基本的には,あたたかくてやわらかいマントルと冷たくてかたいプレートという認
識で
いいのですが,マグマのことを考える場合には,若干の修正が必要です.
まず,マントルとマグマの関係ですが,
マントルは固体ですが,圧力が低くなったり温度が高くなったりすると
部分的に融けてしまい,マグマを生み出します.
たとえていうなら,マントルとマグマの関係は,かちかちに固まった
シャーベットがマントルで,半分とけかけたシャーベットの果汁部分がマグマです.
マグマとは,地球内部で岩石がどろどろに融けた状態のもの全般をさす呼び名で,
マントルがとけてもマグマが生じますし,地殻がとけてもマグマが生じます.
これに対し,溶岩は,マグマが地表に流れ出てきたものです.
ただし,融けて流れている状態のものも冷え固まった状態のものも,
いずれも溶岩とよびます.
さて,これらをふまえて,海洋プレートとマントルの関係に移りましょう.
中央海嶺は、マントル物質が上昇してきてプレートが作られているところです.
プレートは左右に分かれて移動していくので,中央海嶺には深い谷状の地形が
形成されますが,そこでマントルそのものが見えるわけではありません.
上昇してきたマントルは,圧力が低くなるために部分的に融けてしまいます.
先ほどのシャーベットのたとえを借りるならば,
ちょうどシャーベットを少し溶かしたたときに果汁の部分と氷の部分とができるよう
に,
中央海嶺の地下深くにおいて,マントルにもとけた部分(マグマ)ととけのこり部分
が生じます.
マグマ部分はとけのこり部分よりも軽いので,表層近くまで上がってきて
溶岩として海底に噴出したり,噴出できずに表層近くの地中で固まったりします.
これが海洋地殻と呼ばれるもので,厚さが5〜10kmあり,海洋プレートの最上層を形
成します.
その下側には厚さ30〜40km程度のとけのこり部分からなる層があります.
その下にさらに厚さ数十km〜100kmの冷たい(したがって,固い)マントル物質の層
があり,
これら全体として海洋プレートを構成します.
つまり,おおざっぱに言うと海洋プレートは3層重ねで,
下から順に,マントルと同じ物質で温度が低いだけの層,マントル物質からマグマを
分離して
しまった残りの物質の層,分離したマグマが冷え固まった層,からできているわけで
す.
(06/07/02)
安田 敦 (東大・地震研・地球ダイナミクス)
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