火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

情報源

火山活動情報


Question #101
Q 国内規模、あるいは世界規模で、火山活動の活発な時期とそうでない時期があると思うのですが、具体的にそれを示すような資料がありましたら、教えていただきたいと思います。また、その中で現在の火山活動の位置づけ(つまり、現在は比較的活動的な時期なのかそうでないのか)を教えていただきたいのですが。 過去に近隣の火山がほぼ同時期に噴火するようなパターンが知られているようでしたら、具体的に教えてください。 (7/11/98)

鈴木 邦彦:高校教員:36

A
 ご質問の内容は2つありますが,まず,火山活動の時代的な消長についてお 答えします.
 世界の火山活動についてまとめた,Smithonian Institution監修の Volcano of the World(second edition) Geoscience Press, Tucson, AZ, 1994, ISBN 0-945005-12-1 が参考になると思います.それによると,地球全体のマグマの年間平均噴出量 は約4立方キロメートルで,その4分の3程度は,海洋中央海嶺で噴出してい ます.しかし,海洋中央海嶺における活動度の消長については,なにぶん海の 底のことでありよく判りません.一方,日本も含めてプレートの沈み込み帯の 火山の多くは陸上火山を形成し,その活動は人によって観察されてきました. またハワイ島などの海山(ホットスポット)の火山活動も観察されています. これらの観察されている火山の活動度についてみると,その年々に活動したと 報告された火山の数自体は歴史的に急増しているのですが,これは人類文明の 進展にほぼ対応していて,しかも社会的事情で報告数は左右されているので活 動度の消長といえるものがあるのかどうかよく判らないといわざるをえませ ん.ただし,0.1立方キロメートルを越すような量の噴出物を伴う比較的大規 模な噴火は見逃されていないと考えれば,その数は19世紀以降世界中で年間 に0回から4回の回数を数えていて,その回数の時代的変化にはっきりした規 則性は見られません.なお,個々の火山についてみればその火山固有の周期性 が見られることはあります.日本列島で第四紀に噴出した噴出物の量と年代の 関係をまとめるプロジェクトは現在進行中です.
 ところで,以上は平常時における話ですが,時折,巨大な噴火が起こること があります.例えば鹿児島県の姶良カルデラでは2万5千年前に450立方キ ロメートルを越す噴出物を伴う巨大な噴火が起こりました.この規模の噴火は 日本列島だけでも過去10万年間に約10回という割合で起こっています.ま た,洪水玄武岩と呼ばれる巨大な溶岩が噴出することもあります.例えば北米 西岸のコロンビア台地では1700〜1500万年位前に総量15万立方キロ メートルを越すような膨大な玄武岩が噴出しました.中生代末のデカン溶岩台 地などもそのひとつです.このような大規模な噴火のない現在は比較的平穏な 時代というべきかもしれません.
 もうひとつの質問,近隣の火山が同時期に噴火する例としては以下のものが あります.小アンチルス諸島のプレー火山とセントヴィンセント火山は1日違 いで噴火し,その5ヶ月後にはグアテマラのサンタマリア火山が噴火しまし た.日本では,1983年の三宅島,86年の伊豆大島,89年の伊東沖の噴 火が連続した例があります.
 なお,以下の本も参考となります. 火山噴火と災害,宇井忠英 編,東京大学出版会 1997年発行、A5版219ペー ジ、定価3700円(税別) (7/15/98)

三宅康幸(信州大学・理学部)


Question #97
Q 私は盛岡市に住んでいるので、岩手山の活動を注目しています。6月28日の火山性地震の震源が山の東側に変化したそうです。また、これまで数分程度だった火山性微動も10分以上続いたそうです。これらの変化をどうとらえたらいいのでしょうか。岩手山の東側は民家もあり、ちょっと心配です。 (6/29/98)

かつひこ:会社員:45才

A 岩手山の活動については,日本中の火山研究者も注目しています.

ご質問にお答えすると,この東側の地震は,そのまま地表の噴火地点を示すこ とはないように思います.理由は,比較的深いところで起きているからです. このような地震は,火山の深いところの構造を主に反映していると考えられて います.浅い地震が噴火地点を示す例は,北海道の有珠山など他の火山では報 告されています.しかし,これについても必ずしも一般的ではなく,どこの火 山でもそうだという訳ではありませんので,注意が必要です.

微動については,そもそも発生メカニズムがよくわかっていないのが現状で す.ですから,その継続時間が何を意味するのかは,今のところ不明としか言 えません.ただ,一般的には,継続時間が長くなったり振幅が大きくなったり するのは,火山活動の活発化を示すものだとは認識されています.

