火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #2014
Q 私は登山が好きでよく登っていますが、日本の火山をみてみると、九州南部と東北北部、北海道に巨大なカルデラを持つ火山が多いように思います。これには何か理由があるのでしょうか。よろしくお願いします。 (11/16/01)

みのむしころりん:中学校教員理科:44

A
 大型のカルデラは,数10からから数100km3にもおよぶ大量の珪長質マグマ(流紋岩 質やデイサイト質の珪酸成分に富むマグマ)がいちどきに噴出することで形成されま す.すなわち,地下に大型の珪長質マグマ溜まりが存在することが必要です.こうし た大型のマグマ溜まりに大量のマグマを溜めるためには,大量のマグマを短時間に生 成するか,少量のマグマを時間をかけて少しずつ溜めてやるかのどちらかのプロセス が必要です.1億円を手に入れるのに,宝くじで一発で当てるのか,長年かけてこつ こつ貯めるのかの違いです.大型カルデラの分布する,南九州や東北北部,北海道の 地下には,これらのどちらかの条件が備わっていることになります.
 一発で当てたのか,こつこつ貯めたのかをチェックする方法もあります.マグマの 長期間にわたる生成率を調べてみるのです.前者の場合には,大型カルデラ火山のマ グマ生成率は一般の火山よりも大きくなるはずです.マグマ生成率を直接知ることは 難しいので,マグマ噴出率がほぼ生成率を代表していると考えて両者のそれを比べて みますと,ほとんど違いのないことがわかります.つまり,一発当てたと考えるより も,長い時間をかけてこつこつ貯めたと考えた方がよさそうなのです.これは,大型 カルデラ火山の成因も,長い休止期を経た火山の方が大規模な噴火をする(悪いやつ ほどよく眠る)という火山についての一般的な事実の延長上にあることを意味してい ます.それでは,こうした地域ではどうしてマグマを溜めやすいのでしょうか.大型 カルデラは概ね平坦な場所にあって,高く隆起した山脈の上などにはみられません. 活断層の変位などからこれらの地域の長期間にわたる平均的な地殻の変形速度を見積 もってやると,その値が小さいことがわかります.変形速度が小さいということはそ の場所が比較的静穏な環境に置かれているわけで,そのためにマグマが溜まりやすい のかもしれません.
 (01/11/25)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp