火山についてのQ&A |
≪前のQ&A≪ ≫次のQ&A≫
|
Question #159 | |
Q |
11月17日付の朝日新聞での記事で東北・北海道の火山が活発化しているのは,94年の三陸はるか沖地震の影響ではないかという見方が有力であると書いてありました. どのようなメカニズムを仮定することで,プレート境界で起こる地震の影響で火山活動が活発化するといえるのか教えて下さい. (11/17/98) |
|
A |
はっきり申し上げますと、「三陸はるか沖地震」のようなプレート境界型地震と 、そこからかなり離れた陸地の火山活動との関係をはっきりと物理的に証明した方 は居ないのではないかと思います。現時点では物理的なメカニズムというよりも「 統計的に見て」そのように見えるという事であると私は認識しております。「統計 的に・・」というのは、その背後のプロセスは問題ではなく、物事のつながりを経 験的に「なんでそうなるのかよくわからないけど、そのようになってしまうもの」 として見ているということです。 ただ、物理的に考え得ることとしては、火山の地下のマグマ溜まりが地震以前か ら臨界状態にあって、(1)地震波の通過によってマグマ内部での相変化や脱ガスが促 進された、(2)地震発生後の広域応力の変化によってマグマ内部での相変化や脱ガス が促進された、の説などがあげられます。 (1)については、地震波の通過は全体のなかでホンの一瞬(マグマが数キロのサイ ズでも数秒)のことですし、遠く離れた場所で発生した地震波の通過に伴う内部で の圧力変化はそれほど大きくないと考えられますので、時間的あるいは空間的なス ケール的には無理なようです。実際に、阿蘇火山の活動火口近傍で発破をかけても 火山活動はおろか、火山性微動にも目立った変化は現れませんでした。 また、(2)の説については、たとえプレート境界の地震発生に伴う半永久的な応力 変化(応力解放)があったとしても、地震波ほど遠くまで伝わりません(ちなみに 地震波も一種の応力の揺らぎが伝播する現象です)。震源近傍ならともかく数百キ ロも離れた場所では、同じ震源から出た地震波の方が大きな応力変化になります。 先日の雫石の地震と岩手山程度の距離であれば、地震発生に伴う応力変化が火山活 動に影響を及ぼす可能性があるかもしれません。 しかし、問題は地球の内部の構造です。地球の内部についてはまだ誰も見たこと がないわけですから、私たちが想像も出来ないような「何か」が両者を結びつけて いるかもしれません。 (12/2/98) 筒井智樹(京都大学・理学部・火山研究センター)
|