火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #4023
Q 歴史を専攻しているものですが、今思うに卒論を、火山の噴火というテーマにすればよかったと悔やんでおります。
歴史地理という観点からは言うにおよばず、文献史学という観点から噴火の歴史を体系的に論述できるのはいつの時代からですか。
伊藤和明著 「地震と噴火の日本史」 岩波新書
を読み、古代は日本書紀から現代に至っては言うにおよばず大量の記録に恵まれています。
特に古代、中世の噴火の記録についての史料の量はどの程度のものなのでしょうか。

(06/20/03)

山中 雅晴:学生:28

A
 ご質問ありがとうございます.「体系的に論述」というのが,どの程度のものを指 しておられるのかよくわかりませんが,科学的視点からの分析にたえる噴火記録は, 一般的に言って飛鳥・奈良時代以降のものです.具体的には日本書紀のうちの7世紀 末以降のものに,そのような記録が出始めます.以後は日本三代実録まで続く六国史 に日本各地の噴火記録があり,中には相当具体的な記述をもつものがあります.その ような記述と,火山山麓での地形・地質調査結果とをつき合わせることによって,噴 火の位置・規模・様相をつきとめた研究がいくつかなされています.
 ただし,朝廷による国史編纂が絶えた9世紀末以降は,地方での火山噴火の記録が 激減します.これは六国史の終了にともなって地方の歴史記録の全体量が少なくなる ためであり,実際の火山活動の消長とはほとんど無関係と考えられます.この点は火 山活動だけでなく,地震活動についても同様です.日本の火山のほとんどは,当時の 首都があった畿内から遠く離れていますから,地方の記録が減ることは,火山噴火の 記録そのものが減ることを意味します.
 9世紀末以降の古代の噴火記録については,記録の量・質ともに六国史には及びま せん.中世に入ると,たまたま運良く公卿・僧の日記や,寺社年代記等に記されたも の以外の噴火記録は,見つけることすら困難になります.このような状態は,基本的 には近世初期まで続きます.
 以上のように,現存する古代・中世の噴火史料はごく限られたものです.しかし, 地形・地質という別の詳細な「史料」がありますから,研究上まったく歯が立たない というわけでもなく,限られた情報を総合して噴火を復元してゆく醍醐味がありま す.歴史時代の火山・地震研究者が情報交換をおこなっている集まりを,以下に2つ 紹介させてください.
 歴史地震研究会
 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/Shiryou.html
 メーリングリスト「musha」
 http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/musha/Welcome.html

なお,上記研究グループに属する方々の成果(ただし,近世と近代が対象)が,この 夏に国立歴史民俗博物館で開催される企画展「ドキュメント災害史1703-2003」で紹 介されます.
 http://www.rekihaku.ac.jp/kikaku/index75/index.html
 (06/26/03)

小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp