火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:九州・南西諸島

全体


Question #16
Q 九州地方にある第四紀の地形・地質はどのようなものがありますか。 (5/6/97)

広大3年:学生:21

A 九州地方には、新しい時代(地質学の言葉では第四紀−今から過去にさかのぼ ること160万年間)の火山が多くありますので、地形・地質も火山に関連した ものが多くあります。もちろん火山に関係ない地形・地質もありますが、それ はほかにあたって調べていただくとして、以下のようなことがらが主要なもの です。北から順に;久重火山群:比高500〜1,000mの溶岩円頂丘(ド−ム)が約 10個、それに溶岩流・成層火山と南北の裾野などからなっている.溶岩円頂 丘群は東から黒岳・中岳(九州本土の最高峰,標高1,791m)・三俣山・久住山・ 星生山・黒岩山など.平治岳は玄武岩と輝石安山岩の小成層火山.南の裾野の 久住高原と北の飯田(はんだ)高原は,火砕流と泥流による緩斜面. 阿蘇カルデラ:火砕流台地の中に大規模なカルデラのくぼ地があり、その内側 には中岳などの中央火口丘群がある。27万ー9万年前の阿蘇火砕流の4度の大 規模な噴出によってカルデラが形成された.中央火口丘はほぼ東西に配列する 十数個の成層火山・火砕丘・溶岩流・溶岩ドームなど. 雲仙:長崎県島原半島に位置.半島中央部には普賢岳(1,359m)を含む主にデ イサイト質の溶岩流・溶岩ドームからなる複数の火山がある.これを取り巻い て火砕流,土石流堆積物からなる火山麓扇状地が発達. 霧島:鹿児島・宮崎の県境に位置する。北西−南東に長い30km×20kmの地域 に、20以上の小さな火山体や火口がある。約3.5万年前に夷守岳で大規模な山 体崩壊が起こった。その後、約2.5万年前から今日まで続く活動によって韓国 岳・新燃岳・高千穂峰・御鉢などの火山体、白紫池・不動池などの単成溶岩流 および大幡池・御池などのマールが形成され、小林軽石・牛のすね火山灰・御 池軽石・高原スコリアなどのテフラが噴出した。 南九州:鹿児島湾の北端には南北l7km,東西23kmの姶良カルデラがある。カル デラの大部分は海中に没しているが,陥没地形はきわめて明瞭で,おもな火砕 流(入戸−いと−火砕流)の噴出(約2万5千年前)によってできた。いわゆる シラス台地が広く分布していてその大部分は入戸火砕流堆積物に相当し,約 30km3のマグマの噴出によって生じた。桜島は姶良カルデラ南部にある複合成 層火山,約2万年前に活動を始めた。まず北岳(1,118m)が成長し,次いで 4000年前には南岳(1,070m)が南北に半ば重なりあって生じた。山麓には多く の側火山(鍋山:軽石丘,権現山:溶岩ドームなど)がある。

このほか、福江島などの島々、金峰(キンポウ)、由布、鶴見、開聞、それに 薩摩硫黄島や諏訪之瀬島などの島々も火山です。 個々の火山などは平凡社の新版地学事典(1996年刊)のそれぞれの項目お よび付図31日本の火山を参照して下さい。

三宅康幸(信州大学理学部)


Question #220
Q なぜ、九州地方には火山が多いのでしょうか。中学校の社会の調べ学習をしているなかで、出てきた質問です。

(6/1/99)

佐伯 幸恵:中学校教員:26

A
 確かに九州地方には火山が多いですね.
 でも,火山の個数だけからいえばそうでもないのです.そもそも日本中,火山が多 くて,数年前の時点で気象庁が活火山としたものだけでも80個を越す火山がありま す.九州にはそのうち13個があります.ですから,九州が日本の中でとりたてて火 山の多い場所というわけでもなさそうです.
 日本の火山の密度のとりわけ高い場所は,北海道から,東北日本・甲信地方を経て ,伊豆諸島にいたる地帯です.その理由は,日本のように島弧と呼ばれている地域の 火山は,海洋の地下岩盤をなしている海洋プレートと呼ばれる堅い岩盤が大陸の下に 沈み込む運動に関連してできると考えられていまして,上に述べた地帯は,太平洋プ レートの沈み込んだ場所の上にあるからと説明されています.
 それに対して九州も含めて西南日本は,南西諸島と伊豆−マリアナ諸島の間にはさ まれた海であるフィリピン海の岩盤をつくるプレート(フィリピン海プレート)が沈 み込んでいる場所の上にのっかっています.それで火山ができているわけですが,太 平洋プレートとフィリピン海プレートの全般的な性質の違いから,どちらかというと 西南日本には東北日本に比べて火山が少ないのです.ただし,その中にあって中国・ 四国地方に比較すると九州には,はるかに多くの火山があります.その理由はフィリ ピン海プレート内部の性格の地域的な違いか,沈み込む際の大陸の割れ方に関連して いるだろうと考えられています.
 九州に火山が多いと見える理由は,古代から日本の文化が持続していた西南日本の 中で,近畿〜中国地方に比較してたくさんの火山が九州にあるということにあるかも しれません. (6/4/99)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #5414
Q はじめて質問します。
私は宮崎県の出身です。理科の教師を目指していることもあり、大学のお正月休み中に前から気になっていた地元の“大崩山・行縢山・可愛岳”の形成について調べることにしました。しかし、地元の図書館に行ってもそれほど多くの資料もなくインターネットで調べても得たい情報が得られません。ぜひ、私の質問にお答え下さい。

1.花崗岩と花崗斑岩とはどうちがうのですか?

2.花崗岩の貫入により大崩山が形成されたのち、花崗斑岩の貫入によって行縢山・可愛岳などの環状岩脈(リングダイク)が形成されましたが、その形成について調べていたら1種のカルデラであると出てきました。阿蘇のカルデラは負の重力異常により形成されたカルデラであるが、大崩山のカルデラは正の重力異常により形成されたカルデラで“バリアス式カルデラ”とも呼ばれるとも書かれてありました。このバリアス式カルデラとは一体どんなものなのか、またどのように形成されるのかいまいち分かりません。あるものにはカルデラの落下を引き起こした円筒形の断層に、マグマが進入して環状岩脈ができたとも書かれてあり、一体どうなっているのかさっぱりです。

3.大崩山はすべて花崗岩ではなく、途中8合目辺りから四万十地層がありますが、これは四万十地層群が始めあった所に花崗岩が貫入したからこうなったと考えてよいのでしょうか?

ぜひ、教えてください。 (01/12/04)

さくら:高校生/大学生:18

A まず入手可能な日本語の文献として以下のものがあります.

(1) 高橋正樹著「花崗岩が語る地球の進化」シリーズ自然史の窓7 岩波書店(1999) 147P:一般向けの本で第4章「花崗岩が生まれた現場を歩く」で大崩山花崗岩の解説がしてあります.大きな図書館に行けばこのシリーズの本は置いてあ ると思います.
(2) 奥村公男・酒井 彰・高橋正樹・宮崎一博・星住英夫 著 地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「熊田地域の地質」工業技術院地質調査所(現・産業総合研究所) (1998) 100p:詳しい地質解説と地質図がついています.

質問1:花崗岩は粗粒等粒状(鉱物の粒が粗くて大きさが同じくらい)ですが,花崗斑岩は大きな結晶(斑晶といいます)とその間を埋めたやや細粒の結晶 (石基といいます)からなります.斑状なので花崗斑岩といいます.花崗岩とくらべて,より急冷した条件下でマグマから結晶化した岩石です.
質問2:カルデラは地形的な用語なので,地形的にへこんでいないと使えません.カルデラのうち陥没カルデラの仲間にバイアス(Valles)型カルデラ というのがあります.バイエス型とよぶこともありますが,もともとスペイン語なのでバイアスが最も原語読みに近いと思います.バリアスではありません. バイアス・カルデラはアメリカ合衆国西部にある大規模なカルデラで,環状の割れ目に沿ってカルデラの内側がピストンシリンダーのようにスポッと抜けたよ うに陥没したカルデラであると考えられています.環状割れ目からは陥没の後に溶岩ドームが噴出して,やはり環状に並んで配置しており,地下では環状の岩 脈を形成していると考えられています.こうしたカルデラが後の時代に隆起浸食を受けると,山岳地帯にカルデラの地下構造が露出するようになります.こう したカルデラの地下構造は陥没構造はありますが全体としては隆起して山を作っているので,地形的なカルデラとはよべません.そこでこうしたものをコール ドロンとよんで区別することが一般的です.大崩山岩体の環状岩脈はこうしたコールドロンの一部を構成しています.バイアス型カルデラは負の重力異常を示 しますが,過去のカルデラであるコールドロンはカルデラを埋めた軽い堆積物が失われていることが多いので,必ずしも負の重力異常を示すとは限りません. ただし,現在の大崩山花崗岩付近は負の重力異常を示しています.これは花崗岩体が周囲の岩石よりも軽いためと思われます.大崩山岩体では,最初に花崗斑 岩が貫入し,最後に花崗岩体が貫入しています.花崗斑岩の環状岩脈が後ではありません.
質問3:その通りです.よく観察していますね.大崩山では花崗岩体の水平な天井部がよく残されています.四万十層の堆積岩中に頭部の平たい花崗岩体が貫 入したためにこうした構造が残されているのです.ここでも堆積岩よりも花崗岩が後から貫入しています.
 (1/13/04)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)