火山についてのQ&A |
≪前のQ&A≪ ≫次のQ&A≫
|
Question #1154 | |
Q |
以前、北アルプスの鷲羽岳に登り、山頂直下の鷲羽池をおとずれて、なぜこのような 所に火口があるのか、不思議に思った覚えがあります。鷲羽池はいつごろ、どのよう な噴火でできたものなのでしょうか? そしてなぜあのような高所で噴火が起こった のでしょうか? また、鷲羽岳の南東に、硫黄尾根という荒々しい地形が見えていま すが、あれも火山地形なのでしょうか? (10/17/00) 登山R大好き中年:自営:43 |
|
A |
鷲羽池火口は美しい火口です。この位置から南東方向に2km以上流れた溶岩があり ます。放射年代測定によると、約12万年前に流れ出た溶岩です。これが、鷲羽池火口 のあたりに火山が生まれた最初だと思います。ただし、今の明瞭な形の火口はそんな に古いものではありません。鷲羽池火口ではもっと後にも噴火がおこっています。火 口を縁取る溶岩はもっと新しいものですし、その上に爆発的な噴火で放出された噴出 物が火口の周辺だけに残っていますが、これらがいつ噴火したか、確かなことはわか りません。1万年前よりも新しい時代に噴火がおこっているとも言われていますが、 残念ながら私はそのことを確認していません。 硫黄尾根は火山ではありません。ただし、硫黄沢(鷲羽池火口と硫黄尾根の間)で は今でも高温の温泉が湧き出し、硫黄を含んだガスが何カ所からもでていますが、そ れらの影響で硫黄尾根一帯の岩石はかなり変質しています。この尾根を作る岩石は火 山から噴出したものではなく、古い時代の花崗岩の仲間や変成岩などです。硫黄沢で はときどき、熱水(?)を吹き上げるといわれています。火山学会のホームページ に、第4回公開講座 「信州の火山と地震」テキスト集 がありますが、この中の「 北 アルプスの火山をめぐる」 にも少 し書いてあります。この中には、鷲羽池 火口や硫黄尾根を写した写真があります。 鷲羽池火口のある火山を鷲羽池火山といいますが、これは、鷲羽・雲ノ平火山 (群)の一部です。鷲羽池北西の雲ノ平はもっと大きな火山ですが、この火山は鷲羽 池火山よりも古いと考えられています。硫黄沢一帯での硫気活動がさかんなことか ら、この火山群は生きている火山といってもいいと思います。もし、この火山群につ いてもう少し知りたいならば、私のホームページの中の鷲羽・雲ノ平火山をご覧下さ い。 なぜあのような高所で、という質問ですが、これはむずかしい質問です。私にはき ちんと答えられません。鷲羽池火口は花崗岩でできた鷲羽岳の中腹にありますので、 いちばん高いところというわけではありませんね。どういうわけか、火山は高いとこ ろにあることは珍しくありません。北アルプスでも山脈上にいくつもの火山が分布し ていますが、その両側の盆地には火山はありませんね。東北地方や関東地方でも火山 は高いところにたくさんあります。火山の土台となっている岩石・地層それ自体が高 いところまで分布しています。高いところをねらって火山ができるのか、火山ができ るから土台が高くなってしまったのか、どちらでしょうか。火山活動と山脈の形成は 密接に関係しているのではないでしょうか。 (10/18/00) 中野 俊(工業技術院・地質調査所・地質部) |