火山についてのQ&A |
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Question #3999 | |
Q |
一般的な地温勾配を超えるような温度の温泉の起源や分類について調べていてふと思ったのですが,深層熱水によるもの以外の温泉について,一般に「火山性」,「非火山性」等と分けますけれど,「非火山性」といっても何かしら地下に熱源がないと発生しないし,熱源といってもマグマくらいしかないでしょうから,火山性にしても非火山性にしても,どっちもマグマ起源なのではなのかな?,と思い始めたら,火山性,非火山性という区分は,何なのだろうか???と,なんだか混乱してきてしまいました。 「非火山性」とは,何なのでしょう??? ただ時代の区分だけ?なのでしょうか?? マグマ以外の熱源って,あるのでしょうか??? もし,熱源がマグマしかないのであれば,深層熱水以外にこの先発生する温泉は,全て「火山性」ですよね・・・・ (06/06/03) りょん:会社員:35 |
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A |
地殻内部の高温領域の熱源としては,「生きているマグマ」と「死んだマグマ」が 考えられます.「生きているマグマ」とは溶融した部分を含む高温領域です.「死ん だマグマ」はかつては生きていたが,時間が経って冷えたために殆ど溶けた部分が無 くなった高温領域です.マグマは固化するとマグマと呼ばれなくなるので,「死んだ マグマ」という表現は妥当ではないかもしれません.(注:この「生きているマグ マ」,「死んだマグマ」という言葉は私がこの場のみで使用している語句で日本の火 山学において普遍的に使用されているわけではありません) マグマの寿命は,一般的には数十万年程度と考えられています.この寿命の後は 「死んだマグマ」なるわけですが,まだ十分に熱を持っています.これが完全に冷え 切り熱異常のない領域になるまでにはさらに時間が必要で,おそらく数100万年以 上は必要と思われます.日本には多くの火山があります.第四紀(約160万年前から 現在まで)の火山の熱源による温泉水は「火山性」と分類されるでしょう.しかしそ れ以外の温泉は「非火山性」と分類されているのかも知れません.(注:「火山性」 と「非火山性」の分類も確かな判定基準があるわけではなく,研究者の判断によりま す.活火山に関係していない温泉水を「非火山性」としているのではないでしょう か?)「非火山性」と分類された温泉水の熱源が古い火山の「死んだマグマ」に由来 する可能性は十分にあると思います. マグマには「生きているマグマ」と「死んだマグマ」の他に発生して間もないため に火山を作っていない「あかちゃんマグマ」も考えられます.有馬温泉という有名な 温泉がありますが,この温泉水のH2Oの同位体比は典型的なマグマ起源のH2Oの特徴を 示しています.有馬周辺には第三紀火山岩類が分布していますが,これが現在の温泉 水に含まれるであろうマグマ性H2Oの起源になっているとは考え難いと思われていま す.そこで,仮説ですが,有馬温泉の下には見つかっていないマグマがあるのではな いかと考えている研究者もいるようです. 以上をまとめますと,「非火山性」温泉水の熱源として,「死んだマグマ」と「あ かちゃんマグマ」が可能性として考えられます. (06/09/03) 大場武(東京工業大学・火山流体研究センター ) |