火山についてのQ&A |
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Question #198 | |
Q |
東大病院の院内学級に勤務している者です。お忙しいところ申し訳ありません。 よろしくお願いします。 理科の授業で関東ローム層を教えている時に次のような質問がありました。
(3/6/99) |
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A |
(1)
より厳密には,「関東ローム層は,富士山,箱根山,浅間山などの,おもに関東 平野西方に位置する火山の噴火によって地表にもたらされた火山灰が,大気中を運 ばれて降り積もった地層」です.火山灰の大気中での移動方法としては,噴火時の 噴煙によって直接運搬されることもあれば,噴火休止期に火山山麓の荒れ地や河川 敷などから強風によって少しずつ運ばれることもあります.前者の運搬方法を主と みるか,後者を主とみるかで,まだ学者間に議論があります. (2) 富士山は,およそ10万年ほど前から噴火を始め(かつて8万年前とよく言われま したが,最近の年代測定研究の進歩によって若干遡っています),歴史時代にもた びたび噴火を起こしている活火山です.最近では1707年(宝永四年)に大規模な噴 火を起こしています.なお,1707年以後もまったく静かであった保証はなく,1708 〜09年,1770年,1854年にも小規模な噴火を起こした疑いがあり,現在研究が進め られています. 富士山の歴史時代の火山活動については,以下のページが参考になるでしょう. http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/Fuji/fujid/0index.html (3) 関東ローム層の最下部をしめる地層は,およそ40〜50万年前の堆積物です.そし て,関東ローム層の最上部(つまり現在の地表面)には,いまでも少しずつ堆積物 が堆積し続けています.風の強い日に荒れ地や河川敷・畑などから砂ぼこりが大量 に舞い上がり,それがわずかずつ地面をかさ上げしているのです(あるいは,上述 した富士山の1707年噴火の際に関東平野に灰が降り積もったことからわかるように, 火山噴火による降灰でかさ上げされることもあります).縄文・弥生時代や歴史時 代の遺跡が土中に埋もれているのはそのためです. 関東ローム層は乾いた陸上(湖や川や湿地帯ではないという意味です)で堆積し た地層です.つまり,関東ローム層がつもった場所はいまの武蔵野台地のような台 地の上です.しかし,関東平野全体に関東ローム層が分布しているわけではありま せん.たとえば,千葉県の北部には低い丘陵地帯が広がっていますが,そこには40 〜50万年前の海でたまった砂や泥が分布しています.つまり,関東ローム層が堆積 し始めた頃には,いまの東京湾から九十九里浜にかけて洋々とした海原が広がって いたのです. (3/10/99) 小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学)
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