火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #3741
Q 大学4年生で卒論を書いているものです。卒論は「富士海岸の海岸浸食対策」という題名なのですが、富士海岸には現在、海岸侵食対策として三重県鳥羽市菅島産のかんらん岩を養浜材料として海に投入しています。その投入されたかんらん岩がどの辺まで、どのくらいの量が、流されていっているのか?を調べているのですが、現在かんらん岩を見分ける方法として 1.まず見た目で黒っぽいものを見分ける。2.比重を計って重いものを(密度が3くらい)見つける。ということをやっているのですが、作業行程1のかんらん岩の見分け方がどうも微妙で、安山岩なども一緒に持ってきてしまいます。なんとか比重を測定しなくても「これかんらん岩だ」と分かる方法はないでしょうか?目で見分けるコツとかあったら教えてください。あと、もしほかに見分ける方法があれば教えてください。勝手な質問ですいません。お願いします。 (01/05/03)

おの やまと:学生:22

A
 面白そうな卒論研究ですね.石の大きさにもよりますが,何m程度沖 までかんらん岩が流されているのか私も興味があります.鳥羽菅島産の岩石を 使っているのは,採石場から目的の海岸まで船で低コストで運 べるからでしょうか.
 さて,かんらん岩を見分ける方法ですが,菅島のかんらん岩は相当蛇紋岩化 しているので,必ずしも水に対する比重が3.0以上とは限りません.ほぼ完全に 蛇紋岩化している場合の比重は2.7程度で,花崗岩や安山岩と同様になります. 比重が3.0以上で黒い石だったら絶対にかんらん岩かというとそうでもなく,菅島 に産する斑れい岩や角閃岩でも,黒くて比重3.0以上のものがあります.しかし, 角閃岩でも斑れい岩でも,菅島から来た岩石であれば,この研究の場合 はかんらん岩と区別できなくても構わないわけで,むしろ富士川上流や周辺の 海岸から自然に流されてきた黒い玄武岩,安山岩,頁岩などから区別できれば, 目的は達せられるわけですね.
 玄武岩や安山岩は斜長石という長方形の白い鉱物を含むことが多く,火山 ガスの発泡による気泡(穴)があることが多いですが,かんらん岩や蛇紋岩 はこれらを含みませんから,斜長石や気泡の有無でだいたい区別 できるでしょう.玄武岩,安山岩,黒色頁岩の比重は普通2.6-2.9程度で,3.0 以上になることはまずありませんから,岩石の鑑定に自信がなければ, とにかく黒い石をたくさん取ってきて,一生懸命比重を計るのが得策でしょう. 海岸でそれぞれの種類の小石を集め,大学の地学関係の先生に直接確認 してもらって,「これは間違いない」という標本セットを作り,それをいつも持 ち歩いて,現場で比べながら判断すると,間違いが少なくなります.
 それから,もう一つ,アッと驚く裏技をお教えしましょう.それは磁石を使う 方法です.ピップエレキバンや黒板貼付用の丸磁石などを細いヒモの先につけ, ヒモの他端を持ってぶら下げた状態で岩石に近づけると,多かれ少なかれ磁石は 岩石に引かれます.これは岩石に磁鉄鉱が入っているためです.蛇紋岩や 蛇紋岩化したかんらん岩は特に磁鉄鉱が多いので,磁石が岩石に吸い付いて逆 さにしても落下しないほど強い磁力を持ちます.新鮮なかんらん岩の磁力は微弱 ですが,そういう物は菅島には稀です.玄武岩や安山岩もかなり磁鉄鉱を含 みますが,蛇紋岩ほど強くはありません.黒い頁岩や砂岩の磁力は,普通は微弱 です.この方法は比重が小さい蛇紋岩にも適用でき,これでかなり区別 できるはずですから,是非試してみて下さい.
 なお,菅島のかんらん岩に関する最近の研究として,「水上知行(2002)ミカブ 帯菅島超苦鉄質岩体の斜方輝石の産状と組成層状構造.岩石鉱物科学,31, 87-96」があるので,是非読んでみて下さい.
 (01/05/03)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科) 


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp