火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #3859
Q なぜマグマは出来たのですが?地球が出来たのはビックバンが原因ってことはマグマもビックバンが原因なのでしょうか?
それからいつ出来たのか?何のために出来たのか?も教えてください。
あと、なぜマグマは何年経っても冷えないのかも教えてください。 (02/13/03)

☆おちょめ☆:中学生:15

A 回答が遅くなってごめんなさい. それにしても,ビックバンとの関連性とは壮大な話ですね. 時間や空間や物質のすべての源が約140億年前におこったビックバンであるという点 から言えば, マグマとビックバンも無関係とは言えないでしょうが,現在のマグマとの直接の関係 はありません.

いただいた質問には,大事な点が2つ含まれています.一つは物体が冷えるスピードは なにで決まるかということ,もう一つはマグマがどうやってできるかということです.

物体が冷えるためには,熱を逃がさなくてはなりません.この場合,表面積に比例して 熱が逃げていきます.一方,物体が持つ熱の総量は物体の体積に比例するので, 大きな物体ほどたくさんの熱を持っていることになります. ところで,物体表面積は物体のサイズの2乗に,体積はサイズの3乗に比例しますか ら, 結局のところ,大きな物体ほど冷めにくいということになります. カップに少し入れたお茶はすぐに冷めてしまうけれど,なみなみと注げばなかなか冷 めないということを 思い出してください.マグマの場合も同じことです. 地表に流れ出た厚さ数メートルの溶岩はすぐに冷え固まってしまいますが, 火山の地下にある直径数kmのマグマ溜まりが冷え固まるには数十万年が必要です.

次に,マグマがどうやってできるのか. マグマは岩石がとけてできたものです.ではどのような場合にとけるかというと, (1)温度が上がった場合,(2)圧力が下がった場合,(3)融けやすい別の物質 が混ざった場合,です. 「圧力が下がった場合」というのは少しわかりにくいかもしれませんが,たいていの 物質では 物質のとける温度は圧力が高いほど高くなっていきます.例えば岩石の場合も地下 100km(圧力3万気圧)で 1200度では岩石は固体のままですが,その温度を保ったまま大気圧下に持ってくると どろどろにとけてしまいます.

地球の46億年の歴史のなかでは地球のどこかでは常にマグマが存在しています. 地球ができる際には幾つもの微惑星が地表に降り注ぎました.この時には衝突のエネ ルギーで 地表には煮えたぎるマグマの池やマグマの海ができたと考えられています.これは( 1)のケースです. 一方,現在の地球でのマグマのでき方を考える場合に重要となるのはおもに上記の( 2)と(3)の場合です. マグマができる場所は主として,海嶺,ホットスポット,沈み込み帯の3カ所ですが ,海嶺とホットスポットの場合には(2)の圧力低下がマグマのできる主要な原因で す.これに対し,日本のような沈み込み帯の火山の場合には, 沈み込むプレートによってマントル内に水が供給されて,この水の存在によって岩石 の融点が下がることも重要なので (3)もマグマの生成に効いてきます. 地球はとてもゆっくりしか冷えないので,現在の地球の表面温度は20度くらいですが, 今でも地下深くではでは温度が1000度を越えています.でも地下深い所すべてがどろ どろに とけたマグマになっているわけではありません.外核と呼ばれる深さ2900kmから 5100kmの領域を除けば 地球の内部はほとんど固体です.ではどうしてマグマが作られるかというと, マントル対流やプルーム活動によって固体状態の地球の中の方の岩石が地表近くに上 がってきた際に 圧力が低くなることが効いて岩石が融けてしまい新たにマグマが作られるのです. マントル対流やプルーム活動は地球内部の熱を効率よく外に放出するための しくみです.だから地球の内部が十分に熱いうちはマントル対流やプルーム活動が起 きて, それに伴って次々とマグマも作られ続けていくのです. (Mar-07/2003)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp