火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #1189
Q お忙しい中恐縮ですが、ご教示頂ければ幸いです。
本土における三宅島から排出される火山ガスの危険性についてお伺いします。
先日、一部週刊誌で三宅島からの火山ガス(二酸化硫黄)が首都圏に健康被害をもたらすとの趣旨の記事が掲載されていました。
私自身、噴火以後、(気のせいかもしれませんが)街中で「硫黄臭い」と感じることが多くなった他、
噴火が激しくなった時期に、搭乗中の旅客機から三宅島方面をみると、その方向から多量の黄色い雲が関東方面に流れているのが観察できました。
気象庁の火山情報では、日量2〜4万トンの二酸化硫黄が排出されているとのことでしたが、この排出量は私のように首都圏に住む者にも影響が出るようなものなのでしょうか。
被災された方に比べれば大したことではないのでしょうが、我が家に幼児がいまして喘息などの影響がでることが気がかりです。
そこで、
1.風向・降雨などにもよるのでしょうが、どれぐらいの排出量となれば我々は注意せねばならないのでしょうか(あるいは既に要注意なのか)?
2.火山ガスが流れてきた場合、どのような対策をとればいいのでしょうか?
3.三宅島の火山ガスに対する注意報・警報などは発令される(あるいは情報提供される)システムは本土にあるのでしょうか?
4.上記の情報については、どこに問い合わせればよいのでしょうか?
すべて杞憂であれば良いのですが、不用心な地域での二次災害を防ぐ意味からもお教えいただければ幸いです。 (10/24/00)

MINE:会社員:33

A
 8月下旬から南から南東の風に乗って,三宅島から放出された火山ガスが本州方面 に流れ込むことが起きはじめています.問題となる火山ガスは二酸化硫黄(SO2)と硫 化水素(H2S)です.
 このうちSO2は大気汚染要因として,各自治体などで測定されていますが,東京周 辺でも最も多いときで,1ppm近くに達したことがわかっています.日本のSO2の大気 汚染環境基準値は0.1ppm(1時間値)ですから,それの約10倍の濃度なります.三宅島 島内での測定では,噴煙の風下で5ppm近くに達することもあるようです.また腐った 卵やドブくさい臭いを感じるのはおそらくH2Sだと思われます.三宅島周辺での測定 では,H2SはSO2の1/4から1/10程度含まれるようです.


 1日数万トンのSO2が放出されている現状では,排出量よりは風向きに気をつけたほ うがよいでしょう.三宅島島内でも,風上や噴煙からちょっと離れると問題にならな いレベルの濃度に下がります.
 健康被害という点について述べると,SO2もH2Sも急性毒性が問題になるのは数百 ppmの濃度であることから,少なくとも本土では,健康な人が急性毒性を気にするレ ベルにはならないと思っていいでしょう.ただし喘息など呼吸器に疾病を持つ方は, SO2濃度が1ppm程度でも発作を起こすことがありえますので,注意は必要です.
 9月上旬までの異臭騒ぎを受けて,環境庁などでは環境基準を超えるSO2濃度が連日 観測されている場合には,念のため次のような対処法を呼びかけています.

(1) 外出はなるべく控えること (2) 外から戻ったときには、目を洗ったり、うがいをすること (3) 目に刺激を感じたり、咳が出たりした場合は、医療機関に相談すること


 また,喘息等の呼吸器系疾患を持つ方々については,外出中に硫黄臭などを感じた ときは,以下の事項を緊急避難的に行うことも薦めています. ・近くの建物などに入ること ・近くに建物などがないときは,タオル等を水で濡らし,口や鼻を覆うこと


 本州や三宅島周辺の島には,風向きしだいで火山ガスが到達する可能性があるの で,例えば本州なら南よりの風が吹くような天気の場合には,注意したほうがよいで しょう.天気予報などで風向き予報を確認してください.


 SO2濃度については,関東地方なら環境庁の連続測定値が公開されていますから, そちらを参照してみてください.また他の地域に関しては,各県,自治体の大気保全 担当部局に問い合わせるようにとのことです.自治体によっては観測値をリアルタイ ムで公開しているところもあります. 環境庁大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君) (10/24/00)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp