火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:九州・南西諸島

桜島


Question #40
Q 焼岳の噴火記録について教えてください。昭和37年の6月に噴火したと、聞いたのですが、その日時と、 その際の噴火規模を知りたいのですが。 (9/15/97)

陸のイルカ:会社員:35

A Murai,I(1962)AbriefnoteontheeruptionoftheYake-dakevolcanoof June17,1962.Bul.EarthquakeRes.Inst.,40,805-814. 焼岳は昭和37年(1962年)6月17日午後9時55分ごろ爆発しました.噴火は山体 北斜面にできた約700mほどの北東方向に伸びた割れ目から起こりました. 山頂から約600m北にあったかつての焼岳小屋は噴石で破壊され,管理人2 名が負傷しました.噴火は地下にたまっていた高温の泥水が沸騰して起こった 水蒸気爆発です.溶岩や火砕流はでませんでしたが,火山灰と噴石,それに泥 水の流れが起こりました.火山灰は,35km東の松本市内にもうっすらと積も りました.その後6月21日まで,雨などの影響もあって火山灰が泥流となっ て梓川にまで流れ込みました. (9/16/97)

三宅康幸(信州大・理)


Question #59
Q おはようございます。私は、鹿児島県旅館組合青年部 橋本龍次郎と申します。突然で、申し訳ないんですが、私の夢を聞いて下さい。鹿児島の地域特性、シンボルでもある桜島ですが、地元では3s(桜島、焼酎、西郷さん)といわれ、あまり活かされていない現状です。そのため、まず、身近にあるものに、もう一度、目を向けてみようという事で『桜島に桜の花を咲かせ、本物の桜の島にして、夜桜のライトアップを、桜島自身の火山エネルギーで可能にし、そこに、市民を集め、夜桜を見、相集い、そして、桜島から見る鹿児島の夜景を見て、喜んでもらい『我が鹿児島のまちを誇りにおもう運動』を考察したいと、願っているのです。 そこで、質問ですが、 1,現在の桜島の、火山エネルギー(地熱、温泉、マグマ...?)で、それをライトアップのエネルギーに変換することが、可能だとおもいますか? 2,桜島に桜の木を植えたら、育つのですか?また、火山灰に桜の苗木はダメージをうけるのでしょうか? 3,桜島に京都大学研究所があるのですが、どなたか、ご進言、アドバイスを頂ける方を、ご紹介していただけないでしょうか? 4,もし、仮に火山エネルギーでライトアップが、可能ならば、その協力団体は、どのような団体になることが、予想されますか? 5,この私の考えに、懸念、ご進言、アドバイスをお願いいたします。

もし、この夢が、かなえば、これから時代を生きる私達の子供たちに、夜に灯る桜島が、桜島自身のエネルギーで灯る(桜島が、私達同様、生きている存在)というメッセージを伝えることが、出来るのではないかと、おもうのです。

大げさですが、たとえ、世界が滅亡しても、桜島だけは、自分のエネルギーで、闇夜のなか、灯っている姿を、想像するだけで、心がふるえます。 ちょっと、最後は、感情オーバーになりましたが、よろしくご進言の程、お願い申し上げます。

尚1998年、11月、『活火山サミット』楽しみにしております。 おじゃったもんせ!!かごっまへ!!

(12/12/97)

橋本 龍次郎:サービス業:33

A
 夢のある壮大な計画ですね.
 マグマの熱を利用した地熱発電は日本でも何ヶ所か実用化されています.鹿 児島県内でも牧園・栗野町の大霧地熱発電所(出力3万kW)と山川町の山川地熱 発電所(3万kW),それと小規模ながら霧島国際ホテル地熱発電所(100kW)の3つ が稼動しています.
 いずれも地下のマグマの熱で温められた熱水を利用した発電施設です.出力 としては十分でしょう.
 熱を直接電力に変換する方法もないわけではありませんが,火山での応用に はまだ解決しなければならない技術的な問題が多いようです.
 桜島は活火山ですし,温泉もありますから,潜在的な能力はあるかもしれま せん.ただし実用化するには,熱水が利用できる場所に十分な量溜まっている 必要があり,そのような場所を見つけて,開発するのには結構な額のお金がか かるのが現状です.またいくら自然のエネルギーとはいえ,それを電力に変換 する機械や施設の維持・管理が必要ですから,そのコストも考えなければなら ないでしょう.
 桜の火山灰や火山ガスに対する耐性はよくわかりません.ただ桜島・南岳火 口から常時噴出している亜硫酸ガスを主体とする火山ガスの植物へのダメージ はかなり大きいと思われます.南岳ではなくて北岳山麓などを選べば火山ガス の影響はある程度避けられるかもしれません.
 いずれにせよ実現するには,予算などかなり大きな話になると思います.ち ょっと直接ご紹介はできかねますが,鹿児島県庁のしかるべき部署などにご相 談されるなどしてみてはいかがでしょうか. (12/29/97)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所)


Question #119
Q 私は実家が鹿児島で子供のころ桜島に住んでいたこともあります。先日お盆に帰省した時、阿蘇を経由して帰っ たのですが火口を覗けるところまで行けるのでびっくりしました。予兆もなく突然噴火する心配はないのでしょ うか?また、桜島は玄武岩質の溶岩で粘土が高いため大正3年に爆発した際には溶岩でたばこの火をつけたとい うようなエピソードも聞きましたが阿蘇の溶岩はどうなのでしょうか?それぞれの溶岩の組成なども併せて教 えてください。 (8/29/98)

宮口雅史:会社員:441

A ご質問は以下の二つのポイントであろうと思います。 (1)噴火の際には何らかの予兆現象があるか? (2)阿蘇と桜島とでは噴出物の組成などが違うのか?
 まず(1)に関してですが、一口に「噴火」といってもいろいろな時間スケ ールの現象を含んでいます。ご質問の文章から推測しますに、阿蘇での場合 で、特に生命の危険を感じるような爆発について予兆があるのかというご質 問であろうと思います。
 阿蘇の場合で一番注意しなければならない破壊力の大きい「噴火」のタイプ は、火口直下の過剰な水蒸気圧が引き起こす水蒸気爆発です。この水蒸気爆 発では火口内部に堆積した岩の塊を大量に吹き飛ばします(このタイプの活 動は規模が小さくて噴出物が火口の縁を越えない場合には「土砂噴出」と阿 蘇では表現されています。噴出物が火口の縁を越えるとはじめて「噴火」と いう扱いをされます)。阿蘇での犠牲者の多くはこのような破壊的な活動に遭 遇しています。少なくとも、阿蘇の場合ではいわゆる「噴火」のまえには (阿蘇の場合は「噴火」と表現された場合に必ずしもマグマが直接に関与し ていない現象も含まれています。)、火山性微動の一時的な停止現象がある ケースが経験的に知られています。しかし、かならず火山性微動が噴火の前 に止まるかというとそうでもなく、突如として土砂噴出の発生をを見るケー スがあります。また、火山性微動が急に止まったとしても必ず土砂噴出が起 きるとは限りません。また、火口の縁にいる観光客の皆さんが気がつく予兆現 象が表面で起こるかどうかという点についても、はっきりしたものはかならず しも現れません。
 現在の火山観測体制では地殻変動の観測データや火山の周辺に起きる地震の 震源の分布の推移を手がかりにして、活動期が近づいてきたかどうかの判断 はできる水準に達しています。しかし、何時何分に阿蘇中岳火口で水蒸気爆 発がおきるか、という個別の爆発的な活動の予測ができるところにまでは到達 していません。ですから、阿蘇の中岳火口は本来危険な場所でありますし、 噴火の危険をまず頭の中に思い浮かべておいでなのは、健全なことと思いま す。阿蘇と桜島を比較した場合には阿蘇の方が爆発の規模が小さいのです が、火口の直近まで人間が近づける分、災害が発生しやすい条件がありま す。
 また、阿蘇と桜島の違いは爆発の規模ばかりではなく、溶岩の組成にも差が 認められています。一番大きな差が珪酸分(SiO2)の含有量の差です。桜島の 比較的最近の溶岩では重量比で60から62%が珪酸分ですが、阿蘇の中岳を含む 中央火口丘(山体を構成する)噴出物では52〜54%のグループと67%のグループ とが存在すると言われています。また、阿蘇で特筆すべき特徴としてはカリウ ムの含有量が多いことなのだそうです。珪酸含有量などから推測すると阿蘇 の溶岩は桜島のそれに比べて粘性が少ない可能性がありますが、阿蘇の中岳 に関しては有史以来の溶岩流の流出が記録されていません。1933年〜35年の 大活動期には阿蘇でもハワイの火山のような流動性に富んだ溶岩湖が火口底 に存在していたという記録がありますが、桜島の例のように溶岩流あるいは 溶岩に近寄って観測した例は手元の記録にはありませんでした。 (9/1/98)

筒井智樹(京都大学・理・球熱学研究施設火山研究センター)


