤ火山灰 (K-Ah;6300年前に薩摩硫黄島付近の鬼界カルデラから噴出した広域テフラ)よりも 古い山体が圧倒的に多く、完新世におけるマグマの噴出率は小さくなっています。一 方、大船山系では、アカホヤ火山灰よりも新しい時代に段原火山が成長し、その山頂 付近の米窪火口でスコリア噴火をくりかえし、大船山の山頂火口からも溶岩を流出し ています。その東部にそびえる巨大な溶岩ドームの黒岳(くろたけ)は、わずか1700 年前(4世紀ころ;古墳時代前期)に誕生した最新の火山体です。
 完新世の九重火山は頻繁にマグマを噴出しており、決して老朽化した火山ではない ことが明らかで、現在でもその下にはマグマ溜りがあると推定されます。九重火山か ら最近1.5万年間に噴出した溶岩の体積を計算すると、同時期の雲仙火山よりも約1桁 大きいことがわかりました。従って、九重火山は雲仙火山に勝るとも劣らない、活動 性の高い活火山であるということになります。しかし、九重火山が将来カルデラを形 成するような大規模な火砕流を噴出するかどうかについては、現在のところ全く予想 がつきません。 (4/11/00)

鎌田浩毅(京都大学・総合人間学部・地球科学)