火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #1116
Q 私の住んでいる美又には、温泉があります。土地の様子を調べると、花崗岩が圧倒的に多かったです。私の住んでいるところには、火山はないと聞いているのですが、昔は火山があったのでしょうか。または地下でマグマが活発に活動しているのでしょうか。又、マグマは、温泉にどのように影響しているのでしょうか。温泉と火山の関係について詳しく、教えてください。よろしくお願いします。 (10/11/00)

綾:小学生:11

A (1)白亜紀の大規模火砕流堆積物 もっとも古い火山からの噴出物は主に火砕流堆積物でこの時代の噴出物は広く中国地 方を覆っています。美又温泉付近では旭町から匹見町(匹見渓谷)にかけて分布しま す。この時代は白亜紀と呼ばれる時代です。この時代、つまり今から約1億年から6 千5万年前は1億数千万年もの間栄えた恐竜が絶滅に向かい、やがてその終焉を迎え た時代です。ちなみに本や映画で有名な「ジュラシック・パーク」のジュラシック( Jurassic)とは恐竜の栄えた中生代の真ん中の時代、ジュラ紀(今から2億1千万年 から1億4千万年前)を意味しています。実際には映画に出てくる恐竜はジュラ紀の 次の時代の白亜紀のものですが、語呂が白亜紀(Cretaceous) ParkよりもJurassic P arkの方がよかったのでしょう。白亜紀の頃は中国地方は陸上だったので、きっと恐 竜がのし歩いていたに違いありません。この時代にはまだ日本海は出来ておらず、中 国地方は朝鮮半島の東、ユーラシア大陸の東縁にあったとされています。 当時の中国地方の様子はどうであったでしょうか。ユーラシア大陸の東縁では想像を 絶する激しい火山活動が起っておりました。火山活動は、雲仙普賢岳で多くの犠牲者 を出したあの火砕流の何十倍何百倍にも匹敵する大規模なもので、その堆積物は今も 中国地方を広く覆っています。恐竜がいたとしても大規模な火砕流のためにバーベキ ューになってしまったにちがいありません。

(2)後期古第三紀の火山とカルデラ 旭町の雲月山の西に長径6km,短径4kmの楕円形をした火山性の陥没地があります.こ れは今から約4千万年から3千万年前にかけて出来たカルデラです.この時代は山陰 地方はまだユーラシア大陸の東縁にあったと考えられております。この時期、山陰地 方では西から田万川、益田、浜田、波佐、桜江、川内、大万木山などにカルデラを伴 う火山活動があり、火山岩類や深成岩類が分布しております。このカルデラ群は、現 在の日本列島で例えるならば九州南部から薩南諸島にかけてのカルデラ群に似ている でしょう。カルデラ形成に伴って激しい火砕流が発生しました。浜田市下府のゴルフ 場には当時の火砕流によってなぎ倒され炭化した巨木が残っており、火砕流が高温で 威力のあるものだったことを物語っています。一方、この頃すでに西側から入り込ん できた海が少なくとも浜田にまで達していました。

(3)160万年前以降の火山 百数十万年前には大江高山火山群が噴火しました。大江高山火山群は20数個の溶岩 ドームからなっており、当時大森町あたりまであった入り江には火山砕屑物や崩壊し た溶岩が堆積しておりました。戦国の覇権を争った毛利、尼子、大内が財源確保のた めに血眼になり、最終的には徳川政権の重要な財源の一つとなった大森銀山の銀鉱床 をつくった鉱液は大江高山火山群をつくった時のマグマに由来するものです。津和野 から徳山にかけて分布する青野山火山群は130万年前から2万年前にかけて活動したも のです。 火山活動の最後をかざるのが三瓶山です。三瓶山は今から3万年ほど前から活動し始 め、3千7百年前まで活動が続きました。もっとも初期の火山灰は偏西風に乗って、ま た軽石も海流に乗って青森まで運ばれていきました。活動の初期に直径が6kmx4kmの カルデラが形成されました。1万5千年前から5千年前の間に男三瓶山、女三瓶山、 子三瓶山などの溶岩円頂丘ができました。現在の室ノ内火口の窪地は一つの溶岩円頂 丘の中央部が爆発によりなくなったためにできたという説と、もともと別個の溶岩円 頂丘によりできたという説があります。最後に5千年から3千7百年前に火砕流や降 下軽石をともなう大規模な噴火がありました。この堆積物は島根県東部を広く覆いま した。 (10/12/00)

沢田順弘(島根大学・総合理工学部・地球資源環境学教室)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp