火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:九州・南西諸島

猪牟田カルデラ・耶馬渓火砕流


Question #271
Q はじめまして。大学で自然地理を勉強しています。授業で、大分県の国東半島について発表したんですが、国東半島が北に偏っていて、それは両子山火山が噴火してからだと文献には書いてあったんですがなぜそうなったのか教えてください。また、耶馬溪層と、耶馬溪溶岩がどんなふうに違うのかを教えてください。あと、第三紀火山と、現在の第四紀火山はどのように違いがあるのかを教えてください。お願いします。 (9/25/99)

TAKE:大学生:19

A
 確かに地理的に見て国東半島は,九州島の東北端にあって突き出しています.国東 半島では,南部に基盤の花崗岩類が露出しており,その上に鮮新世(約500〜170万年 前)の火山砕屑岩類と,第四紀の両子火山噴出物が覆っています.すなわちこの地域 に火山活動があったからこそその堆積物が厚くたまることにより,現在も陸地である ことがわかります.
 しかしながら,両子火山が噴火する前は陸地でなかったのかどうかについては,は っきりしません.両子火山よりも古い火山砕屑岩類を詳しく調査したところ,大部分 は河川によってはこばれたものであり,湖底や海底であったというわけではないよう です.
 耶馬溪層,耶馬溪溶岩は現在では,いずれもほとんど使われていません.耶馬溪層 というのは,大分県北部の耶馬溪地域を中心とする地域にひろがるやや成層した火山 砕屑岩類に対して命名された地層名ですが,これらは複数の異なる時代に堆積した地 層群であることが判明したため現在ではあまり使われなくなりました.また,耶馬溪 溶岩というのは,溶結した火砕流堆積物であることが判明し,現在では耶馬溪火砕流 堆積物と呼ばれています.耶馬溪火砕流は,約100万年前,九重山北方にある埋没し たカルデラ,猪牟田(ししむた)カルデラを噴出源とすることがわかっています.この 耶馬溪火砕流の噴出に伴って,火山灰が偏西風にのって飛散し,近畿地方や,房総半 島や新潟にまで達しました.この火山灰はピンク火山灰などと呼ばれ,地層の時代を 決める鍵層として有名です.
 最後に,第三紀火山と第四紀火山の違いですが,言葉の上からは,第三紀火山は約 6500〜170万年前の火山,第四紀火山は170万年前以降現在までの火山ということにな ります.単に火山と言う場合は第四紀の火山を指す場合が多いようです.第三紀の火 山の場合,生成してから寿命を終え,長い時間がたっているために,浸食により火山 のもともとの形(火山地形)は失われて,火山の断面やごく一部のみが観察できること が多いようです.第四紀火山の場合は,新しいので,新鮮な火山地形がよく保存され ていて,その一部は現在も活発に活動しています.  (11/28/99)

星住英夫(工業技術院・地質調査所・地質部)