火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #3943
Q いつも御丁寧な回答ありがとうございます。2つの質問があります。
@イタリアのエトナ山は外見や玄武岩質である事に加えて噴出量が極端に多い事も富士山によく似ていると思います。エトナはホットスポット火山であるがゆえあれだけ膨大な噴出量を誇ると聞きます。富士山については地下にホットスポット云々とは聞かないため島弧火山列の中に不自然なほど巨大な玄武岩質火山があるのを常々不思議に思ってましたが、最近「フィリピン海プレートは北東側と西側に沈みこんでるため結果として中央部が割け富士山から八ヶ岳の間はプレートが存在しない状態になっている(フィールドガイド。日本の火山@)」という記載を見つけました。この「プレートが割けている状態」と富士山の膨大な量の玄武岩は関係があると考えてよろしいのでしょうか。

A伊豆大島から八丈島をこえさらに南の方まで(新島〜神津島を除いて)これまた島弧火山でありながら玄武岩質の火山が連なっています。特に大島、三宅島、八丈島は割れ目噴火をおこしたりキラウエア型のカルデラを持つ点でも兄弟の様に似ていると思います。同じ「火のリング」でありながらアメリカのカスケード地方の火山群に比べて伊豆諸島の島々の溶岩がサラサラしているのは理由があるのでしょうか(何となく陸の火山の溶岩はネバネバしていて島の火山の溶岩はサラサラしている様に思えます)。

以上、よろしくお願いします (04/27/03)

アマンタジン:医師:28

A 2つの質問ですが,いずれも関連がないわけではないのでまとめてお答えします.

日本列島のような沈み込み帯の火山は,SiO2成分が多い安山岩,デイサイト質マグマ の噴出が多く,玄武岩質マグマだけを噴出している火山は少ないです.この特徴は世 界中の沈み込み帯の火山に共通して見られますが,より詳しく調べてみると,沈み込 み帯の島弧地殻や大陸地殻が厚ければ安山岩質マグマが卓越し,薄ければ玄武岩質マ グマが卓越する傾向があることが知られています.伊豆大島や三宅島がある伊豆-小 笠原弧は,大部分が海底にあることからわかるように,島弧地殻の厚さが本州などに 比べて薄く,玄武岩質マグマが多く噴出する島弧の一つです.

マントルが溶けてできる初生マグマは大部分が玄武岩質マグマであると考えられてい ます.島弧に玄武岩質マグマの火山が少ないのは,島弧に安山岩質マグマの火山がな ぜ多いのかということにつながります.安山岩質マグマの成因として,地殻内のマグ マ溜まり内での玄武岩質マグマの結晶分化作用や,地殻が玄武岩質マグマの熱で溶け てできたSiO2の多いマグマと玄武岩質マグマの混合などが挙げられます.いずれも地 殻が厚ければより容易に安山岩質マグマを作りやすくなるのが理由と考えられていま す.

富士山の地下では,地殻下部が構成する沈み込んでいるフィリピン海プレートが富士 山の直下で裂け,そこを埋めるようにマントルから玄武岩質マグマが上昇しやすくな っているという考えがあります.つまり局部的に地殻が薄くなっているのと同じこと が起きているというわけです.富士山の場合,開いていくことで強制的にマントル物 質が上昇することもあって,大量の玄武岩質マグマが地表に噴出していると考えられ ます.
 (03/5/20)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門) --


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp