火山についてのQ&A |
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Question #115 | |
Q |
今度、浅間山に塾の高校生を連れて地学のフィールドワークに出掛ける予定です。特に、1783年の大噴火の痕跡をたどりたい
と考えております。鬼押出し、溶岩樹形、小浅間山等を中心に回る予定です。これ以外の溶岩流の痕跡をたどれる場所があれば
お教えください。また、高校生が学習の参考にできるような書籍・資料等がありましたら、併せてご指導いただければ幸いです。
(8/19/98) |
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A |
浅間山で鬼押出溶岩以外に溶岩流の痕跡をたどれる場所としては,1108年 (天仁元年)の大噴火で流出した上の舞台溶岩,5世紀に流出したと考えられ ている下の舞台溶岩,また1万年前より古い仏岩火山の溶岩(複数)が候補に あげられます.上,下の舞台溶岩はいずれも,浅間山の北東山麓を通る浅間白 根火山ルート沿いにある駐車場から溶岩流の地形が遠望できます.仏岩火山の 溶岩の一部は南東山麓の大窪沢で観察することができます.しかしながらこれ らの溶岩は,地形図や空中写真で見る限り地形的に明瞭なのですが,実際に近 づいてみると,植生や火山灰などに厚く覆われており,溶岩の露出はあまりよ くありません.浅間山では1783年噴火の鬼押出溶岩が他と比べて抜群に露出が よく,「浅間園」や「鬼押出し園」に散策路もありますので,鬼押出溶岩をじ っくり観察されるとよいのではないかと思います. 最近出版されたフィールドガイド(下記)の中に,1783年の噴火を中心とし た非常にわかりやすい解説がありますので,ご覧になることをおすすめいたし ます.また,浅間山の北方に隣接する草津白根火山まで足をのばされれば,殺 生溶岩などを見ることができます.草津白根火山についても同じ本の中に解説 があります. なお,ご質問の文中にありました「溶岩樹型」についてですが,地形図など に出ている「浅間山溶岩樹型」は,1783年噴火の時に流出した火砕流が残した 「吾妻火砕流堆積物」と呼ばれる堆積物中にみられる樹型です.「火砕流樹 型」などと呼ぶべきものなのかもしれませんが,溶岩流にみられる溶岩樹型と 同様のでき方であると考えられています.また「小浅間山」は,仏岩火山の初 期に噴出した溶岩ドームです.その後の噴火活動で降り積もった火山灰や軽石 に厚く覆われていますが,小浅間自体のドム溶岩も小浅間山の頂上付近で観 察することができます.
参考図書
「フィールドガイド/日本の火山(1)関東・甲信越の火山I」,高橋正樹・小林
哲夫編,築地書館
「写真でみる火山の自然史」町田洋・白尾元理著,東京大学出版会
安井真也(日本大学・文理学部)
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