Question #133
Q 1984〜1988にかけて桜島の年間噴火回数を知っていましたらどなたか教えてください。おおよその回数でも結構ですので よろしくお願いします。 (9/30/98)

武藤 英生:コンピュータエンジニア:34

A 桜島の爆発回数については地震計の記録から鹿児島地方気象台や京大防災研の 桜島観測所でカウントされています.単なる噴火であれば地震計でよくとらえ られていないものも数多くあり,恐らくカウント不可能ではないでしょうか? 少なくとも表にはなっていません.「桜島火山の集中総合観測」のシリーズを 購入されると過去の月別爆発頻度図が載っています.火山学会事務局で購入す ることができます.大ざっぱには以下のサイトで見ることもできます. http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/unzen/sakura/sakura.html (9/30/98)

ホームページ管理者


Question #386
Q 初めて質問させていただきます。私は早稲田大学教育学部の1年で教養程度の地学を学んでおり桜島と鹿児島県の地震について勉強していますが、そこで疑問が1つでてきました。鹿児島県の地震のモニタリングをして気づいたことなのですが、地震が起きる場所は桜島付近ではなくたいてい鹿児島県北西部なのです。たぶん地質学上の理由でしょうが自分の力ではわからないので説明をよろしくお願いいたします。 (01/24/00)

Noriaki:大学生:19

A
 人に感じない小さな地震(微小地震という)まで含めると,我々の周辺では毎日た くさんの地震が発生しています.九州では,以下の地域において特に地震発生頻度が 高くなっています. (1)日向灘や種子島,奄美大島近海 (2)内陸の活断層(日奈久断層や別府−島原地溝帯など)沿い (3)桜島,霧島,阿蘇などの活火山 これらのうち(1)は,太平洋の海底(フィリピン海プレート)が海溝から日本列島 (九州をのせたユーラシアプレート)に沈み込むのにともなって発生し,(2)は, いわゆる内陸の直下型地震です.また,(3)はマグマ活動に関係した火山性地震で す.
 現在,鹿児島県北西部でたくさんの地震が発生していますが,これらは1997年3月 と5月に発生した鹿児島県北西部地震(マグニチュード6.5と6.3)の余震活動です. この地震に対応する活断層は見つかっていませんが,地下の断層が動いたもので,タ イプとしては上記(2)の地震です.
 桜島付近でもたくさんの地震が発生しているのですが,これらは火山性地震で一般 に規模が小さく,専用の観測網(京都大学防災研究所の桜島観測網など)でないと震 源を決定することが難しいのです. (1/31/00)

清水 洋(九州大学・大学院理学研究科・島原地震火山観測所)


Question #385
Q 先日、桜島に旅行に行った際、南岳の噴火活動を間近で見て、とても感動しました。
同時に、麓(火口から2〜3q?)にいくつも町があることを知り、大噴火になった場合を想像すると恐ろしくなりました。
昭和、大正、安永、文明等々、大噴火が発生しているようですが、桜島の噴火活動が活発化する周期(大噴火予知)などは、研究されているのでしょうか?

(01/20/00)

温泉ファン:会社員:34

A
 桜島は世界的にみても活発な火山の一つですが,噴火予知についてもひじょうに詳 しく研究されている火山です.地震や地殻変動のようすが常にモニターされ,火山学 的にみれば小規模な現在の噴火でも,かなりの確率でわかるようになっています.大 正噴火や安永噴火のように大規模なものなら,ほぼ確実にわかるのではないかと期待 されています.さて,桜島の大噴火の周期についてです.昭和噴火(1946),大正 噴火(1914),安永噴火(1779-82),文明噴火(1471-1476)という4大噴火 と呼ばれるものの間隔をみると,それぞれ32年,132年,303年です.とても周期 という言葉は使えないことがわかります.桜島の活動は,北隣にある霧島火山の活動 や日向灘で起こる地震との関連が考えられたりしていますが,よくわかっていません. かなり規則正しい間隔で大噴火を起こしている日本の火山には,三宅島や有珠山など があります. (2/28/00)

井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)


Question #1713
Q 鹿児島に友人が住んでいるのでちょっと気になりました。
1)例えば桜島の火山が噴火した場合、近くにある他の火山がその影響を受けて噴火してしまう、ということはあり得るのでしょうか?
2)火山噴火によって、それ以外の災害・地震や水害、天候の激しい変化、爆風による何らかの災害、なんていうのが同時に起こることはあるのですか?
3)2万年位昔に鹿児島の火山が噴火した時の火山灰の地層が東北の方にもあるって聞いたことがあるのですが、今後もそんなに大きな噴火が起こることは考えられるのですか?
4)大きな噴火が起こってしまった場合、やはり逃げるしかないのでしょうか?噴火に関する情報に敏感であること以外に火山の災害に備えることはないのですか? (05/16/01)

タコ社長:フリーター:26

A 1)「隣の火山が噴火した影響を受けて・・・」というのは,直感的にはありそうな 感じがしますが,こういったことは検証するのがとても難しく,明快な科学的結論は 得られていないというのが現状だと思います.「他の火山が噴火する」というのと同 様に「他の火山が静かになる」ということも考えられますよね.大正3年(1914年) に起こった桜島大正噴火(20世紀に日本で起こった最大の噴火)の前は,桜島の北約 50kmに位置する霧島の御鉢火山が活発に活動していましたが,桜島大正噴火以降は御 鉢の活動が静かになったという事実があります.これを「桜島火山の噴火の影響を受 けて・・・」と考える研究者もいますが,私自信は「よくわからない」というのが本 音です.あなたならこのことをどのように考えますか?

2)ちょっと質問の意味がわからないのですが,二次的な災害のことでしょうか?噴 火に伴って大きな地震が起きる例はいくつも知られており,桜島大正噴火の時には, 噴火開始から8時間30分後にM7.1の地震が発生し,噴火による直接の被害がなかった 鹿児島市に大きな災害をもたらしたことは有名です.水害(あるいは土石流)につい ては,火山から遠く離れた地域(噴火の直接的な被害を受けなかった)がやられてし まったという例が世界的にたくさんあります.また,「大規模な噴火は世界的な気候 の変化をもたらす」という研究もあります.桜島では最近の比較的規模の小さな噴火 でも爆発の衝撃波によって窓ガラスが割れたりしています.桜島に限らず,大きな噴 火の際には,これらの災害が複合して同時に起こる可能性があります.

3)約2.5万年前に鹿児島湾の最奥部の姶良カルデラで大きな噴火がありました(先に あげた桜島大正噴火の数100倍大きい).南九州でシラス台地として知られる火砕流 堆積物の大部分は,このときの噴火によって噴出したもので,その時の火山灰は,ほ ぼ日本全土で見ることができます.この噴火では,南九州の動植物が全滅しただけで なく,日本全体に厚い火山灰が降り積もって,日本中が死の世界のようになったと思 われます.今,同じ規模の噴火が起こると日本という国家は壊滅してしまうかも知れ ませんね.このような大規模噴火は,姶良カルデラだけでなく,九州の阿蘇や北海道 の支笏・洞爺などのカルデラ火山で発生しています.日本では,過去50万年くらいの 間に,平均すると数万年に1回くらいの割合で起こっていますから,今後もこういっ た規模の噴火が起こることは間違いないと思われます.

4)先の姶良カルデラの噴火くらいになると,日本にいたら逃げていることにはなら ないかも知れませんね.噴火の規模の大小に関わらず,噴火災害に備えるためには, 噴火の情報に敏感であることだけでなく,火山噴火に対する正しい知識を持っている ことが大切だと思います.火山学会のホームページをうまく活用して,火山に関する いろいろな知識を身につけて下さい. (05/24/01)

井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)


Question #5463
Q 最近テレビ(南日本放送の桜島の特集番組)で、桜島の北岳に水が溜まっている映像を見たのですが、現在はどうなっているのですか。また、桜島は雨が降ると土壌が吸収すると聞いたので、溜まっている状態で今後、住民に影響はないのですか。 (03/25/04)

まゆ:社会人:27

A 桜島の火口を常時監視しているわけではないので現在の状況はわかりません.桜島のように活動的な火山といえども時間が経過すると火山灰が粘土化して雨水 を吸収しにくくなります.そのために古い火口では火口湖が形成されます.例えば,霧島の白紫池や六観音御池です.また,桜島の南岳のように常時噴火して いる火口でも雨がたくさん降ると水がたまります.平成5年の8・6水害があった年には南岳にも水がたまりました.火口湖が形成されるほど水が溜まった火 口で噴火が発生すると噴火と同時に泥流が発生するのできわめて危険です.インドネシア・ジャワ島にケルートという火山がありますが,1919年に火口湖 から噴火し,泥流により5000人以上が犠牲になりました.桜島の北岳の場合は多量の水が溜まっているわけではなく,また,火口の東側の亀裂から水が山 麓に流れ出すのでその危険性はないと考えます.
 (03/26/04)

井口正人(京都大学・防災研究所・火山活動研究センター)