いずれにしましても,最近の地震や微動の起こり方が,火山活動の活発化を示 していることは確かです.現在,気象庁や東北大学で地震観測網をつくり,こ うした起こり方に注目しています.観測データは他のデータとともに十分に検 討され,大事なことは情報として気象庁から公表されます.今後はこれらの情 報に注意していていただきたいと思います. (6/30/98)

西村裕一(北海道大学・理学部・有珠火山観測所)


Question #105
Q 8月10日から12日まで、岩手山麓の網張温泉(岩手山の南西側)に行くのですが、旅館が溶岩に呑まれるようなことが起きるんでしょうか? 時期的、場所的に危険性があるか教えて下さい。 (7/16/98)

岩本 久:会社員:34

A 岩手山の噴火がいつ起こるのかは,これまでのいくつかの回答にある通り,現 時点では誰もはっきりいうことはできません.南西側へドロドロの溶岩が流れ てくる可能性は,#104の回答にもあるように,極めて低いといえます.ただ し,一旦噴火が始まれば,直接,噴火に関係のないものを含めて,さまざまな 災害が起こる可能性がありますので,気象庁などから出される火山情報(おも に報道機関経由)を参考にして下さい. (7/17/98)

中田節也(東大・火山センター)


Question #104
Q 1 岩手山が噴火した場合、それはどのような形態の噴火となるので しょうか。 2 また、雲仙の時ほどの規模になる可能性はあるのでしょうか。 3 噴火した場合、どのような被害が予想されるのでしょうか。 (1) 火砕流 (2) 溶岩の流出・それに伴う火災 (3) 土石流 等の可能性は。? 4 今後の活動については。

(7/16/98)

T.O:公務員:30

A
 これまでの岩手山の観測経験が少なく,岩手山がこれから噴火が噴火するの かも含めて,確実なことを言うのはかなり難しいでしょう.ただ岩手山の過去 の歴史噴火記録が参考にするとある程度の推測はできます.
 これまで岩手山では比較的大きな噴火記録として,1686年と1732年の噴火が あります.1686年の噴火では,岩手山の山頂火口から噴火し,スコリアを放出 しました.噴火の初期にはマグマ水蒸気爆発を起こしたようです.このときは 盛岡市内にも降灰があったようです.まだ雪が残っている時期に噴火が起きた ため,噴火で融けた雪が泥流となって,岩手山東部山麓のいくつかの集落に被 害がありました.記録からは活発な噴火は1日ほどで終わり,その後は火山灰 を火口周辺に降らせる程度の噴火が半年ほど続いたとされています.
 1732年の噴火は,岩手山近傍で有感地震があったあと,岩手山北東山腹で側 火口が開いて,噴火が始まりました.側火口の数は4つで,最も低位置の火口 から,焼走り溶岩流が流れ出しています.地震で住民が避難したという記録は ありますが,噴火による直接の被害は生じていないようです.この活動も半年 ほどで終了しました.このほかそれほど規模は大きくありませんが,1919年に 西岩手の大地獄付近で,水蒸気爆発が起きています.
 地質学的な記録では,降下スコリアや溶岩流のほかに数万から数千年前に岩 屑なだれも起きています.


 現在浅い地震が起きているのは,岩手山の西側です.このことから噴火があ るとすると,大地獄周辺での水蒸気爆発が最も可能性が高いと思われます.水 蒸気爆発なら火口周辺に爆発による岩塊の放出,岩手山周辺への降灰などが考 えられます.
 これより大きな噴火になるかどうかは,現段階ではわからないというのが正 直な所だと思います.しかし大規模な噴火に至るには,地震活動の今まで以上 の活発化や,地殻変動が観測されると思われます.マグマが地表に達して噴火 が起きれば,スコリア・軽石の放出や降灰,溶岩流流出,火砕流もありえま す.ただ岩手山では大規模な火砕流はあまり知られていません.
 噴火や火山灰の堆積で土石流,泥流が沢や川沿いに発生する可能性もありま す.特に積雪時には注意したほうがよいでしょう.


 現在各機関,大学などで岩手山の観測を強化しつつあります.これらの観測 から得られた情報は気象庁から公表されますから,これらの情報に注意してい ただきたいと思います. (7/16/98)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質)


Question #113
Q 8/8〜12日まで北アルプスに滞在し槍ヶ岳西鎌尾根赤岳付近と横尾山荘と 新穂高にて震度3〜5の地震を3回体験してきました。懲りずにも明日16日、観光 で白骨温泉に向かいます。(^^;; やっぱり危険性は高いでしょうね。 火山については特に勉強した覚えはありませんがここにかかれてるようなことは ほぼ想像で理解しておりました。12日帰ってきて同じような説明を友人にしました。 が一つ公認されてることで「天候と地震に関わりないと」発表されていますよね。 私にはそうは思えないのですがどうなのでしょうか?また、昨今流行の温泉施設など の影響もありませんか? 山鳴りと地震の違いについても教えて下さい。 (こちらにはgoo検索できました。)

(8/15/98)

単なる1ハイカー:フリー:32

A
 上高地付近で8月7日から発生している地震は,今のところ火山活動との直 接の関係は指摘されていません.ただし,北アルプスの地下にはマグマと考え られる大きな塊があり,そのためこの周辺の地震活動がおこるという提案が最 近なされています.この意味で今回の地震活動が火山活動と全く無関係とは言 えません.以下を参考にしてください. 第4回日本火山学会公開講座「北アルプスの地震と火山」
 なお,火山に関する質問についてはこのホームページでお答えしますが,地 震自身やそれに伴う現象についての質問は地震関係のホームページを参考にし てください. (8/16/98)

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Question #156
Q 私は岩手県の盛岡市に住んでいるんですけど、 岩手山が噴火すると、どこまで被害が及ぶんですか? また、どんな被害を受けるんですか? (11/8/98)

hina:中学生:13

A 岩手山火山災害対策検討委員会が岩手山火山防災マップとハンドブックを10 月初めに出しました.これには噴火によっておこる災害の種類や範囲につい て分かりやすく示されています.恐らく盛岡市にお住まいであれば,御自宅 や学校にも配付されていると思います.これを是非参考にして下さい.ホー ムページでは防災マップを以下で見ることができます.

http://www.iwate-np.co.jp/news/hzmap1L.jpg

また,過去におきた山崩れの分布図も以下で参考にすることができます.

http://www.iwate-np.co.jp/news/Gansetsu.jpg (11/10/98)

中田節也(東大・地震研)


Question #419
Q 1999年12月15日に中央アメリカOアテマラ沖からエキシコに向かう航海中海岸線に火山の噴火を発見。日本の新聞を調べたけれど、載っていません。世界の最近の火山の噴火情報とかどういうふうに調べたらいいんですか?気象庁では海外の火山はわからないとのことなので何かお分かりなら教えてください。(ちなみにピースボートの世界フルクルーズに参加)
よろしくお願いします。

(03/08/00)

タカエ:学生:17歳

A 中米で12月15日に噴火した火山としてはニカラグア(グアテマラの南)のサン・クリ ソトバルという火山があります.火山灰の噴煙が太平洋上に広くたなびきました.グ アテマラにはフエゴ火山とパカヤ火山という大変活発な火山があり12月下旬から活発 化していますが,12月中旬に噴火の記録はありません.

世界の噴火情報は,衛星を使った火山灰情報センター(Volcanic Ash Advisory Center)のものが最も新しく世界中をカバーしています.この中でアジアの情報は気 象庁が担当しています. 以下のホームページでご覧になれます. Volcanic Ash Advisory Center

また,噴火の詳細については,アメリカのスミソニアン自然史博物館の以下のサイト で速報されます. Global Volcanism Program (3/9/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1539
Q 一時岩手山に臨時火山情報が出されていましたが、その後どうなっているのでしょう。噴火に至らなかった理由は何なんでしょう。また、最近富士山のことが話題になっていますが、最新の情報を教えて下さい。 (02/06/01)

みやちゃん:公務員:44

A 岩手山では,1998年2月下旬から火山性地震が増加し,3月には歪み計や傾斜計にも変 化が現れました.その後1998年6月23日に低周波地震,火山性微動が発生,火山性地 震もさらに増加したため,盛岡地方気象台が臨時火山情報第2号を発表し,噴火の可 能性を示しました.その後,地殻変動なども観測され,噴火の可能性があるとして, 観測体制の強化や,地元自治体などの対応体制整備,ハザードマップの配布などが行 われました.9月3日にM6.1の地震が岩手山西部で発生し,被害がありましたが,その 後地震活動,地殻変動とも落ち着いてきて,噴火は起こらずに現在に至っています. 地殻変動で,岩手山が南北に広がるような動きが観測されていましたし,岩手山の西 では,これまでなかったところに噴気地帯ができたりしています.地下でマグマや熱 水などの動きがあったのは,まず間違いありません.しかし噴火が起こらなかったの は,上昇したマグマの量や浮力が足りなかったり,M6.1の地震の影響があったのかも しれませんが,はっきりした理由はわかっていません.富士山でも低周波地震が昨年 秋に増加しましたが,今のところ火山性地震の活発化や,地殻変動は観測されていま せん.低周波地震も今年に入ってから減っています. (02/21/01)

川辺禎久(産業技術総合研究所・地質調査所・火山地質)


Question #483
Q 気象庁から発出される「カザンカンソク」と「カザンレンラク」の違い及び「キンキュウカザンジョウホウ」と「リンジカザンジョウホウ」の違いについて教えてください。 (04/19/00)

和田孝二:公務員:52

A
 気象庁は平成5年から緊急火山情報,臨時火山情報,火山観測情報,定期火山情報 の4種類の火山情報を発表しています.このうち,定期火山情報は常時観測火山(19 火山)について,その他の火山情報は全ての火山について発表します.
 「緊急火山情報」は生命,身体にかかわる火山活動が発生した場合に臨時に発表し ます.「臨時火山情報」は火山活動に以上が発生し,注意が必要なときに随時発表し ます.「火山観測情報」は先の2情報を補うなど,火山活動の状況を定期的または臨 時にきめ細かく発表します.「定期火山情報」は常時観測火山について火山活動の状 況を定期的に発表します. (気象庁パンフレット「火山.その監視と防災」から転記) (4/20/00)

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