火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #2855
Q 先日、高校の研修旅行で大涌谷(兼箱根)に行ったのですが、その際ガスが噴出しているところから500m近くの距離がある水溜りのphを測ったところ、4以下のphが出ました。あまりの低さについついその水溜りを避けてしまったのですが、これは火山ガスの影響なのですか?もしそうならば大涌谷の火山ガスにはどのような成分が含まれているのですか?教えてください (10/08/02)

みたらし:高校生:16

A 大涌谷でいろいろ測定されたようですね。とても良い体験だと思いますが、噴気地帯 はいろいろな危険がありますのでくれぐれも気をつけてください。

さて、大涌谷の地表にある水は酸性が強いですが、これは主に硫酸が含まれているこ とが原因となっているようです。硫酸の起源はみたらしさんがお考えのように火山ガ スだと考えられますが、どうして硫酸なのかというとちょっと難しい問題があるよう です。火山ガスには二酸化硫黄(亜硫酸ガス;SO2)が含まれていておそらくこれが 硫酸の元となっていると考えられます。これが水と反応するとH2 SO3が出来るのです が、これは亜硫酸というもので、硫酸ではありません。大涌谷の水を測定するとSO4 --(硫酸イオン)は検出されるのですが、S03 --(亜硫酸イオン)は検出されませ ん。おそらく、火山ガスが水に溶け込むだけでなく、空気中の酸素が水に溶け込み亜 硫酸と反応することではじめて硫酸が出来るものと考えられます。

これがおおよその考え方ですが、硫酸イオンがどこで出来ているかというのを考えて いくとちょっと話は難しくなります。硫酸イオンができるためには空気中の酸素が必 要だとする考え方で行くと、地下深くの温泉は空気に触れる機会がないと考えられる ので硫酸イオンは含まれず亜硫酸イオンに富むことが予想されるのですが、現実には 地下の温泉も硫酸イオンに富んでいます。こうした観察を「表面の地下水は地下のか なり深いところまで供給されているのだ」として説明する考え方がある一方で、「亜 硫酸の自己酸化によって硫酸が出来るのだ」とか、「硫酸は火山ガスの影響で出来た 硫化鉱物からもたらされたのだ」という説明もあります。興味があったらぜひいろい ろと調べて硫酸の起源「みたらし」説を発表してください。

もうひとつ、大涌谷のガス成分ですが一般的に多くの火山でそうなのですがほとんど (99%ちかく)が水蒸気です。水蒸気以外のガスで最も多いのは二酸化炭素、その次 が硫化水素で、二酸化硫黄はほとんど含まれていません。二酸化硫黄がほとんど含ま れていないのは、大涌谷ではマグマから直接出てきたガスが噴出しているわけではな く、地下水と反応したあとのガスが出てきているためです。二酸化硫黄は水に溶けや すいので、大涌谷のように表層に水がたくさんある地域だと仮に二酸化硫黄の供給が あっても地表に出る前に水に溶け込んでしまうと考えられます。硫化水素は二酸化硫 黄と水が反応して出来たもので、箱根のように地表近くに水がたくさんあるところか ら出てくる火山ガスとしては一般的な成分です。
 (10/17/02)

萬年一剛・石坂信之(神奈川県温泉地学研究所)  --


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp