火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #4126
Q 豊北町に白滝山という標高600m位の山があります。この山は山頂付近に大きな岩が露出していますが、この岩は安山岩の塊のように見えます。ということは火山の噴火によるものなのでしょうか、それとも造山運動による隆起なのでしょうか。付近の工事現場などでは断層もよく見られます。山口県西部の火山についてはあまり発表されているものを見ません。しかし、西部には多くの温泉があるので火山の存在が発表されていないのが気になってしょうがありません。その点よろしく教えて頂けませんでしょうか。 (08/08/03)

山口県西部の火山に怯えるものより::

A
 私は最近学生さんと豊北町の地質を調べています。おたずねの白滝山(667.6m)にも登山して調べました。私たちの調査では白滝山には流紋岩質溶結 凝灰岩が分布しています。おとなりの天井ヶ岳(691.1m)には安山岩によく似たひん岩という岩石が分布しています。このあたり一帯には,白亜紀の阿 武層群として知られる火山岩が分布しています。お察しのとおり火山地帯であったわけです。それも噴火の規模は大きく,噴出当時,山口県はほとんど火山灰 など火山の噴出物で覆われていたことでしょう。山口県だけでなく,日本列島,さらに太平洋を取り囲む地域では,地球がそれまでに経験したことのないよう な大規模なマグマの活動が行われました。しかし,心配されることはありません。私たちの研究ではマグマの噴出した年代は約8700万年前です。したがっ て火山活動が行われたのははるか大昔のことで,現在は完全に活動を終えた死火山です。山口県で活火山に指定されているのは,萩の笠山などからなる阿武単 成火山群だけです。したがってこのあたりで噴火する可能性はないと思います。
 また,温泉には火山性だけでなく,非火山性の成因のものがあることに注意してください。火山がないところにも温泉はあるのです。山口県の温泉はすべて 非火山性で,泉温が25℃未満の冷鉱泉が多く,全温泉地の82%,全泉源の63%を占めていま す。温泉法では,温泉を温度(物理的性質)と溶解成分(化学的性質)の2本立てで定義し,温泉=(温泉+鉱泉+火山ガス)という考え方をとっているので す。これによれば,温度が25℃以上あれば,溶解成分は何もなくても「温泉」であるし,また,溶解物質があるきまった量を満たしていれば,泉温がいくら 低くても「温泉」になるのです。例えば,山口県には,白亜紀の花崗岩や先述の阿武層群などの火山岩が広く分布するため,ラドンを含む温泉も多いです。御 存知のように湯田温泉,湯本温泉,俵山温泉,川棚温泉は古くから防長四湯としてよく利用されてきた温泉です。
 火山に怯えられることなく,豊北町の大自然や温泉を楽しんでください。白滝山付近には風光明媚な豊北峡など,白亜紀の火山活動がその素材を提供してい る美しい自然がいっぱい残っています。
 (08/22/03)

今岡照喜(山口大学・理学部・化学・地球科学科)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp