火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #2063
Q 現在比較的活発な火山の前線は東日本と九州以南に集中していますがプレートの沈み込みは四国沖でも起こっています。なぜ中国地方や近畿北陸の火山は静穏なのでしょうか?
日本列島の構造、特に中央構造線によって何らかの影響を受けているのでしょうか? (12/26/01)

ぼるけの:会社員:40

A
 中国地方や近畿地方の火山は一見静穏そうに見えますが、第四紀(160万年前以 降)に大きな活動をしているものや、完新世(1万年前以降)に活動した火山もあり ます。後者に対しては、今後、活火山として認定されるものが出てくると思います。 というのは、現在、活火山の定義を「2000年以内に噴火した火山」から「1万年以内 に噴火した火山」へと改訂する作業が、進行中だからです。さて、この地域にも、東 北日本と似たような火山フロントが見られます。西南日本弧を縦断して琉球弧の北部 まで、一列に連なります。しかも、たいへんに面白いことに、この火山フロントは約 150万年前から突然に出来始めたのです。中国地方から九州・琉球にまで連なる火山 フロント上で、最も初期に噴火活動をした火山体の年代を調べてみると、約150万年 前にそろうのです。このことは、火山フロント上の火山が、フィリピン海プレートの 沈み込みと何らかの関連性をもって形成されたことを示していると思います。確か に、西南日本弧の火山フロントの直下には、フィリピン海プレートは存在するので す。プレートが沈んでいる深さでの地震はほとんど見られません。しかし、地震波を 詳しく調べると、ここにある種の反射面が確認され、非震性(地震を起こさない)の プレートがあることが、20年前くらい前から分かっています。しかし、プレート運動 と火山活動との直接の関係は、まだよく分かっていません。地域的・時代的な関連性 は分かってきても、それらの因果関係を突き止めるところまでは、研究が進んでいな いのです。また、ご質問のような、中央構造線などの西南日本弧の主要な構造線が、 第四紀の火山活動に関与していることを示す証拠も、まだないと思います。あまり歯 切れがよくなくなってしまうのですが、西南日本弧に関しては、なぜここに火山が存 在するのかという問いは、実は第一級の問題でありながらも、なかなかよいモデルが できていないというのが現状です。東北日本弧に比べてまだデータが足りないこと、 地帯構造が複雑であること、研究者人口が少ないこと、などが原因だと思います。と いうことは、逆に、この地域には、まだたくさんの美味しいテーマが転がっている、 ということにもなります。若い人たちにも、是非研究に参入して欲しいなと、私はい つも思っています。
 (1/15/02)

鎌田浩毅(京都大学・総合人間学部・地球科学分野)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp