火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #5847
Q お久しぶりに御質問させて頂きます。今年の5月に三宅島、桜島とふたつの火山島を訪問する機会に恵まれました。特に三宅島は遊覧飛行を利用してカルデラをこの目で見れた事は一生の想い出となりました。ふたつの火山について御質問よろしくお願いいたします。

@三宅島について。
火山活動の少し長期的な今後の予測についてですが今後どのように展開していくと考えられますでしょうか。深いカルデラはそのまま残り侵食により少しずつ大きさが拡大していく。または再び(地下のマグマの蓄積とともに)カルデラ底が少しずつ隆起していく等。2000年の噴火のあと早川先生のHPでいくつかの短期/長期予測が立てられていましたがもし最近の主流の説があれば御教示ください。

A桜島について
連日爆発しているイメージがありましたがほとんど噴煙も見えず、観光バスのガイドさんからも「ここ5年はめったに灰の降る事もなくとても住みやすい島になっております」といわれました。実際の所活動は衰える方向に向かってると考えてよろしいでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。

(07/13/05)

アマンタジン:社会人:30

A 火山を実際にご自分の目で見ると、本などで見たのよりもずっと感動が大きかったのではないでしょうか。

さて三宅島の長期予測ですが、2000年噴火でこれまでのマグマ供給システムが破壊されてしまったと考えられます。このまま何もなくても、カルデラ壁の崩落などで徐々にカルデラは浅くなっていくと思われますが、ことマグマ噴火活動の予測となると、ここ数百年間のような山腹割れ目噴火を続けるのか、噴火様式が変わるのか、活動予測は難しくなりました。地質記録から見ると、前回、約2500年前のカルデラ形成事件後の噴出物は、山頂部からの噴出物がやや多く、スコリアも急冷されたような構造を持っていたり、火山灰でコーティングされたようなものが多く認められます。つまり、カルデラ形成後はカルデラ内で、カルデラ内の天水あるいは地下水とマグマが接触し、やや爆発的な噴火が多くなる可能性があります。今後の三宅島の噴火も、そのような過去の履歴を参考にしながら、地殻変動などを監視していくしかないでしょう。

桜島は、ここ10年ほど何年かを除いて爆発回数も少なく、特に降灰量は1970年代後半から80年代のような活発な状況から比べると激減しています。以前は連続して灰色の噴煙が上がっていたものですが、最近は水蒸気や二酸化硫黄ガスが上がるだけで、それすらもかなり少ないことが多いです。そのため最近の高校生より若い鹿児島県人は、桜島の灰と言ってもいまいち実感が無いようです。このように表面現象としては不活発な状態ですが、噴火活動が活発だった80年代に停滞していた姶良カルデラの垂直地盤変動が再び上昇に転じたほか、桜島山体そのものも膨張しています。マグマ溜まりの膨張速度と爆発回数などには相関関係があるようで、爆発(=マグマ放出)が多いと膨張が停滞する傾向があります。現在のような表面活動が不活発な時期は、おそらく地下でマグマの蓄積が進行しており、次の噴火への準備がゆっくりとではありますが進んでいると見るべきでしょう。
(08/01/05)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地質調査情報センター)

May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp