火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #67
Q 地理では、"富士火山帯"とか"白山火山帯"のように、"火山帯"と呼ばれるものがあると習いましたが、日本にある7つの火山帯はどのような基準のもとでこのように分類されたのでしょうか。また、それぞれの火山帯の火山活動には、どのような特徴があるのでしょうか。

(3/13/98)

山屋さん:学生:21

A
 火山帯というのは,まず地表での火山の並びに基づいて定義されたもので, ちょうど空の星をその天空上の位置から星座に区切ったのと同じような,地理 的な記載の便宜上が始まりです.
 とはいえそれぞれの火山帯には,噴出するマグマに特徴が見られることがあ ります.特によく特徴がわかるのが,東北地方の那須火山帯と鳥海火山帯で す.那須火山帯の火山は,主に輝石という鉱物を含む安山岩を噴出しているの に,その日本海側にある鳥海火山帯はしばしば角閃石という鉱物を含む安山岩 が噴出します.また化学組成も鳥海火山帯のほうがナトリウムやカリウムなど のアルカリ成分が多いという特徴があります.また乗鞍火山帯では角閃石安山 岩がよく見られます.
 ところが必ずしも各火山帯が共通の特徴を持っているわけではないのもまた 事実なのです.例えば富士火山帯では北部に輝石安山岩,角閃石安山岩,南部 に輝石玄武岩,安山岩が噴出するほか,一部にはアルカリがかなり多いマグマ も活動しますし,大山火山帯や霧島火山帯も様々なマグマが噴出しています.


 このようにそれぞれの火山帯は,共通する特徴を持つこともありますが,必 ずそうかと言われると,そうでもありません.元が地理的な区分ですから仕方 がないのですが,それでも意外と重要な情報をもたらしてくれることあるので す.以下に簡単に紹介します.


 よく地図を見ると日本周辺の海溝に平行して火山帯が並んでいることに気付 かれると思います.いろいろなマグマが活動している富士火山帯でも,海溝側 の火山ではアルカリが少なく,海溝から遠い火山ほどアルカリが多いという, 那須・鳥海両火山帯で見られたのと同じ傾向が見られます.この傾向は千島火 山帯などでも同様なほか,世界的にも海洋プレートが沈みこむところの火山帯 で共通して見られます.このような海溝側から遠ざかる方向へのマグマの性質 の変化は沈みこみによる深発地震面の深さとよい関係があり,このことから沈 みこみが起きる場所の火山は,沈みこむ海洋プレートと関係するのではないか と考えられています.
 そこで海洋プレートの沈みこみと平行な複数の火山帯を同じ火山帯として呼 ぶ考えがあり,千島・那須・鳥海・乗鞍・富士各火山帯は太平洋プレートが関 係する東日本火山帯,大山・霧島火山帯はフィリピン海プレートが関係する西 日本火山帯と呼ぶことがあります. (3/17/98)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp